番外編 "幼馴染がイケメンに取られる作品は興奮する!"
大和建の朝は幼馴染みの橘乙姫により起こされる。
「ねぇ、起きてタケル!学校遅れちゃうよ!」
「後、五分」
布団にうずくまりなかなか出ようとしない幼なじみを見て頬を膨らませる。
「昨日は起きたのに、何で今日は起きれないのかな!」
と大きな声を出し布団をひっぺがす。
「うぇ、さみいって!!」
目元を両指でこすり大きくあくびをつく。
「もう、朝ごはんは出来てるんだから早く食べてよね!」
そう言うと橘は部屋を出て一階にいってしまう。
「早く、顔洗って、飯食うか。」
洗面所に行き顔洗う。その間、橘は使ったフライパンなどの後片付けをしていた。
(はぁ、何で私、瀬名くんの事ばっか考えてるんだろ。)
「うーす、今日も朝ごはん美味しそうだなぁ!」
大和は制服へと着替え椅子へと腰を下ろす。
(瀬名くん、あの時何考えてたんだろう。)
瀬名は話せば普通の優しい少年なのだが、長い髪型のせいで話した事のない人からは気持ち悪がられていたのだ。橘もその一人だったのだが昨日の出来事が原因で瀬名ジョンへの見方が180度回転したのだ。
(うふふ、あの瞳、鼻だち、優しい言葉使いをしってるのは私だけって考えるとちょっと嬉しいかも。)
橘は食器を洗いながら、微笑んでいた。
(何だあいつ?風邪でも引いてんのか?)
食パンを口に挟みながら大和は幼なじみの姿を見ていた。
「タケル、私ちょっと先に行くね!」
「いや、まだ時間かなりあるだろ。日直の仕事は昨日しただろうし?どうした。」
「ははは、ちょっとねぇ〜、タケルも遅れんなよ!」
そう言うとバタバタと家を出てしまった。
「変な奴」
大和建の両親は海外の出張で長期に渡り家を開ける事があり年に数回程しか帰ってこないのだ。両親は自分達の都合に無理に息子を合わせることはないと日本に残し父の親友である幼なじみの父へと我が子を託したのだった。
「昨日から、あいつ様子がおかしいんだよなぁ?なんつーか心此処にあらず的な。」
「とうとう破局の時かぁ〜」
「ちげぇーよ!そんなんじゃねぇって!」
怒鳴るように親友に返答を返す。
「怒んなって、生理とかそんなもんだろ。」
「そうだといいんだけどな。」
胸のあたりが何だかチクチクするのはオレが寂しがりやだからか、
「タケルゥー!ごはんくおー!」
「何だよ、いつも通りじゃねぇーか」
弁当を持って大和達のいる机へと腰を下ろす。
「机にのんなよぉー、きたねぇ」
「は?私のお尻ちょー綺麗何ですけど!」
と言うと三人はクスっと笑いながら食へと手につけていった。そんな姿を窓際の席から見ていた瀬名はクスっと笑う。
「そう言えば今日何で朝早く出たんだ?」
大和は橘に質問をする。
(はぁ、今日は朝、瀬名くんいなかったなぁ)
しょんぼりとした表情を一瞬すると顔をペチっと叩き気合を入れた。
「お〜い、聞いてます~?」
「おうおう、タケルの言った通りだな。」
「だろ?おかしんだよこいつ昨日から」
男子二人の声は耳へと届いてこなかった。するとタケルはオトヒメの肩を揺らし眼を覚まさせる。
「タケル?」
「質問聞いてた?朝何してたの?」
「あ〜えーと、実は料理研究部に入部したんだぁ〜」
「はぁマジかよ?」
大和は驚いたように声を上げる。
「うん、料理の腕もっとあげたくて、」
「なんだなんだぁ〜まぁ〜たあつあつストーリーかぁ?」
茶化すように親友の男は煽ってきた。大和はなんだ、そんな事だったのかと胸を撫で下ろす。
「オレは充分上手いと思うけどなぁ、本当に必要か「必要だよ!」お、おう。」
即答する幼馴染に驚いていると昼休みの終わりのチャイムが鳴りそのまま淡々と時間が過ぎて行った。そして橘は初部活に期待を膨らませて部室へと向かう。
「オトヒメぇー、帰ろうぜぇ〜」
タケルが後ろから声をかけてきた。
「忘れたの?私、部活に入ったんだよぉー」
「お、そうだったなぁー、頑張れよ!」
「うん!」
そう言うとタケルは帰宅路へとついた。
(セナ君が、料理研究部に入ってるなんて以外だったなぁ、そう、これは、偶然なの、別に瀬名君とお近づきになりたくて入った訳じゃないんだから。そ、そうよ!純粋にこれは、私の料理の腕を上げるために)
とぶつくさつぶやきながら歩いていたら家庭科室へと辿りついた。
「失礼し「瀬名くん!!」
扉を開けたら先輩らしき人が目の前に現れた。
「あ、えっと、ごめんなさい。一年生?」
「は、はい。あの今朝入部届けを顧問の先生に渡したんですけども...」
「あ〜もう焦っちゃったぁ〜私!我が部へようこそ!みんなぁ〜新しい子だから仲良くしてあげてねぇ〜」
は〜いと部員一同が声を出す。周りを見渡すが男子生徒は一人も見当たらない。
「あ、あの先輩、此処の部員って全員ですか?」
「ん〜、本当はもう一人いるんだけど、あはは。昨日退部届け貰っちゃってさぁ、君一年生だよね?瀬名ジョンって子知らない?」
先輩は余裕がないように早口で言ってきた。
「お、同じクラスです」
(やっぱし瀬名君がいたんだ!でも何で止めちゃうの?せっかく入ったのに台無しだよぉー!!)
脳内で激怒プンプン丸になる橘。
「あの、瀬名君に伝えてくれないかな、明日部室に来てくれって。退部届けはまだ出してないって言っておいて欲しいんだ。」
先輩は両手を合わせ私にお願いをしてきた。
「わ、分かりました。「ありがとー!」
自分の手を握り締め感謝の言葉を告げる先輩に違和感を感じた。瀬名は校内ではあの髪型のせいで変わり者扱いされているのにこの先輩はどうも瀬名君について焦っているように感じられる。
「よーし、皆ー料理始めるよー!」
「「はーい!」」
疑問を感じつつも部活が開始したので持ってきたエプロンへと着替え調理の準備をする。今日は私が入った事もあり軽い物を作ると直ぐに部活動は終わった。
「お邪魔しまーす。」
部活から帰り隣に住む幼なじみの家に上がる。合鍵は父から貰っているのでいつでも入室可能だ。
「おーす」
だるそうな声でソファーに寝転がりながらテレビを見ていた。
「今、ご飯作るね。」
正直、今日は疲れたので適当に作って帰ろう。
「いや、大丈夫だ。おれは外で済ませてきたから。」
「そう?」
嬉しかった。今日はもう帰ろう。
「部活どうだった〜?」
「いい感じだよ。先輩も優しいし。」
「男子部員はいないかぁ、流石に。」
少し考える素振りをして聞く大和。
「うんん、一人いたよぉー、瀬名くん」
「い、意外だなぁ、あいつが部活してるなんて。」
「でしょーって言っても昨日やめちゃったぽいんだよねぇ。だから先輩が私に明日部室に来るように瀬名君に伝えてくれって言われたから話さないといけないの。」
「へぇー、どうでもいいな。」
「ひどぉーい!タケルが聞いたんでしょう!もういい、私帰るね!」
「さいならぁー」
(瀬名なら心配はいらないな、あいつちょっとキモイし。)
何も知らない大和は安心しきった顔でテレビへと集中を戻す。
「さて、明日はどうやって話そうかなぁ。やっぱり朝しかチャンスないよね?」
自室のべッドで横たわりながら考えていた。
_秘密だよ、橘さん。
(もう、何よ秘密って!私にはタケルがいるし!第一髪型キモイ人NGだし!て言うか何で私が瀬名くんのことこんな風に考えなきゃなんないのよぉ!もぅ!)
恥ずかしさに橘は枕を顔に埋める。
「寝よ」
橘は考えることを止め電気を消し明日の朝へと控えた。
まぁ、知ってる人は知ってと思うけど.......この番外編は、うん。全五話だから。
それよりもChaos:Demerit ~ANIMEの世界からようこそ!~を読んでくれ!




