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Episode5 "処女は童貞”

「はぁ、来てくれるかなぁ、瀬名くん。」


秋山紅葉は熱い日差しの中、屋上に瀬名が来るのを待っていた。


(こんな漫画見たいなシチュエーションになるなんて私はツいてる。しかもとびきり美人ときた。他の男子何て目じゃないくらいに瀬名君は美しい。でも、私以外に瀬名君の素顔を知らない...ふふふ)


独占欲が秋山の脳内を駆け巡る。すると屋上のドアが開く音がしたので後ろを振り向けば瀬名がいた。


「それで....何かな、秋山さん。」


マスク越しで表情が分かりづらく剥がしたい気持ちになるがその感情を抑えて瀬名の近くまで歩いて行く秋山。


「うんうん、唯、いつも瀬名君は学校で一人でいるから一緒にお弁当を食べようかなって。それにいつも昼食中は何処かに行ってたし。」


瀬名は眉間に皺を寄せる。


(確か日記には昼食はトイレで食べてたって言ってたな......だがそれよりもこの女....)


「秋山さん、あまり僕と学校ではこうして一緒にいない方がいいよ。挨拶とかはいいと思うけど流石に一緒にいると周りから感づかれるから。」


瀬名はそう提案するが秋山は引き下がらなかった。


(このチャンスを無駄に出来ないよ!)


「でも逆に考えて見て。私たちが一緒にいる事で手出しが出来なくなるって。」


その切り返しに瀬名は目を見開くがすぐに落ち着きを取り戻し返答を返す。


「うんうん、お気づかいだけでありがたいよ。流石にリスクがある事に自分からは突っ込めないからね。」


「大丈夫!私が瀬名君を守るから.....命に変えても!」


(この女......しつこいな。童貞特有の勘違いでもしているのか?いや、この世界だと処女特有か。)


漫画の台詞のような言い回しに瀬名は呆れ静かにため息を吐くが目の前の秋山は未だに自分を守るのどうのと力説している。


(まぁ、分からなくもない。仮にこの状況を現実の世界に置き換えて考えて見ると美少女が素顔を見られないよう学校を過ごさなければならい。そしてその素顔を知っているのは自分だけと考えると.....)


瀬名は苦い顔をしながら秋山を見る。


「_からですね、私が瀬名君を「秋山さん!」


未だに力説する秋山の話の途中に名前を呼ぶ。


「秋山さんの気持ちは本当に嬉しい。でも、やっぱり秋山さんにも迷惑をかけるし.....だから、もし、僕が本当に困った時には相談をしていいかな?」


周りに誰もいない事を確認し伊達メガネとマスクを外し笑顔でそう言うと秋山は顔を伏せコクりと頭を縦に振った。


(ちょろいもんだ、餌をちょろっと上げればすぐに従う。)


すぐに伊達メガネとマスクを装備し直し秋山に教室に戻る事を伝えた。


「そろそろチャイムもなる時間だから、僕は戻るね。それと守るって言ってくれてありがと。生まれて初めてそんな事言われたから嬉しかった。」


勿論母を除けばだが。瀬名は屋上を後に教室へと戻って行った。


「て、て、天使だぁ......可愛い、そ、そ、それに私が初めての人だなんてぇ...えへへ。」


身体をくねくねさせながら踊る秋山の顔は赤面していた。そして屋上にあるフェンスへと持たれかかり真剣な表情へと顔を切り替え決意をする。


「あの笑顔を私が守る......私が瀬名君を守るんだ。」


拳を握り締め教室へと向かい駆け出すのだった。そして午後の授業を終え瀬名は帰宅の帰路へとつく為カバンを手にクラスルームを後にする。


(どうする、バスか、電車か?いや安全面を考慮してバスにしよう。)


家からは駅二つ分は離れて下り歩きで学校へ行けば一時間と掛かる距離だった。瀬名はバス停へと向かうのだが背後から視線を感じていた。


(後をつけられている......)


瀬名は角へと曲がり相手を待ち伏せる事にする。片腕をポケッ卜へと入れスタンガンを握り締める。


「あれぇ?瀬名くん何処にっ!?」


「........秋山さん。」


予想は出来ていたが本当に秋山である事にため息を吐きスタンガンから手を離す。


「せ、瀬名君.....奇遇だね?たはは。」


わざとらしく演技をする秋山に元演劇部所属だった瀬名は活を入れたくなったが我慢をする。


「あ、うん。そう言えば秋山さんって僕の家から確か近かったよね?「うん!」


返事がすぐに返ってきた事に思わず驚くが気を取り直して聞いて見る事にする。


「じゃあさ、今日、途中まで一緒に帰らない?」


バレバレなストーカーをされ目立つよりはまだマシだと思いそう提案をするとぱあぁっと明るい表情になりとんでもない事を口走った。


「よかったぁ、隠れて瀬名君を見守りながら守って行こうと思ってたから、えへへ。」


(この女、.....自分がストーカーまがいの事をしている事に自覚はないのか?)


秋山に天然が入っている事に危機感を持つ瀬名は後ずさりながらもバス停へと二人で向かって行く。そしてバスが着くまでにまだ時間はあるようなので座って会話をする事にした。


「そう言えば、瀬名君って兄弟とかっているの?」


(私は女なんだから瀬名君と会話が持つ話しをしなきゃ、つまらない女だって思われないように!)


「うんうん、一人っ子。家には母さんと僕だけで住んでるんだ。」


「へぇ、羨ま...おほん、私も実はそうなんだ。あ、でもうるさい妹もいるかなぁ。」


(今、羨ましいって言おうとしたな。)


この世界の常識として男は価値がある事から一つの家庭に根を下ろすことはないらしい。だから昔、抱いた女性を忘れる事もよくある事なのだそうだ。


「でも、僕も兄弟とかって欲しかったなぁ。多分年下の弟、妹が入れば甘やかしてたし逆に兄や姉が入れば甘えてたと思う。」


「......瀬名君がお兄ちゃん....えへへ。」


(この女、また妄想に浸ってるな....)


「秋山さん、大丈夫?」


心配したトーンで言うが瀬名の頭の中では秋山さん、(頭)大丈夫?だ。


「う、うん!大丈夫だよ、えへへ。あ、バス来たし乗ろっか?」


慌てる様にバスに乗り込む秋山の背を見て小さく笑う瀬名もバスへと乗り込むのだった。それから数十分と時間が経つとバスは自分達のバス停へと止まった。


「バス、お客さん少なくて良かったね?」


秋山が瀬名の隣に立ちそう言うと瀬名もそれに頷き相槌をうった。


「そうだね、あのバス停を選んで良かった。」


実は人にあまり使われないルートが日記に書かれていたのだ。それを元に少し離れたバス停に乗った事が幸をそうし無事辿りつける事が出来た。


(よし、無事に家に帰ってきたぞ。)


自分の家の前に辿り着き胸を撫で下ろす。


「あっ.....瀬名君、今日はお話出来て楽しかったよ......あの!」


もじもじとしながらチラチラと瀬名の方を見るが中々言い出せないでいた。瀬名はその姿に保護浴が掻き立てられるがその思考を消し先に口を開く。


「今日は一緒に帰ってくれてありがとう、楽しかった!明日も、もし良かったら帰り一緒に帰らない?」


その言葉を聞き秋山は涙を流しながら天使様、天使様と小さく呟いたが聞かなかった事にし秋山のおでこへとデコピンする。


「痛っ!?」


「あはは、何泣いてんだよ!せっかくの可愛い顔が台無しだぜ!またね、秋山さん!」


瀬名は秋山を背に自分の家へと入る。そして玄関の覗き穴を確認すると未だに同じ所に立ちデコピンをした場所を擦る秋山がいた。


(嬉しいだろなぁ〜、オレだったら嬉しいもん。)


要約すると_ふふ、何泣いてるの?せっかくのかっこいい顔が台無しだよ、とクラス一の美人に言われるような物だ。


「うぅ、今日はおでこ洗えないよ.....えへへ、可愛い顔だって......もぅ.....」


笑顔が抑えられない秋山はおでこを擦りながら家へと帰るのであった。


ブックマーク10件とっぱって早いなぁ


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