Episode4 "学び舎とは"
チリリリリリッ!
「ん..........朝か、」
早朝独特の毛布に包まっていたいと言う気持ちを抑え浴室へとシャワーを浴びに行く。どうやら母は既に一階にいる様で香ばしい匂いが此処まで届いて来た。
(朝食が楽しみだ。)
服を脱ぎシャワーを浴びる。男のシャワーシーンなど誰の特にもならないが瀬名の場合は一定の男達までもが興味を持つので厄介なのだ。
(さて、学校までは母さんが送ってくれる。だが、帰りは違う。仮に襲われた場合、この肉体で逃げ切れるか?前の世界だとこの時期は確か陸上で鍛えていた筈だけど......この貧弱ボディ。)
瀬名は浴室内にある鏡で自分の身体を確認するが目に見える程に細くなっていた。
「俺のシックスパック......ふざけてんのか?女の子見たいな細腕しやがって.....クソ!」
瀬名は鏡を叩きつけるが自分の腕が痛みしゃがみ込む。すばらくすると落ち着きを取り戻し自室へと制服を着る為戻って行くと母が部屋の前で立っていた。
コンコン「ジョン、置きないと遅刻するわよ?」
どうやら自分を起こしに来てくれた様だが既にシャワーを浴び準備をする所だった。
「おはよう、母さん。」
「あら、もう起きてっ」
後ろから声を掛けると母は振り向き硬直した。そして鼻血が唇を伝いポタポタと床へと垂れる。
(一体なん.........はぁ、そう言う事ね。)
上半身裸でパンツ一丁だと言う事に気づき理解する。これは現実の世界におけるおっ○い丸出しの美少女がパンティー、一丁で姿が現れるのと同義だと言う事に。
「な、な、なんて、か、格好をしてるのぉ!お、お母さんだってお、女なんだがらき、き、き、気おつけなさいぃ!」
鼻血をエプロンで拭い急いで一階へと降りて行く母の姿を苦笑しながら見守る瀬名。そして制服を手に着替えて行く。キッチンへとたどり着いた一は顔が蒸発した様に煙を上げ赤面していた。
「お、お、おっぱい........ジョンきゅんの、お、おっぱい.......きゅぅ」
腰が砕けその場へと膝をつき一息つく。
(危なかった.......危うく試食をしてしまう所だった。18迄は手を出さないって誓ったじゃんない......私の魂に!)
一は気持ちを整理し立ち上がり料理をテーブルへと置いて行く。するとタイミングよく制服を纏った瀬名がリビングへと姿を現した。
「母さん、さっきの姿、可愛かったよ、あはは。」
瀬名は笑いながら席へと着き自分の分の食べ物へと箸をつけて行く。
「も、もう!お母さんをからかっちゃあいけません!」
一も同じく席に着き朝食を取り始める。瀬名はテレビのリモコンを取り電源をつけると先日と同じ様に女性による強姦行為の問題について話されていた。
_男性車両をもっと増やして欲しいですね。
_怖い、いつ襲われるかたまったもんじゃないよ。
_早く作ってくれませんかねぇ、
_俺は別に気にしてないっすけどね、あはは。
良い歳したおっさん達が電車やバスなどの男性車両の増量について訴えるのに対し最後のインタビューイだけは軽く気にしてないよっと答えるのを見て瀬名は感心した。
「もっとこう言う子が増えれば平等な世界が成り立って行くと思うんだけどね。最近は男性政治家達も奮起してるって言うし明るい未来はもしかしたら近いのかも知れないわねぇ。まぁ、私はジョンきゅんがいるから毎日が明るい白薔薇なんだけどね。」
一はドヤ顔で言うと瀬名は笑い一も釣られて笑った。
「さて、お皿も洗い終わった事ですし、そろそろ学校に送って行こうか。」
瀬名も装備を装着し準備が出来ている事を伝えると車庫へと向かった。車へと乗り込むと母は自分に一万円札を渡し帰りは男性車両に乗る事を約束させられた。もし、電車が無ければタクシーに乗れとの事だ。
(平等な世界になればって話をさっきまでしていた筈なんだけ......矛盾してませんかねぇ、母さん......)
「着いたわよー、はぁ、早くジョンきゅんと逢いたい。仕事早く済ませて帰るから来おつけて帰りなさいよ。」
母はそう言う残すと会社へと向かっていった。
(それにしても乗ってる車と良い、家と言いこの世界の母さんは何の仕事をしているんだ?)
昨日はあまり気にせずに車庫の車種を見なかったがシェ○ビー・マ○タングGT500、ポル○ェ718ボクスター、そしてカ○サキNi○ja-H2が存在していた。車二台、バイク一台でどれも二人乗りを前提とした乗り物だし若干運転が荒かった気がするのは気のせいだろうか。
「何はともあれ今からが勝負だ。行くぞ。」
少し登校時間よりも早いと言う事もあり生徒の姿はまだなかった。職員室へと鍵を取りに向かうと先生らしき人物が話を掛けて来た。
「お、瀬名!早いな!」
ジャージにボサボサした髪、化粧は薄く三十代後半といった女性で瀬名は臆する事もなく挨拶を返した。
「おはようございます、先生。」
「それにしてもお前のマスクの素顔、気になるなぁ?いつになったら見せてくれるんだぁ?」
フランクに話すこの教師にややイラつきを感じるがなるべく平然を演じ返答を返した。
「まぁ、気が向いたら、ですかね?はは。」
マスク越しで相手には分からないが愛想笑いを浮かべ教室へと向かう事にする。
「それでは先生、僕はそろそろ教室に向かうので失礼しますね。」
「あぁ、何か困った事があれば先生達を頼って良いからな!」
ありがとうございますと一礼すると先生は職員室へと入っていった。
(この世界には珍しく媚びてないな。先生に、ではなく先生"達"にってところがポイントが高い。)
通常の逆転世界ならアホな童貞作者達により主人公は公共の場でも見境なしに相手と交わるだろうが俺は違う。例えばの話、仮に今の先生と会話をしたのがそこいらのテンプレートな逆転主人公であれば相談事があると称し生活指導室へと行くとある程度の会話が行われた後に淫行をするだろう。
だが仮にこれが露見したとする。教師はもちろん懲戒免職かそれ以上だろう。そしたらオレは如何なる?世間からは教師に股を開いた腐れチ○コ扱いな上、社会に出るときは確実に不利益になる。
(売りをするのは更にバカがする事だな。価値があるのに何故、自分から捨てに行く事が出来る?)
性行為は確かに気持ちいいのだろうが売りなんて物を続ければ病気を貰うのは時間の問題。進んで出来るものではない。餌を与えるのは良いが極上な餌を与えるのは間違いだ。
(抱くなら一流の美しい女性を抱けと言いたい。)
それが逆転世界に来て勝利を勝ち取ると言う事だろう。その辺のヤンキーやら痴漢を抱いてドヤ顔を決めている人達はとても残念な方々だ。
(言い方を変えるとDQNやくたびれた痴漢サラリーマンに股を開いてる頭の緩い子とも言い代えれるな。)
教室の窓を開き風を感じながらそんな事を考えていると生徒達がちらほらと登校して来た。
「さて、自分の席の確認も取れたし取り敢えず座って今日を乗り切る事にしよう。」
そう、今朝早く来た目的の一つが教室での席の確認、そして同じクラスに他の男子生徒がいるかの確認だった。
(幸運な事に俺の他にもう一人、男子生徒がいるな。ただ、気がかりなのは日記にその男子についての記述がされていないと言う事だけど。)
かなりの女生徒達がクラスルームへと入ってくるが誰一人として自分へとは話を掛けて来なかった。たまに胸部に視線を感じるが数は思っていたよりも多くは無かった。そしてホームルームが始まる鐘がなる寸前教室へと息を切らした秋山紅葉が姿を現した。
「せ、セーフ!間に合った!」
そのまま自分の席に向かうが瀬名の机を通り過ぎる時トントンと叩き小さく挨拶をして来た。
「おはよう、ジョン君!」
瀬名はこくりと頭を振りその挨拶に答えるとこのクラス担当の教師が入って来た。
「よーし!出席を取るぞー!1番、藍川いるかー!」
「はーい!」
番号順に出席を取る教師を見ながら何処か懐かしさを感じていると隣の席の女の子に机を優しく叩かれる。
「瀬名君、呼ばれてるよ?」
瀬名はその子へと視線を向けるとその子は人差し指で前を指していた。その方向を見ると教師が自分の名前を呼んでいたのだ。
「瀬名君如何した、体調が悪いのか?」
教師は心配した表情で瀬名を見るが首を横に振り問題ないと言う事を伝えた。その後何事もなく時間は過ぎて行くが昼休みが始まると秋山が自分の机へと折り畳まれたメモ帳を落として行くと教室を出て行った。
「屋上に来てください......ね」
(..........何かしらの接触は図ってくるのは分かってたけど.....一応は対策はしておくか。)
瀬名は今朝、家を出る前に母に渡されたスタンガンをクラスメートにバレないようにカバンの中からポケットへ入れ屋上へと向かうのであった。