Episode 37 "収束"
「みんな、......誰だ、その人?」
海斗は至るところに包帯を付け痛々しい姿だった。そして自分達の姿を見てやつれながらも疑問を口にした。
(此奴が海斗...........利用してこの場を逃れるしかない。)
瀬名は鋭く海斗を見ると自身へと纏わりつく四人を無視しながらも海斗へと近づく。早朝という事もあり横に広がる海は眩しく光っていた。
「君が、海斗くんだね?」
「あ、あぁ」
(この人、綺麗だ。まるで、CGとか映画に出て来るエルフ見たいに......)
海斗は瀬名の美しさに魅了される。
(........あぁ、そうだね........彼になら彼女達が恋い焦がれるのも仕方がない、か。)
海斗は瀬名の美しさに当てられ彼女達が何故自分から離れて行ったのかを理解した。
(真一、君も.......いや、あれは.....違うな.....オレが......オレの..自業自得だ........)
下を俯き海斗は拳を強く握る。今にも泣き出してしまいたい衝動に駆られるが耐える。すると自分を見る瀬名という男が声を掛けて来た。
「この子達は君の友達だろ?いや、真一君から聞いたけど、みんな君の事が好きなようだ。」
瀬名は優しく彼へ向け笑う。纏わりつく彼女らもその笑みにやられ口を開け赤面していた。
「ただ、彼女達は本当の好きと言うものを勘違いしてオレにこの様に引っ付いている。」
瀬名は困った表情を浮かべる。その表情は誰しもが彼を助けたくなる様な儚げなものだった。すると三人は瀬名から離れニコニコと笑う。
「ジョンのそんな顔見たら、もぅ!大好き!」
一ノ瀬は逆ギレした様に言うとフンと顔を背ける。
「えへへ、王子様が困ってるなら離れてあげるね!特別だよ?」
ぶりっ子ボイスをフルに使い自分を可愛く見せようとする蒼井。
「ま、嫌われたくないからね」
クールにそう言う氷室。だが四人目であるステラは離れないでいた。
「むふん!」
誇らしげな顔をするステラ。
「いや、空気読め!」
瀬名はツッコミを入れてしまう。
「ボクをそこにいる娼婦共と一括りにするな。ボクは女神だ。女神と言うのは常に傲慢で無ければならないって何をする貴様ら!私に触れるな◯液臭くなるだろうが!!」
一ノ瀬と蒼井は無理やり瀬名からステラを引き剥がす。
「「何が◯液よ!!」」
少し離れた位置で氷室はふっと鼻を鳴らしステラを引く二人は氷室へと視線を向けると、
「私も其奴らと一緒にされるのはご免なんだけど」
氷室は毒を吐いた。
「「は?」」
「いや、負け犬にはなりたくないし」
二人はステラを離し無言で氷室へと襲いかかる。そして三人は取っ組み合いを始めた。
「月子たち、まだあんな事やってたんだね。でも、久し振りに見れて良かった。あぁ、本当に懐かしいなぁ、」
海斗は彼女達との思い出を思い出し嬉しい気持ちと悲しい気持ちとで何とも言えない気持ちを抱えた。朝陽による眩しさか二つの光が海斗の頰を伝った気がした。
「もう一度戻ればいい。真一は........無理かも知れないが、彼女達ならば友達からやり直せる筈だ。」
瀬名は海斗に対しそう言う。
「真一は.......無理か.......」
(いや、分かっているさ........だけど、あいつとは)
友達に戻りたい。そう心が叫んでいる。勿論自己中過ぎる事は分かっている。
(..........だけど諦めきれない!)
「君に会えて良かった。停学中だけどもしかしたら君に会えると思って待ち伏せしてて良かったよ。」
海斗はそう言うとその場を去ろうとする。
(ふっざけんな!何いい話で終わらせようとしてんじゃ!彼女達を連れていって貰わなければ困る!)
瀬名の表情は固くなり去ろうとする海斗の手を取る。
(こうなれば強引に行く!)
「君に謝らなければならない、すまなかった。」
(謝罪から始まり彼女達を無理矢理押し付けてやる。)
「彼女達は君の事を本当は心駆られるが想っている。どうか、仲直りをしてくれないか?」
瀬名がそう言葉に出すと後ろに控える四人は顔を合わせ小さく意味深に笑った。
「オレがいては邪魔になるだろう、........それではオレはこの辺りで、」
そのまま逃げる様に海斗達を残そうとするが......
「ねぇ〜ジョ〜ン〜何処にイくのぉ♡」
先程と同じ様に自身の手を握る一ノ瀬月子。
(くっ!)
瀬名は冷や汗を流す。
「こら、またぬか!后を置いて行こうとするとは、まったく!もぅ!」
怒る様にもう一つの腕へと引っつくステラ。完全に両腕を防がれ初期へと戻り絶望した顔に戻る瀬名。
「むふぅ、王子様ぁいい匂いぃ//」
後ろから抱きつく蒼井花。
「今度は逃がさないから」
正面から抱きしめる氷室空。
「ありがとう......でも、どうやらオレの出番はないようだ。どうか、月子達と仲良くしてやってくれないか?」
海斗は何処か悲観した表情をした後、すぐに表情を無理矢理笑みに戻し瀬名へとそう言う。そしてそのまま走り去ってしまった。
(やばいやばいやばいやばいやばいッ!!)
完全に積んでいる状況に瀬名は表情を暗くする。
(........逆レ○プされる。完全に拘束されてる。しかも四方から......)
表情が沈んでいる瀬名とは対照に四人は嬉しそうに瀬名へと身体をこすりつけ光悦とした表情をしていた。
「が、学校に行こう?お、遅れるだろう?」
「「「「い・や♡」」」」
四人は台詞をハモらせてさらに自分へと密着する。
(.......万事休すか)
最悪、貞操のロストを覚悟しようと心の中で考えていると誰かの声がした。
「.......ジョン」
ん?誰か自分の名前を呼んだかな?
「.....だぁれぇ?その雌餓鬼達はぁ?」
あ、やばい.......
「お、お前ら、逃げろ!」
瀬名は叫ぶが既に遅い。四人はすぐに瀬名から引き剥がされ地面へと組み伏せられる。そして殺意の篭った視線を四人は受け一ノ瀬は気絶をした。蒼井は何とか受け身を取るが手刀が入り気絶する。氷室は怯え視線だけを自分へと向けていた。ステラは.........
「うむ、新しいな!」
感慨深く頷いていた。すると組み伏せた人物はゆっくりと立ち上がり自分へと近づいてきた。
「お母さんいったよねぇ?」
ひっ!怖い!目に光戻ってくれぇ!どす黒いよぉ!
「..................不純異性交遊は我が家では禁止だってぇ?」




