Episode 25 "恋をした"
「ねぇ!ねぇーえ!花〜花ー?駄目だ、聞こえてないよ、この子。」
鐘が鳴り友人達が蒼井を昼食に誘いに来たのだが蒼井本人は上の空の為聞こえていなかった。
「今日は愛しの海斗くんの所に行かなくて良いんですかー?」
「駄目だこりゃ。この子全然聞こえてないもん。」
「ふーん、じゃあしょうがないね!」
「あ、アンタ、まさか!?」
バシン!
友人の内の一人が蒼井を起こす為に平手を打ちを叩き込む。
「痛ったーい!!!!」
眼を覚ましたのか周りを見渡す蒼井。すると此処が学校である事に気づき直ぐ様机から教科書を出そうとするが周りに友人達がいる事で授業が終わっている事に気づく。
「あれぇ、みんなこんな所でどうしたのかなぁ、えへへ。」
可愛らしく笑う蒼井。
「何か良い事でもあったんでしょ〜!」
「もしかして海斗くんと??」
キャアアアア!と一同は嬉しそうにリアクションを取るが蒼井は首を横に振った。
「うんうん、海斗くんじゃないの。それよりもお腹空いたねー食堂行こうよ!」
お腹を撫りながらえへへ〜と皆へと笑い掛けると一同はしょうがないなぁ〜と笑い合い食堂へと向かった。
「でも珍しくな〜い?花、最近愛しの海斗くんにつきっきりだったじゃん!」
「確かに!大丈夫?私達と食べてて。」
「ライバル多いでしょ!」
一同と共に昼食を開始すると怒涛の質問を問いかけてくる事に内心、イラつきを感じる蒼井。
「うん、多分大丈夫だよ。最近、ライバルの二人が海斗くんに愛想を尽かしちゃったのかな?海斗くんに言い寄る女の子が減ったから時間が出来たんだー、えへへ〜!」
何気なくそう言葉に出すと周りは驚いた表情を浮かべていた。
(あっ、しまった.....)
思っていた事が口から溢れ出てしまった事に蒼井は片目を瞑った。
「は、花、あんたって意外に腹黒な所あるのね、」
「恋は女を駄目にするって聞くけど.....花は何時もの花でいて欲しいよぉー!」
「花が小悪魔系に進化をした、ピロリン。」
「効果音ww」
日頃の行いが良いせいか皆は自身の変化に寛容だった。蒼井は胸を撫で下ろすと今朝の出来事を脳内でフラッシュバックさせる。するとある事に気がつく蒼井。
(あの人........もしかして、本屋で目線が合った人?.....違いない、昨日は直ぐに通り過ぎたから顔を良く見れなかったけど、凄くカッコ良かった筈.......これって........これって........)
蒼井は食堂で注文したうどんへと箸を伸ばし口へと持っていく。チュルリとうどんを口の中へと吸いこむと蒼井は立ち上がり宣言した。
「運命!!」
蒼井の友人達はお、どうした?と言う表情を浮かべるが蒼井は気にせずその場を急いで去ってしまう。友人達は彼女の去る姿を唖然としか見る事が出来なかった。
そして放課後、瀬名は正々堂々と真一の高校である校門前で待ち伏せをしていた。
「瀬名さん!何してるの!めっちゃ目立つじゃないか!」
真一は瀬名の姿を教室から発見すると急いで校門前まで走り瀬名を訪れる。
「遅い!」
プンプンと怒る瀬名。
(もうこの人、いちいち可愛いな!)
真一は瀬名のその姿を見て照れるといつもの屋上へと瀬名を案内した。
「瀬名さん、学校ではハーレム崩しはしないって事になったんじゃあないのか?」
「.....最初はそうだった。だが、外では氷室と一ノ瀬に合う可能性が高い!いや、実際にさっき此処に向かう時、遠目だがアイツ等を見かけた。」
「アイツら、標的を瀬名さんに変えてもやる事は変わらないなぁ....いや、むしろ海斗の時よりも悪化している気が....」
瀬名は頭を抑えると片目を瞑り真一へと問うた。
「それで、あの女は何処だ?」
「あいつなら確か、教室に「「「バンッ!!」」」
瀬名の問に答えようとした瞬間、屋上へと繋がるドアが思いきり開かれる音が屋上を包んだ。
「真一くん!此処にッ!?」
屋上の扉から姿を現したのはこれから向かうであろう標的本人だった。
(う、嘘!?何で、此処にこの方がいるの?.....海斗の取り巻きであるこいつ(ホモ)が最近、違う男にべったりだと噂では聞いていたけど....)
「えへへ、真一くん、こんにちは。久しぶりだね?」
可愛らしくあわあわと表情を変える蒼井。
(海斗にはもうこの方と出会った事で本当は興味は無いけど....私にも純粋一途と言う世間体がある。だから落ち込みぎみの海斗を励まそうとこのホモ助へと手を借りようと思えば.....)
「.....まさに、運命じゃない」ボソり
小声で言うその台詞は瀬名には聞こえていた。ゾクリと寒気が押し寄せる。
「(おい、真一、一度、引くぞ!)」
「(瀬名さんなら行けますって!頑張って下さい!)」
「(馬鹿野郎!もうこいつは堕ちてる!これ以上深入りすれば......オレが喰われる!)」
事実、真一が此処にいなければ瀬名は押し倒されていただろう。
「真一くん、ちょっとこの方と二人でお話があるから、時間、いいかな?ね?」
彼女は既に瀬名しか見ていなかった。何処か目が虚ろで頬が紅くなっている。先程まで晴天だった空は曇り、より蒼井の不気味さが際立っていた。
「(な!こいつの瞳を見れば分かるだろ!)」
瀬名は頼むからと真一に聞こえる声で言うが、
「瞳を見ると......何ですか?えへへ。」
眼を一瞬離した隙に彼女は隣に立ち自分の腕に引っついていたのだ。
「ひっ!」
思わずそう漏らす瀬名に真一は急いで彼女を引き剥がそうとするが。
「何をしているのかな?かなぁ?」
蒼井は真一に頭突きを入れるとみぞおちに拳を叩きつけた。
「ぐぶっ!」
胃液を吐き出す真一を見て一度、蒼井から距離を取り構える瀬名。
「ふふ、可愛いなぁ。私のお爺ちゃんが道場の師範なんだぁ。それで最近までは護身の為に習ってたんだよ。大会でも全国にも何度も出場したし凄いでしょぉー?」
構える瀬名を無視して瀬名の懐へと入り瀬名を抱きしめる。
「王子様は絶対にお姫様に手を上げたりはしないんだよ、えへへ。」
スーハーと顔を瀬名の胸に埋め匂いを嗅ぐ蒼井。
「お姫様ってよりも戦士とか騎士の方が似合うんじゃあないのか?」
「ふふ、じゃあ貴方様が私のお姫様って事になるよぉ?」
皮肉で返したつもりが皮肉で返される瀬名。
「そう言えば今朝はありがとー。私‘の’為に助けてくれたんだよね?嬉しかったなぁ、倒れた私を一人のお姫様見たいに手を差し出してくれたのぉ〜。えへへ、一生の思い出だよー!」
後ろには真一が腹を抑えつつも立ち上がり瀬名へとアイコンタクを送っていた。
「あ、私の名前、言ってなかったね?」
瀬名はその視線を受け取ると蒼井の腰に手を回し抱きしめる。
「アン//もぅ//此処でするのぉ//」
瀬名は何を言っているんだ、このアマはと思いつつも真一へと自身の手荷物であるカバンを探れと指示を出す。
「....オレは瀬名ジョン。」
時間を稼ぐため、自分の名前を告げる瀬名。
「私はぁ、蒼井花。花って呼んで?呼んでくれなきゃ何するか分かんないからねぇーえへへ。」
そう言うと蒼井は目をトロンとさせ唇をゆっくりと瀬名に対し突き出していく。瀬名は今だ!と蒼井を強く抱きしめると真一が蒼井に向けスタンガンを放った。
「きゃっ!」
可愛らしく叫び声を上げると蒼井は気を失う。それを見た瀬名は彼女を優しくその場に寝かせ胸を撫で下ろした。
「見たか、真一。今のがヤバイ奴の典型的所業だ。クレイジーなサイコパスビ○チだ。オレはこれまでもこう言った輩と渡りあって来たが.....今回はかなり危なかった....」
「あ、あぁ....見方が180°変わったぜ。」
その後、瀬名と真一は蒼井を階段まで運びその日はそのまま学校を去った。
けっこう面白いよね、この作品(自画自賛)
読み直したらやっぱし逆転物で一番面白いじゃねぇか?とか思うし。まぁ、最近はちょっと逆転世界から離れてるけど、これからの展開上、必要なプロセス何で勘弁!
それと何度も言うが、Chaos demerit~不屈の英雄~もブクマしやがれぇ!




