Episode1 "逆転世界”
貞操が逆転した世界。本来の世界であれば男が女に対しエッチな感情を抱くはずが逆転した世界では女が男をエッチな目で見るのだ。
例えば逆転した世界のコンビニのエロ本コーナには裸の男が表紙をかざっていたりなど。
そんな世界に超絶美男がいけばどうなるかはこれから始まる物語を読んで見れば分かるだろう。
貞操観念が逆転する世界、それはモテない男達からすれば極楽浄土なのだろうが現実世界で既にモテて尚、さらに強姦未遂を星の数程受けて来た男が行けばどうなるのかお分り頂けるだろうか?
__それはまさしく地獄
これ以上、襲われれば身は持たないし行きたくもないと異世界物でもその世界だけにはと拒否反応を示している男が行く事になるのだ。その男の名を_
_瀬名ジョン
彼の名はかの有名なプロレスリング選手と名を被せる事になるが彼はこの名を恥ずかしいと考えた事は一度もなかった。親から授かった名前なのだ、感謝しなくてはならない。
だが反対にペット感覚で名を与えられた子供達には同情する。漫画の様なルビを現実世界に持って来て市役所がそれを可決する。これはどう考えても可笑しいと思うのは自分だけか?
これも時代の移り目と考えれば悲しい時代になったものだ。
まぁ、何はともあれ、今日は高校卒業日と人生で一度しかないイベント、遅刻は出来ない。ただ、自身に友達と呼ばれる関係者が残念な事にいない以上、別段悲しくなる卒業式にはならないのは確かだろう。はい、そうですよ、ぼっちですが何か?
(うちの母親は最近可笑しい........いや、可笑しくなり始めたのは正確には身長がちょうど母と並んだくらいだろうか?)
「母さん.....今朝のアレは何ですかねぇ?」
危うく自分の母にガチの強姦未遂に会ったのだ。決して自分は貞操観念が逆転した世界にいる訳ではない。母は極度のムスコンなのだ。ムスコンの発音の馴染みやすさについ言葉に出して言いたくはなるが敢えて言わないでおこう。
「お母さんねぇ、うんうん、一はね、我慢がもう出来ないの。敢えて私はこれまで良いお母さんを演じて来た。でもね?女としての歯止めが効かなくなって来たの。そう、私の本来の姿は野獣なの!近親相姦系ヤンデレ女子なの!」
キッチンの机に対面に座る自分に力説する母親こと瀬名一。
(頭が、.........イっちゃってるみたいですねぇ........)
「近親相姦系ヤンデレ女子って...」
ドン引きした顔で自身の母親へと顔を向けると一は自分の身体を抱きしめ光悦した表情で瀬名の元へと滲み寄る。
「ち、近い、母さん!」
「照れてる、照れてるー!きゃあああああぁ、もう、可愛い、食べちゃいたい!.......いや、帰って来たら食べるんだけどね?」
息子に対し怖い事を言う母に後ずさる瀬名。母によると如何やら18迄は鋼鉄の精神で息子に手を出さないと心に誓っていた様で如何やら高校卒業と言うトリガーが外れた事で暴走している様なのだ。
(なぜ再婚しないのかを今、理解した気がする。)
「む、今何か変な事を考えたでしょ?」
鋭さもありこの母親は厄介だ。少し紹介すると自分は母子家庭に育ち父親の事は見た事も聞いた事も一度もない。そして母は一流企業でかなり偉い役職についていると聞いたが深い所迄は教えてくれなかった。住んでいる場所もかなり良質なマンションの一室で一階には管理人さんが何時も待機しこのマンションを監視している。
「そろそろ、行くよ。」
「あら、もう行っちゃうの?」
「あら、もう行っちゃうのって、今日は卒業式なのですが.....」
取り敢えず家を出て学校へと向かう事にする瀬名は考えていた。
(大学は一人暮らしが鉄板.......あの家を出なければ)
_犯される
その一言が頭を鋭い勢いで駆ける。バスに乗り込み椅子に座ると他校の生徒達も乗り込んで来た。
「ねぇ、あの後ろに座ってる人....」
「うん、やばいよねぇ!」
女子生徒達がヒソヒソと自分を見ながら話をしていた。その姿を無視し自分は外の景色を見る。
(あぁ、もうやだ.....普通の世界で住みたい。)
綺麗な海に朝日が当たり幻想的な景色を魅せる中、瀬名はそんな事を考えるのだった。そしてバス停へと辿り着き降りる。
「この坂も、最後って思うと寂しくなるなぁ。」
学校へと繋がる坂を歩く瀬名の姿は何処か儚くも険しい道を進む勇者の様に見えた。すると突然、背中に何者かが抱きつく感覚に襲われる。
「先〜輩!あ、無視って酷くないですか!私こう見えて学校一に選ばれる美少女なんですよ!」
「.......」
瀬名はその後輩を無視して学校へと歩き始めるが彼女は媚びた顔で犬の様に自分の後を追って来た。
「くっそォ!また瀬名の奴の所にぃ!」
「僕は許さないお!!!!」
「奏ちゃんはオレたちのアイドルなんだぞ!!」
「コロス」
周りの登校している生徒、いや信者どもは自分がこいつといることで殺意を向けられるのだ。最後の奴に至っては殺害宣言を堂々としている。だが瀬名は気づかない、女子の殺意は後輩へと向けての物なのだと。
「もぉ、何でいつも先輩は私を無視するんですか。私もう怒っちゃいました!」
そして後輩はあろう事か自分の腕に自身の腕を絡めて来たのだ。周りの奴らは更に上乗せした軽蔑と殺意で此方を睨んでくる。
「っ、離せ、」
「イヤです❤︎」
静かにそう呟いた自分に拒否をする後輩。確かにこの女は可愛いのだろう、匂いも悪くない。何というか甘い匂いだ。だがオレはその色香には騙されない。
「聞こえなかったか?離せ」
少しドスの効いた声で再度離すように命令するが彼女は腕に今以上に力を入れ自分の腕にしがみついて来た。自分はその行為を見て後輩を力強くつき飛ばす。
「きゃ!」
地面に尻もちをつく後輩。周りの奴らは後輩の元へと駆け寄り自分へと野次を飛ばしてくる。
「オレに二度と近づくなって言っても今日が最後だろうがな。」
後輩に一言残しその場を離れる。後輩は下を俯き何かをぼそぼそ言っていたが聞こえなかったので忘れることにした。
「先輩が.....私と......話してくれた。」
下を俯き光悦とした表情でそう呟く少女を周りの取り巻きは心配そうに話をかける。
「あの、奏さん、大丈夫ですか?」
と肩に手を触れようとした取り巻きの一人。
「触れるなぁ!!」
自分の肩を抱き満足そうな顔でその場を立ち瀬名が歩いて行った方へと駆け足で追う。その場に残された者達は唖然とした顔で少女の姿を唯々眺めるのであった。
瀬名は自分の後を追ってこようとする後輩の姿を捉え校舎裏で身をギリギリの時間まで過ごす事にした。教室へ行けば確実にあの後輩が乱入してくるからである。
「いい加減にしてくれよぉ.....」
瀬名はため息を吐きフェンスへと背をつけ空を見上げる。
瀬名ジョンと言う男はモテる。それは彼の容姿がそこいらのアイドルやモデルを、いや日本など目ではない程に凌駕しているからだ。世界レベルの容姿を兼ね備え磨けば世界の頂点を目指す事も可能だろうという端麗な容姿をしている。
(毎度、まいど....本当に疲れる。)
中学時代の事柄から瀬名は高校に入ってからは“サス系”を演じていた。某忍者漫画の様にクールに他から距離を置く孤高の存在の事を総じて彼はそう呼ぶ。
「部活に入ったのが問題だったのだろうか....」
瀬名は好奇心旺盛な人物でもあり中学時代はいろいろな部活へと入りその才能を開花させて来た。全国なども何回か出場もした。だが飽きが来るとすぐに止め他の事に移行する事を繰りかして行くとその行為その物にも飽きが来て受験シーズンに入りアニメ鑑賞と勉強の二択のみとなって行く。
(あ、鐘がなった.....高校最後の.....教室に向かうか)
瀬名はフェンスから身を起こし下駄箱へと向かう。校舎内を歩くたびに過去の出来事が走馬灯の様に流れて来る。
高校進学時の時に周りにはたくさんの部活動を宣伝している先輩方らがいた。
「あぁ、貴方は何故、私の気持ちに気づかないの!私が貴方の事を凄く愛している事に!」
「それは、僕が君を.....」
その中でも一際目立っていたのが演劇部だった。瀬名はその演劇のパフォーマンスを見た時、これがやりたいと心の底から思った。
「それじゃぁ、新入生!自己紹介!!」
部活への初日での自己紹介、先輩方が先に紹介を終えると自分達の紹介に入る事になった。
「瀬名ジョン、一年です。」
簡潔に自己紹介を終えると部長はそれだけか!と言い笑った。残念な事に演劇部には五人しかいなく三年生は今年で三人卒業する事になっていた。そして新入部員は瀬名一人だけと。
「いやぁ、これからお前らも大変だと思うが、廃部にはするなよぉ〜」
それから一年が過ぎ先輩達は卒業をして行った。
「オレ達も三人だけになっちまったなー」
「オレ達で盛り上げて行かないとな!なぁ、瀬名!」
「は、はい。」
瀬名は実は周りには部活に入っている事など伝えていなかった。そして部室も人が通らない所に配置されており演劇部は幻などとも言われていた。だが部活紹介をする事でこの評価は変わる事となる。
「よっしゃ!今年は女子部員も入るといいな!」
「瀬名ぁー最低でも二人入れなきゃあ廃部だからヤバいと思ったらお前には辛いと思うが頼むな!」
「.....はい。」
実を言うと瀬名は新三年生の先輩方には自分がこの部活に所属している事は秘密にしてくれと頼んであるのだ。
(容姿を見て入るような奴は邪魔です。先輩方の様に演技に熱があり演技に真に興味がある生徒を育てたい。そして演技を共にしたいと思っております。)
「そんな事を真剣に言われたんじゃぁ、約束は反故には出来ないよな。」
「あぁ、だからこそオレ達のパフォーマンスで新入部員を手に入れるぞ!瀬名に無理はさせないようにな!」
先輩方は瀬名の意思を尊重し先輩としての意地を見せる事にする。
「私は醜い.....姿をお見せする事は出来ませぬ。」
「私は其方の心遣い、そして中身に惚れたのだ。容姿など気にするものか!」
瀬名は仮面をかぶり姫役を演じる。そして先輩の一人は貴族を演じもうひとりは語り手をしていた。そして物語は終末を終え三人でお辞儀をすると喝采と拍手が三人を包んだ。
「入部希望者募集中です!是非とも僕らと演技をしてみませんか?」
だが観客である生徒達はその声と共に散り散りに違う部活動へと足を運ばせるのであった。
「はぁ、やっぱ来ねぇーかぁ。どうする?やれて後一回だぜ。」
「あぁ、こうなれば悔いのないように「先輩!お、おれ仮面を」おい、それはお前が「いえ、やらせて下さい!やらない後悔よりやる後悔です!」......お前がいいならオレ達は反対はしない。だがもう一度聞くが本当にいいんだな?」
先輩方は心配した表情で自分を見るが瀬名は表情を明るくして頷いた。
「はい!」
先輩方は瀬名が仮面の下で明るい表情をしているのだと信じ演技を開演する。生徒達はたちまちに興味深く集まり三人を囲む様に演技に集中した。
「私は醜い.....姿をお見せする事は出来ませぬ。」
「私は其方の心遣い、そして中身に惚れたのだ。容姿など気にするものか!」
貴族の男は姫の被る仮面へと手を添える。観客達は世界にのめり込む様に手を口に抑える。前回の公演の時には仮面に触れ両者が泣き崩れ包容して物語は終えると言う物だが今回は違う。
「何を恥じることがあろうか_其方は誠に美しい_」
仮面を外した途端、劇を見ていた複数名の新入生含める生徒達は息をする事も忘れ、瀬名の顔に見惚れていた。あまりに美しくもあり儚いその端麗な容姿に。
「貴方に出会えて_私は_幸せでございます_」
瀬名、姫の台詞により観客の全てが彼の、彼女の魅惑に嵌り涙を一同は流す。中には腰を抜かす生徒もいるほどにその劇には熱が入っていた。
「以上で、演劇部の部活紹介を終わります!」
「「「ありがとうございました!!」」
立ち尽くす生徒達の反応を見て先輩方は嬉しそうな表情を浮かべ瀬名を無理矢理抱きしめる。
「せ、瀬名君ってぶ、部活に入ってたの.....吹奏楽止めて、こっちに」
「え、演劇部いいなぁ。私もちょっと興味あったしやってみようかなぁ?」
「か、かっけぇ。オレもあの先輩達みたいに舞台に上がって劇が出来るかなぁ。」
各生徒は瀬名の名を大々的には出さず比喩した言い訳で演劇部の入部届けを出して行った。
「あの先輩、ネッ卜とかテレビで見るイケメンより、バリ、イケメン!」
今時の女子高校生らしく髪をやや茶髪に変えセミロングな髪型を靡かせる女性も入部届けを手に記入して行く。その隣では大人しそうな目元が前髪で隠された文学少女が入部届けに記入していた。
「さて、あれから一週間、いよいよ今日が新入部員達が来る日だ。」
「あぁ、廃部はこれで間逃れたな!それに幸運な事にニ年生からも何人か入部希望者がいたようでよかったな瀬名!」
「........はい。」
瀬名はどうも落ち着かずにいた。クラス内では話しかけられても無視やそっけなく返答を返していたのだが部活内では別だ。劇と言う物はコミニュケーションが大事だ。相手との協力があり初めて成り立つ競技だ。
「「「失礼しまーす!」」」
「お、来なさったぞ。」
先輩の一人が嬉しそうに呟く。人数的には既に30を超える新入部員を確保出来、顧問の先生は驚いていた。
「よ〜し、取り敢えず別れよっか、学年別に!」
新入部員のほとんどが女子で中には先輩方と同じく三年生達もいた。
「良し、別れたな!オレ達はまずこの二日間お前らの演技力を見る。これから渡す紙に台詞が書いてあるから気持ちを込めて演じてくれ!」
そして次の日、判決を終えあまりにも酷かった二人の生徒の面倒を瀬名は見る事になった。名前は確か冬美雪と春風奏だ。
「オレがお前達の担当の二年、瀬名ジョンだ。好きに呼んでくれて構わないが、'さん'や'くん'は必ず付けろ。」
「はい。」
小さい声で返事を返す春風。目元は前髪で隠されていてよく見えない。とても整った顔をしておりこの子は舞台で化けるだろうと確信した。
「はーい!はいはい!」
こちらは今時の女子高校生らしく髪をやや茶髪に変えセミロングな髪型を靡かせる女性だ。顔はよくて中の上?くらいか。
「あ、ジョン君って彼女さんいるんですか!」
「...いない。」
「えー、じゃあ今フリーって事ですか!やったー!」
冬美は両腕を上げ万歳のポーズを取る。その横で文学少女も小さくガッツポーズを取った。
「じゃあ私、立候補しちゃおうかな?かな?なんちゃって?」
瀬名は内心、失望しつつも部活動と割り切り彼女の答えに返答する。
「バカを言ってないで練習をはじめるぞおまえら。」
二人を発声練習させるため外へ連れ出そうとした時、春風がボソリと声を出した。
「よかった、」
「何か言ったか?」
「いえ、」
それから半年、彼女らを普通の人並みの演技力を身に付けさせるまでには成長させる事が出来た。だが春風が突如、部活を退部したのだ。
「瀬名、春風ちゃん見に行かなくていいのか?」
先輩は瀬名の肩を叩き言う。
「何でですか?」
「瀬名、お前.....噂を知らないのか?」
先輩は春風が冬美を中心としたイジメが起きている噂を耳にしたと説明してくれた。そして瀬名は独自にどのような事が行われているのかを一年生の教室に聞きに階段を下りていた所前から大量の缶を抱えた女子生徒とぶつかる。
「いたた、ごめんなさい。」
「ああ、オレは大丈夫だ。」
その声は春風の物だった。
「瀬名...先輩?」
彼女の瞳からは涙が溢れた。瀬名は拳を握り締めジュースの大半を拾い上げる。
「どこまで運べばいい?」
「せっ....いえ、私が運ぶの大丈夫です....」
震える身体で春風は何かを言うの止めた。そんな姿に瀬名は怒りを感じ春風のクラスである一年生の教室まで黙って歩く。春風が何を話しかけようが無視をして先へと進んだ。そしてその教室のドアを開けると冬美が自分の姿を見つけて嬉しそうな表情をとった。
「あ〜瀬名先輩!私に会いに来てくれたんですかぁ~♥」
甘ったるい媚を売る話し方で歓迎する冬美に更に怒りが沸く。そして瀬名は彼女の机にジュースを置き彼女の眼を捉えた。
「もう先輩どうしんですかぁ濡れちゃいますよぉそんなに見られたら♥(/ω\)イヤン」
いらつきを通り越し呆れるがそれを顔に出さず彼女へと近づく。そしてネクタイを掴み冬美に一言告げた。
「オレの視界に二度と入るな、冬美。」
その言葉を聞いた冬美は何が何だか分からずオロオロと周りを見渡すが誰も助けには入らなかった。そしてそれを言い終えた瀬名は廊下へと出て春風を壁まで追いやり彼女へとはっきりと言う。
「逃げるな、自信を持て奏。お前は輝ける。」
その言葉を最後に瀬名はその場を立ち去り三年の教室へと向かった。
「おう、どうした瀬名!」
部長でもあり尊敬する人物でもある先輩が廊下で友達とお話をされている所を発見し近づくと先輩は自分に気づきあちらから声を掛けて下さった。
「.....先輩、これまでありがとうございました!」
深いお辞儀をすると先輩は目を見開き瀬名をタップする。
「おいおい、どした、どした、いきなりぃ?」
お、カツアゲか?と先輩の友人方はからかうが瀬名はその声を無視し先輩だけを見ていた。
「先輩.......おれ、演劇部辞めます。」
先輩は事態を察っし、お前が決めた事ならば止めないと言ってくれ顧問にも話しを通しておくとも言ってくれた。
「それと......春風を、戻していただけませんか?」
瀬名は最後に先輩に頼むと笑顔で首を縦に振ってくれた。その後、瀬名は後輩である春風奏の成長を遠目で応援していたのだが彼女が予想を越える成長を成し遂げ、ファンクラブなるものも創られていると噂で聞いた、※瀬名のファンクラブは春風のファンクラブの比ではないのだが本人はその存在に気づいていない。ただ、春風奏は最近、自分のストーカーまがいの事ばかりしてくる事に頭を悩ましていた。
このような過去を思い出しながらも卒業証書を受け取り無事、高校を卒業する事が出来た。そして上靴を取りに下駄箱へと行くと手紙のような物が置かれていた。
「何だこれ?.....校舎裏にて待つ?」
(嫉妬してる男子生徒の復讐か?それとも.....)
手紙を下駄箱の横に置いてあるゴミ箱へ放り投げ、校舎裏へと足をのばすことにする。校舎裏にたどり着いたがそこには人の姿はなく無駄足だった事にため息を吐く瀬名。
(よし、帰ろう!此処にいても時間の無駄そうだし、帰って撮り溜めたアニメの消化に入るか!)
校舎裏から移動しようと足を踏み出す瀬名だったが背後から声がかけられる。
「瀬名先輩!!」
声の方へと体を向けるとそこには春風奏がいた。
「っ、なんだ?」
以外過ぎる人物に思わず噛んでしまい言い直す瀬名。
「えっ?あ、あの、えーとですね。」
慌てふためく後輩の姿を見て苦笑しそうになるが抑える。
「まさか、来てくれるとは思わなくって....」
確かにこの手紙の送り主が後輩であると知っていれば此処に来なかっただろう。予想では後輩のファン共に相見えて誤解を解く予定だったのだ。一部の行き過ぎたファンは自身が大学に行ってからでも嫌がらせをする勢いだったので先に釘を打ちたかったのだが。
(まさか、後輩本人とは。)
「.....早く要件を言え。」
「あっ、はい。」
目を閉じ自身の両手を握る後輩は何かを決意したように再度目を開け此方の瞳を捉える。
「先輩!わた、私は、前から、あなたのことがす、す「すまない。」
彼女が言いきる前に告白を断り彼女の横を抜け校門へと目指そうとする。
「待って!!!!!」
背後からの大声に驚き体が一瞬跳ね上がる。体は前を向いたまま顔だけを横に向け後ろを確認すると後輩が膝を着き大粒の涙を流しながら自身の気持ちをぶつけて来た。
「何で、何でですか先輩!私は努力しました!この一年で学園一の美少女と呼ばれるまでに!どうして先輩はいつも私に冷たくするんですか!!私以上に先輩に釣り合う女はいませんよ!!私ならどんな事でもしてあげれる!もし先輩が此処で脱げとおっしゃるなら私は喜んで脱ぎます。だから、お願いです、私を、ウチを置いてかないでよぉ先輩.....」
泣き叫ぶ彼女を尻目に足を動かす。
「お前は変われた。」
後輩はその言葉を聞き下を俯向く。その姿を横目で確認し歩く速度を上げる。この場から速やかに離れたいと言う衝動が強いからだ。
(役目は終えたんだ......)
校門を出てバス停へと向かう瀬名。
「あぁ〜多分母さん先のバスに乗っちゃったなぁ。」
あぁ早く帰ってア二メの続きを見たい。それに母さんとしっかり話しをしなければ行けない。これからの関係について。勿論大学では一人暮らしは鉄板だから何としても許可を貰わなければ。と考えていると車道からバスの姿が現れる。あと数秒で着くだろうと瀬名は座って待つことにした。
「待って下さいぃ!!」
「春風.....」
学校からの坂を全速力で春風がこちらに走って来る。
「先ぱっ!?」
すると春風は足を挫き車道へと身体を飛ばした。瀬名は彼女が足を挫いたと同時に足を走らせる。
「くっ、おらああああああっ!!!」
幸いな事に彼女から自分の位置はそう遠くは無く瀬名は身体を跳躍させ春風の身体を歩道へと投げ飛ばした。
(嘘..だろ..)
跳躍した身体は車道へと落ち目の前にはバスが迫っていた。走馬灯が駆け巡る。これまでのロクでもない記憶がスローモーションに。バスの運転手はブレーキをかけるがもう遅い。
そして、意識が途切れた_
「....ん.....此処は....?」
白いカーテンに白いべッド、そしてテレビからはニュ―スが流れていた。
“お昼のニュ―スです。男性の下着100点を盗んでいた女子大生が逮捕_取り締りに対し容疑者は一度でいいので嗅いでみたかったと事件の容疑を認め”「ピッ」
テレビの音は消え画面はまっ黒となった。誰かがテレビを消したのだろう。それよりも内容が少し可笑しいのではないのかと感じたが聞き間違いだろうか。
「あ、起きたかい?気分はどうかな?」
医師か看護師っぽい服を来た男性が瀬名の扉の横に立っていた。
「....あの、此処って何処ですか?」
「此処は病院だよ、君も大変だね?そんなに可愛いかったら女性達の目線に疲れるでしょ。」
この人分かってるなと感じつつ台詞に疑問を持つ。
(可愛い?...けっこう筋肉ついてるからどちらかと言えばかっこいい....は?)
瀬名は自分の身体を確かめて見ると腕は細くなっていた。
(これは....可笑しい。)
「あの、手鏡とかってありますか?」
男性はポケッ卜から手鏡を取り出し瀬名へと渡した。
「男の子だもんね、やっぱり気になっちゃうよねぇ?寝癖とか。」
手鏡で自分の姿を確認すると姿は昔の自分へと戻っていた。高校卒業時の歳が18だったから、今の姿は大体、14〜15の姿に戻っていた。
「あの、オレっていつ退院できますか?」
「唯の貧血だったから夕方にはお母さんが向かいに来る筈ですよ。お母さん、此処に貴方を運んだ時はもうそれは鬼の形相で此方まで気合を注がれた気分になりましたよ、ははは。」
瀬名は直間的に感じていた。この世界はヤバイと。
「あの.....この病院に一般の人が使えるパソコンとかってありませんか?」
すると男性はこの個室に置いてある戸棚からノートパソコンを取り出しコンセン卜に繋げ瀬名の横になるべッドまで運んでくれた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、此方こそお話が出来て楽しかったよ。もし、困り事があればナースコールをすればいいから。今日はゆっくりと身体を休めばいい。」
そう言い残すと男性は部屋を後にした。
「この世界の常識はさっきのニュースを聞く限りじゃマジでオレにとっちゃあ洒落にならない世界、頼むから外れていてくれよぉ。」
_パソコンで検索を掛けてから五分後
「完全に積んだ。異世界物って普通さ、主人公にとってメリッ卜のある場所に連れて行って貰える筈だよねぇ。可笑しい、可笑しい、可笑しいぃ!!」
瀬名は頭をかきむしり叫ぶ。
「此処、貞操観念逆転世界じゃん」
Chaos:Demerit ~ANIMEの世界からようこそ!~、そしてChaos demerit ~不屈の英雄へ~の方にも力を入れております!!是非とも其方も読んで頂けると嬉しい限りです!