4-329街道封鎖と緊急クエストとか
『アイギス』が『湖の街』に滞在して1カ月が経過した頃
北の街から『湖の街』に通じる街道に『人食い熊』が出現した
春先になり冒険者や商隊を襲いはじめたのが10日前の事・・・
それから街道を通る冒険者が襲われ・・・商隊の荷馬車が襲われ・・・
数日前に冒険者3人組が襲われ・・・他の冒険者達が森で襲われ損傷した遺体を発見し
『湖の街』から『北の街』への街道封鎖とギルドによる緊急クエストの発令だった
人を襲い人の味を覚えた・・・黒熊は『湖の街』の冒険者から『人食い熊』と恐れられた
『湖の街』での2つのギルドによる緊急クエストだったが
薬草採取ばかりの『アイギス』や『森の討伐者』には声がかからず
冒険者ギルドの気性の荒い討伐クエストを好む冒険者達が『人食い熊』討伐に向かうのだった
リウ達は街道封鎖と言う事で『湖の街』でポーション作成を始めていた
『森の討伐者』の6人も薬草採取に向かわずに『アイギス』の廃屋敷でリウ達と修練を行っていた
グラダやシーダ達4人は地下の修練場で身体を動かし
ウイズやオンの2人はクラシス達からポーション作成を教わっていた
リウは敷地内で作っている野菜の管理をしており『白銀龍』や『クロ』と一緒に
畑の土作りから野菜の種まきに『森魔法』を唱え通常の倍の速度で一気に収穫出来るまで育てていた
「それにしても『人食い熊』で街道封鎖か・・・なんか怖いな」
『普通の黒熊じゃないの?』
『人を襲い慣れた黒熊なら別の生物と考えた方が良いのかな?』
「『アイギス』向きのクエストじゃないのは確かだな・・・」
『人を襲う黒熊は美味しそうじゃない・・・』
『それより冒険者の集団が街道を移動して何か怖い』
「『人食い熊』討伐も数日後には解決するだろうし」
『そうなの?』
『強そうな冒険者はいないと思ったけど?』
「優秀な冒険者が何人いるかは分からないけど、集団で対応すれば黒熊の1頭位なら倒せるでしょ」
リウはそう言いながら野菜の収穫をするのだった
『白銀龍』と『クロ』は採れたてのトマトを頬張りながらリウの後姿を眺めていた
畑での野菜作りはリウを中心にメンバーが交代で行い
今日はリウと『白銀龍』と『クロ』が畑担当で朝からトマトや葉野菜の収穫をしていた
トレーラーハウスの作業部屋ではクラシスとリズがウイズとオンにポーション作成を教えていた
ウイズとオンは薬草採取を専門として活動している冒険者として薬草の扱いには慣れていた
収穫時も各々のマジックバックに薬草を保管しており
この場でのポーション作成でも自ら採取した薬草でポーション作成をしていた
本来なら薬草を乾燥して使用した方が良いのだが『森の討伐者』には活動拠点が無く
乾燥作業をする場所が無かったのでポーション作成は乾燥しして無い薬草を使用していた
「本当なら乾燥した薬草の方がポーション作成も少しは調合しやすいんだけどね」
クラシスはポーション作成をしながら調合手順をウイズとオンに教えていた
ウイズとオンは調合手順を見ながら自らもポーション作成をしていた
リズは教えながら調合手順を簡潔にまとめた資料を書き記しウイズとオンに渡していた
「ポーション作成は資料に書いておいたけど・・・わかる?」
完成したばかりのポーションを見つめているウイズとオンに話しかける
ポーションは『鑑定』スキルで調べても『未完成ポーション』としか分からなかった
それでもウイズとオンは嬉しそうにポーションを眺めている
「最初のポーションとしては成功と言っていいのかな?」
「性能うんぬんより未完成でもポーションが出来た~」
「ポーションの回復量がどれほどなのか分からないけど・・・」
「何にしてもポーション作成も日々の修練で成功率が向上するからね」
「ポーション作成はこの部屋を使用して大丈夫だよ」
「「ありがとうございます」」
「それに薬草を乾燥するのに部屋の拡張か、新たの部屋の増設を考えているからさ」
「部屋の拡張に増設ですか・・・廃屋敷を使用するのかな?」
「廃屋敷を掃除しても修復不可能なので土魔法で作業小屋を作成するかな・・・」
「雨風が凌げれば仕事は出来るし・・・」
「そういえば『森の討伐者』の6人はどこに泊っているの?」
「宿屋ですが?」
「私たちみたいに貸家とかは?」
「薬草採取で冬期間以外は森の中での暮らしが長くて・・・貸家では勿体無い気がして」
ウイズとオンは「えへへへ」と宿屋生活より森での野営生活が長い事を告白する
「森での生活が長いなら『アイギス』と同じだね」
「私達も宿屋にはあまり泊らないかな・・・ゴーレム達もいるし馬車もあるし」
「それ以上に『アイギス』の食事が美味しすぎます、宿屋や食堂よりも美味しいのは反則ですよ」
「アライズさん達ですか『ひよこ亭』の食事が美味しくて・・・ダメです」
「一応は私達もアライズ達から料理を教えてもらっているから『アイギス』のメンバーは全員料理上手よ♪」
「それはリウさんもですか?」
「もちろん♪何気にリウは料理も得意だけどデザートも得意だからね♪」
「凄いですねリウさんは・・・」
「私達よりシッカリしている・・・」
「まぁ、リウも私達もいい歳だしね・・・」
「「そうなの??」」
「あれ、言って無かったけ?私達がリウのお嫁さんだったっていうのは知ってるよね?」
リズのその一言にウイズとオンがコクリと頷き
「それに私達には成人した子供がいます、しかも、子供達の中には結婚して実家に戻って来た子もいます」
「実家に帰る頃には孫が生まれていたり・・・嬉しいような悲しい様な?」
「「孫???まじですか?」」
クラシスとリズはにっこりと微笑み
「見た目で歳を判断してはダメですよ」
「ウイズさんとオンさんも魔力量が増えれば見た目以上の若々しい見た目を確保できますよ」
この世界ではギルドカードにも年齢が表示されていないし
自分の歳を証明する事は無理か・・・
見た目とギルドランクでしか知りえない情報で強さを知るしかないと
その頃、冒険者の集団と『人食い熊』との戦いは始まろうとしていた
冒険者の集団は『人食い熊』を囲む様に陣形を組み
確実に仕留める方法で戦いをしかけていた
『人食い熊』討伐クエスト発動す。




