3-278冬期間のダンジョン住居⑤とか
次の日、リウはエルフの集落へ向かっていた
背中のリュックには『白銀龍』と『クロ』が丸くなって寝ていた
『アイギス』の本拠地から暫らくはリュックから頭だけ出していたんだが・・・
今回は護衛の『娘さん』達とは別行動でリウだけ雪降る中移動していた
まずはエルフの長老の『アスキーさん』に『鉄鉱石』の事と『鍛冶師』の紹介をお願いするつもりだった
エルフの集落も『アイギス』の本拠地同様に雪まみれで、エルフの民も森へ狩猟している者以外は、家の中で内職をしている状態だった
リウがエルフの集落に近づくと防壁の上から数名のエルフが手を振っているのを目視で確認できた
リウは防壁の上で手を振っているエルフに手を振り返し、身振り手振りに「集落に入ってもいい?」と話しかけた
暫くすると集落を囲む茨の防壁の一部が解除され、リウはエルフの集落へ足を踏み入れた
「おはようさん~、こっちも雪が深いね」
「久しぶりだね、おはようリウさん」
「おはようさん」
「今日は1人なんだね」
「『白銀龍』様はいないの?」
数人のエルフがリウを出迎えてくれた、その中にエルフの長老の『アスキーさん』がいたんだが・・・
防壁の上で警戒をしていたエルフ達は、黒熊の毛皮のマントを羽織り、弓と矢筒を背負っていた
『アスキーさん』も黒熊の毛皮のマント羽織り、リウを出迎えている
「今日はリウさん1人で来たのかい?」
「背中のリュックに『白銀龍』と『クロ』が眠っているけどね、ここは寒いからリュックから出たくないみたいだね・・・」
「それで今回は何用で?」
「そだ、ダンジョン地下3Fからの採掘物を渡しにね」
リウはアイテムボックスから『岩塩』と『鉄鉱石』を取り出し『アスキーさん』に手渡す
周りのエルフもリウの採り出した鉱物を『鑑定』スキルで鑑定し驚いていた・・・
『岩塩』は天然塩な上に味の方も極上と鑑定されていた
『鉄鉱石』の方は採掘したばかりの鉱物であったので、エルフ達はあまり興味を示さなかったが
『アスキーさん』だけは『鉄鉱石』のカットした切り口を見ながら、何をどうしたらこれ程の未陸地になるのかと考え始めていた
「『岩塩』は多めに持ってきたから、エルフの集落のみんなで分けて食してみてね」
「「「「「ありがとう」」」」
「天然塩なんて初めてかも・・・」
「焼串も焼鳥も格別の味になりますよ♪」
「「「「おぉ」」」」
「早速切り分けましょうよ・・・」
「まぁ待て待て、後で均等に分けるから暫し待て、それでリウさんは採掘物を渡し来ただけですか?」
「実は『アスキーさん』に『鍛冶師』の知り合いがいないか聞きに来たんですが・・・」
「『鍛冶師』ですか・・・、この集落にはいないですね」
「やはり麓の街で『鍛冶師』を探すしかないか・・・」
「『鍛冶師』は『鉄鉱石』の有効活用の為ですか?」
「そうです、『アイギス』の鉱物で色々な物を作ってもらいたくてね」
「武器とか鎧とかですか?」
「いあ、武器とかは要らないです、欲しいのは『包丁』とかの調理器具を作ってもらいたいです」
「・・・『包丁』ですか、武器屋の『鍛冶師』では作ってくれない可能性がありますが」
「『包丁』は自作するしかないか・・・」
「『鍛冶師』に弟子入りをするんですか?」
「そうですね、見よう見まねで覚えられるとは思いませんがね・・・」
「それなら麓の街の『鍛冶師』の仕事を見せてもらえれば何かわかるかもしれませんし」
「まずは麓の街に行ってから考えればいいか・・・『ハルクさん』の魔道具屋へ行くつもりだし」
「それなら『鍛冶師』を紹介してもらえるかもしれないな・・・」
まずは麓の街に行ってからか・・・
『ハルクさん』から『鍛冶師』の事を聞けばいいか・・・
それでもダメなら仕事場の見学か、『鍛冶職』の資料集めをして自己流で覚えるのも手ではあるな
自分だけの鍛冶場を持つのも・・・面白い気がする
「よし、麓の街で聞いてくるか」
「もしリウさんが『鍛冶職』を修得したら何か作って下さいね」
「『鍛冶』を修得したら何か贈りますね」
「はい、まってます」
リウは数個の鉱物を追加で『アスキーさん』に手渡し、麓の街へ向け駆けだす
背中のリュックの中で『白銀龍』と『クロ』は林檎を頬張り、暫くすると寝直すのだった
麓の街もエルフの集落同様に雪が降り積もっている
街道だけは馬車の踏みしめられた車輪の跡がキッチリ残っていた
麓の街は赤目騒動も無く、黒熊大量発生も無く、通常の冬期間のようだった・・・
リウは商業者ギルドに、黒犬と黒熊を数匹納品してから魔道具屋に向け歩き出す
街中には休業中の冒険者が昼間から酒場で酒を飲み、露店街で買い物をしていた
リウも露店で大量の書き串や焼鳥を購入したり、果実酒や調味料を購入していく
また、道具屋で『鍛冶職』の手引書らしき書物も数点購入していた
これで1人で鍛冶場を作り、コツコツ鍛冶を修練出来ると思っていた
魔道具屋は冬期間中という事もあり、客足は無かったもののポーションの買い取りの張り紙が貼られており、冬期間中の冒険者がポーションを納品しているのを見てとれた
「こんにちは~、『ハルクさん』いますか?」
魔道具屋に入りリウが声をかけるが、店の中には人がおらずリウが声をかけて・・・
暫くすると『ハルクさん』と『シルクさん』が店内に現れた
「こんにちは、久しぶりだね」
「こんにちは、元気してた?」
「はい、久しぶりです、元気でしたよ」
「それで今日はどうしたんですか?」
「まずはこれを・・・」
リウはアイテムボックスから数点の鉱物を『ゴロゴロン』とテーブルに置く
『ハルクさん』と『シルクさん』は鉱物を手に取り、各々で鑑定をし鉱物を調べていく
「これは『岩塩』ですか・・・」
「こっちは『鉄鉱石』・・・」
「ダンジョン住居で採掘した鉱物ですが、『岩塩』以外の使い道がわからなくて・・・」
「確かに『鉄鉱石』が多いですが、多少ではありますが『金』や『銀』もあるんですね」
「それは『鉄鉱石』を鍛えるという事ですか?」
「そだ、『ハルクさん』は『鍛冶師』を紹介してもらおうと思って・・・」
「『鍛冶師』ですか・・・武器屋と防具屋に『鍛冶師』の知り合いがいますが紹介しましょうか?」
「それでリウさんは『鉄鉱石』で何を作ってもらうんですか?」
「あー、そのー、『包丁』ですかね」
「・・・『包丁』ですか」
「・・・それは武器屋や防具屋の管轄外ですね」
「リウさんは相変わらず予想の斜め上の事を言いますね・・・」
「『鍛冶師』に『包丁』をお願いですか、一度知り合いにお願いしてみましょうか?」
「それとも『鍛冶師』に弟子入りしてみますか?」
「露店で鍛冶道具や資料は購入したんですけど、実際に『鍛冶場』を見た事が無いので、『鍛冶師』を紹介してもらっていいですか?」
「それじゃ、一度『鍛冶場』を訪ねてみます?冬期間なのでそれほど忙しくないと思いますので・・・」
「いいんでしょうか?部外者がいきなり訪ねるのは・・・」
「大丈夫だと思いますよ、同じ商業者ギルドの関係者ですし、ここで販売している『銀の指輪』や杖の細部を作ってもらっていますし」
「それではお願いします、僕は今日は日帰りで来ているので、顔合わせだけでもお願いします」
「それじゃ、今から3人で行きますか」
「そうですね、1日ぐらい休日でも大丈夫でしょ」
「・・・魔道具屋を閉めるんですか?」
「「はい」」
「いあ、声を揃えられても・・・、色々すいません」
「ここで客を待つより、リウさんと一緒に『鍛冶師』を訪ねた方が面白そうだしね」
「そうですね、この『鉄鉱石』がどのように加工されるか気になりますし」
「この『岩塩』は『シルクさん』のお土産ですので、焼串や焼鳥の味付けにどうぞ」
「「いいんですか!天然塩!!」」
「料理の味が数段向上します、シンプルな味わいなのに何本でも焼串を食べれますよ」
「それは楽しみだ・・・最高の酒の肴になりそうです」
「料理に使えるんですね・・・」
「ダンジョン住居で採掘出来るので、無くなったらまた届けますね」
「「ありがとうございます」」
『ハルクさん夫婦』は大事そうに『岩塩』を奥の部屋に運んでいく
2人ともコートを着ながら戻って来た
「それじゃ、知り合いの『鍛冶師』の所へ来ましょうか~」
「はい、お願いします」
『鍛冶師』の元へ行きます。
弟子入りか見学かは、次回、決定予定!
『アイギス』の『岩塩』はエルフの知り合いに配布中、趣味で採掘した物なのでリウは売る気ゼロです。




