3-272通常営業の『アイギス』②とか
夏真っ盛り『アイギス』の果樹園では桃の収穫が始まっていた
去年苗木を植え付けて初の収穫になるのだが、『木魔法』と堆肥で桃木に負担をかけずに育てていた
果樹園の収穫順でいえば、桃→梨→林檎の順で収穫予定だった
夏頃に桃と梨を収穫し、林檎は秋から冬に収穫予定だったりする
子供達も生後半年で少しだけ大きく育ってきた
果樹園での子供の世話は、ココとリズが土魔法で小さな家を作り、子供たちを寝かしつけた
クラシス達は桃の収穫をしている、収穫後はその場で試食したり、エルフの長老や麓の街の『ハルクさん夫婦』へ御裾分けしていた
桃を一口頬張ったクラシスは「うま!」と声を上げるほどだった・・・
「それにしても1年目で桃が収穫できたのは嬉しい限りだね」
「魔法の効果なのか桃の甘味がすごい・・・」
「このまま食べた方が桃の味を満喫できる」
「そうだね、ケーキにするには勿体無い桃だわ」
クラシスとアリサが桃を丁寧にカットし、食べやすくしてみんなに振舞っている
龍の巫女のアンリーとシンリーも桃の試食をし、2人とも「おいし~」とか「うますぎ」と呟き、次々と口に運んでいる
護衛の『娘さん』達も桃を食べながら、「ほんとうにおいしい~」「これは龍のご加護?」とか言っている・・・、桃に龍の加護っているのも・・・しかも加護食べちゃってるし・・・
子供の世話をしているココやリズにも食べさせると、「甘!」とか「美味美味!!」と嬉しそうに頬張っている
『白銀龍』と『クロ』も桃に齧り付いている、2人とも桃が美味しいのか一心不乱に食べていた
『前に食べた桃より美味い』
『1個食べただけで満足する味~』
『白銀龍』と『クロ』は桃1つ食べ満足したのか、子供たちと一緒に昼寝を始めた
ココとリズは、子供にはまだ桃は無理・・よね?と話している
確かに生後半年では早いのかもしれないし、桃の味はもう少し後のお楽しみかな・・・
「子供達の桃の試食は来年からかな?」
「そうだね、もう少し大きくなったらかな・・・」
ココとリズは子供たちを撫でながらそんな相談をしていた
来年には果樹園の桃の木も大きくなるだろうし、収穫量も増えればみんなに御裾分け出来る量も増えるしね
桃の収穫が終わり、地下の貯蔵庫に桃を保管し、桃は食後のデザート予定だったりする
その後、梨の収穫をするのだった
夏の終わりの梨の集荷後は、リウと龍の巫女達との『小鬼族』と『犬耳族』の集落での買い物旅行に行く事になる
『アイギス』の水田では、稲が大きく育ち、沢山の穂をつけた稲が、風に揺れて綺麗な光景になっていた
稲の花が満開になる頃に水田を排水し、稲刈りの最終準備を始める
稲刈りは留守のリウに変わり、リン達5人がメインで刈りいれ作業を担当してもらう
留守中に稲刈りと天日掛けをお願いし、『アイギス』の新米は『掛け干し米』にするつもりだった
天日掛け用の棚は水田の隣に作り、刈り取り後に稲を掛けるようにした
今回の買い物旅行では、リウと『白銀龍』と『クロ』に加え、龍の巫女のアンリーとシンリーと『娘さん』2人が巫女の護衛で参加する事が決まった
アンリーとシンリーは初旅行なので、着替えや装備の品は『娘さん』がエルフの集落や、麓の街で揃えたり、少人数なので小型の馬車を新調したり、寝る時の寝袋を新しくしたりした
旅行中の食事に関しては、リン達が料理の修練で調理した料理をマジックバックに大量に保管した
調理する必要がないので、馬車に調理荷台を作らず、座るスペースと寝るスペースのみの、簡易箱馬車を購入していた
リウは「シンプルな馬車」と称したが、クラシスには「質素な馬車?」と言われてしまった
リズやノノにも新しい馬車の感想が「店売りの箱馬車?」とか「調理荷台は?」とか言われてしまった
「『アイギス』の箱馬車は増改装しすぎて、箱馬車というより箱箱馬車になってるからな・・・、普通の箱馬車では満足できないか」
「箱馬車では寝ないの?」
「・・・箱馬車が小さくて寝れないんじゃ?」
どうやら箱馬車=寝る場所と思っている感じがするな
ノノやココは普通の箱馬車を小さいと表現しますか・・・、これが標準の大きさなんだけどな
ジャンヌやミルキーは、箱馬車を触りながら
「作りはしっかりしてるし、馬2頭の負担減でいいと思います」
「箱馬車の大きさで『浮遊』の魔力軽減に繋がるから良いと思う」
「箱馬車内にも座るイスもあるし、イスを倒せば仮眠も可能だね」
箱馬車のイスを折り畳んで簡易ベットにしたジャンヌが箱馬車を褒めてくれた
御者席に3人座り、箱馬車内に4人座る感じだから、リウにしたらこの箱馬車は大きいと思っていた
やはり『アイギス』の箱馬車での、快適な箱馬車旅行に慣れ過ぎちゃったのかな
「今回の旅行は買い物優先で、薬草採取と討伐は極力やらない・・・と?」
「そだね、旅行を楽しく感じかな、草原や森を箱馬車で移動しつつ、各集落で買い物をする」
「各集落で黒熊などを納品しないと、満足な買い物ができない可能性があるからね」
「了解、アイテムボックスの整理ついでに納品するよ」
「目的は稲の『種籾』と果実の苗木と野菜の種の購入だっけ?」
「基本的にはそうだね、それ以外には果実酒とはちみつが欲しいかな?」
「調味料の購入をお願いします!」
ヘンリーが買い物旅行に、「調味料欲しい!」というリクエストが来た
そういえば各集落では取り扱っている調味料の違いがあるので、色々購入するのもいいか~
「それじゃ、調味料の購入は任せて」
「色々な味付けを試したいので・・・」
ヘンリーの呟きに、リンやアイズがコクコクと頷いている
ここでの生活であまり自分を出さないリン達の言葉なのもあるが、欲しい物を欲しいと言えた事に、クラシス達は嬉しそうにニコニコしている
ライズやジルは少し照れながら「ほっ」としている
「『娘さん』達は何か欲しい物はある?」
『娘さん』達は首を傾げながら「欲しい物?」「なにかある?」と集まって相談を始めるのだが・・・
「あの林檎を箱買いでお願いしても・・・?」
「去年買ったみたいな感じで林檎を購入すればいいかな?」
「はい、食事中や食後に間食に沢山食べたいので・・・」
「そういえば、『焼き林檎』にして晩酌時に食べていた気が・・・」
「はい、晩酌時に酒は飲まないので、『白銀龍』様と『クロ』様と一緒に食べられたら嬉しいです」
「了解、林檎の箱買いは考えていたから、去年よりは多めに買おう」
「子供たちにすりおろしてもいいしね♪」
「それはうまそう・・・」
「すりおろし林檎は子供たちだけよ♪」
数日後にリウ達は『小鬼族』と『犬耳族』の集落へ向け箱馬車を走らせる
御者のリウに隣には『娘さん』2人が座り、箱馬車内には『浮遊』を唱えているアンリーとシンリーが『白銀龍』と『クロ』を膝にのせ頑張っている
アンリーとシンリーは『浮遊』を修得後は、連続使用で1日箱馬車を浮かせる様になるまで頑張り、旅行中の『浮遊』担当になった
『白銀龍』と『クロ』は、2人の魔力枯渇防止用に側に控えていた
そして、こっそり2人のサポートをしているのだが、その事はリウ以外気がつく事は無かった
御者のリウと『娘さん』は周囲の警戒をしながら移動していたが、街道側には黒犬や黒熊の反応は無く、戦闘をすることなく最初の集落に到着するのだった
『小鬼族』の集落では、入口でギルドカードを提示し、まずは商業者ギルドで黒熊と大猪を納品し、この集落での買い物資金を手に入れた
「それじゃ、露店で調味料と果実酒でも買おうか~」
「ノノさんとココさんから露店で焼串と焼鳥の買い食いは必須と言われました!」
「私も!!」
どうやらノノとココはアンリーとシンリーに、旅の醍醐味を露店での焼串や焼鳥と教えたのか・・・
『娘さん』の2人もコクコクと頷いている、『白銀龍』と『クロ』も同じ意見なのかしっぽをぶんぶん振っている
「それじゃ、焼串と焼鳥をいっぱい買おうか」
「「はい」」
「私達は馬車で留守番してますね」
「『白銀龍』様と『クロ』様も留守番ですか?」
「どうする、ここで待ってるか?」
『疲れたから待ってる』
『林檎食べていい?』
リウはアイテムボックスから林檎を数個取り出し、『娘さん』達と『白銀龍』と『クロ』に渡した
「戻ってくるまで林檎でも頬ばってて」
『待ってる!』
「いってらっしゃい」
「留守はお任せください」
『白銀龍』と『クロ』は早速林檎を頬張り、『娘さん』達は手を振り見送っていた
リウの隣でアンリーとシンリーは、初めて見る露店の焼き串や焼鳥をリウに聞きながら、沢山の焼き串や焼鳥を購入していく
最後に調味料と果実酒やはちみつ酒を購入し、箱馬車へ戻るのだった
アンリーとシンリーは露店の店主に勧められた焼串を頬張りながら戻るのだった
この日からアンリーとシンリーは、ノノやココの様に露店での焼串や焼鳥にはまる事になる
その後、自分たちで焼串や焼鳥の味付けにこだわる事になる
「それで今日は宿屋に泊るんですか?」
「いあ、今回は宿屋に泊らず、野営で過ごそうと思う」
「野営ですか?外で寝るんですか??」
「そうそう、アンリーとシンリーには土魔法で簡易陣地を作ってもらうからね」
「「任せて下さい!」」
「あの私達も手伝っていいですか?」
「もちろん♪」
アンリーとシンリーの簡易陣地作成に『娘さん』2人が一緒に手伝う事が決まる
エルフ4人でどんな感じの簡易陣地になるか気になるが、少なくとも失敗する事はないだろう
もしもの時は、土壁で囲んだだけも十分だしね・・・
今回の旅行は、リウが前面で仕事する訳では無く、出来れば龍の巫女と『娘さん』達が進んで仕事をしてもらうつもりでいた
それはクラシスやリズ達にも言われたが、一緒に暮らしていても遠慮がちな雰囲気が抜け切れていないので、これを機にリウや『白銀龍』・『クロ』と仲良くなるのも1つの目的にしていた
まったり箱馬車の旅行始まる。
ゆっくり進む箱馬車なのに、『浮遊』で浮きながらの移動なので、馬達の足音が静かに森の中に響いていく。
龍の巫女の買い食い伝説の始まりです。




