3-270冬期間の『アイギス』⑫とか
黒熊大量発生の最終章です。
次の日、防壁の一画が破壊され麓の街中で、黒熊と冒険者との間で戦闘が始まる
防壁上での見張りも前日の吹雪で視覚不良が原因だが、黒熊の一撃でも防壁を破壊出来ないはずだった
冒険者ギルドでも防壁は破壊させないという考えがあり、冒険者を防壁上に待機していた
街中に突然現れた黒熊に麓の街の住民は逃げまどい、冒険者ギルドと商業者ギルドは共同で住民の避難と黒熊の討伐に乗り出すのだった
防壁の破壊された地域が教会という事もあり、静かな祈りの場に黒熊の叫びで、神父は祈りをささげた住民と共の避難をするのだった・・・
教会は土壁に囲まれていたので扉に施錠をし、教会に黒熊が現れた事を知らせに走る事になる
冒険者ギルドと商業者ギルドのギルド員は住民の避難を最優先にし、冒険者を教会の一画を囲む様に展開し、麓の街『街中防衛戦』が始まるのだった
冒険者側は土魔法で教会から黒熊が逃げない様に土壁で囲み、上級冒険者が前面に黒熊の襲撃に備えた
一方その頃、魔道具屋の『ハルクさん夫婦』も商業者ギルドのギルド員の誘導で避難をしていた
麓の街で一番防衛面に優れていたのは、教会やギルド倉庫など数か所避難場所があるのだが・・・
避難の優先順位は、住民が一番で次に怪我人や職人になっており、『ハルクさん夫婦』は職人扱いで避難の対象になっていた
『ハルクさん』は麓の街の周囲の反応を見ていたが、教会の一画に黒熊の反応が20以上感じられた
それを囲む冒険者の反応も30以上あるので人知れず安心していると、突然黒熊が四方八方に動き回る黒熊の雄たけびが麓の街に響きわたる、冒険者達もパーティー単位で黒熊討伐に向かうのだった
『街中防衛戦』から数時間後、黒熊の大半を討伐し、黒熊襲撃に終息したと思った頃に、突然現れた『大型の黒熊』・・・、倒された黒熊を見向きをせずに冒険者に襲いかかる
黒熊の数倍の『大型黒熊』の一撃を受け、冒険者は数人は構えた盾や鎧を破壊されながら吹っ飛んでいく
倒された冒険者は仲間の冒険者が肩を抱き戦場から避難される
この時、『街中防衛戦』の最終局面を迎えた事を冒険者達は感じていたが、『大型黒熊』のあまりの強さに足がすくんでいる冒険者が見られた
上級冒険者も盾を構える者、大剣を構える者、杖を掲げ者が何重にも囲んでいく
『大型黒熊』も目の前の冒険者達が強敵と捉えたのか、それとも敵と捉えていないのか周囲を険しなく観察していた
上級冒険者は『大型黒熊』が注意散漫な事を感じ、左右から大剣と両手剣で斬りかかる
『大型黒熊』は襲いかかる左右の冒険者を、ただ右腕を振る動作だけで対応して見せた
ただそれだけで上級冒険者2人の攻撃を防ぎ、左腕を振り上げただけで・・・上級冒険者は吹っ飛んでいった・・・
『大型黒熊』は、血濡れた腕を見つめて『ガガアアァァァ!!』と吠えた
吹っ飛んだ上級冒険者を戦場から避難させ、戦場を維持していたが同じ上級冒険者が一撃で倒された事に驚き、こちらから攻撃を躊躇っている
『大型黒熊』が鬱陶しそうに冒険者達を薙ぎ倒していく
戦場の後方では怪我人にポーションをかけたり、回復魔法を唱えていく
その中で『大型黒熊』の攻撃を大盾で防ぐ冒険者が現れると、冒険者側からの攻撃が始まる
避難中の『ハルクさん夫婦』は、突然現れた大きな反応に驚き、次の瞬間街中に轟く『大型黒熊』の叫び、それと共に傷つき弱っていく冒険者の反応を感じていた
『街中防衛戦』の数時間前、簡易陣地のリウ達は麓の街の接近する黒熊の集団を捉えていた
この日が黒熊討伐最終日と考えていたリウは、簡易陣地での最後の食事を済ませ、『かまくら住居』の掃除を始めていた
朝錬からの朝食へと続き、掃除をしてから各自装備を整えてから、簡易陣地の土壁の扉を施錠し、麓の街へ急ぎ向かうのだった
リウ達の装備は『蒼マント』を装備し、鉄杖を持ち、『アイギス』仕様に整えていた
リウだけはマントの上にリュックを背負っい、『白銀龍』と『クロ』はリュックの中で丸くなり、『娘さん』達はフードで顔を隠しマントを羽織っていた
リウ達が麓の街に到着し、防壁の上から街中に進入した黒熊の集団を捉えていた
防壁から黒熊まで狙撃可能な場所を探し、防壁を移動するのを確認した冒険者は勿論、住民たちもリウ達がいる事を知る者はいなかった
狙撃位置の確認後、リウ達は『遠見』スキルで黒熊と冒険者の戦いを見ながら、これは大丈夫かなと思っていた頃、『大型黒熊』の登場により冒険者側に負傷者が増えたのを確認し、リウ達は『街中防衛戦』に参加する事になった
「狙撃前にこの杖を使おっか」
リウはアイテムボックスから昔使った『ライフル杖』を『娘さん』達に渡した
「これは昔使った遠距離用の杖です、魔石の組み合わせで遠距離特化!」
「それではリウさんは合図をお願いします」
『娘さん』達は防壁に一列に並び、『ライフル杖』を構える
狙いは『大型黒熊』=『闇熊』に照準を合わせる
「狙いはどこにしますか?」
「頭部と狙い撃ちたいが、『闇熊』の強さがわからないから・・・、目を狙おうか」
「左右どちらを?」
「半々に分かれて左右の目を狙い撃ちして」
「「「「了解」」」
「それじゃ、僕から右手側の『娘さん』は右目を、左手側の『娘さん』は左目をお願いね」
『娘さん』達はコクコクと頷き、照準を合わせていく
リウは『遠見』スキルで『闇熊』と冒険者が戦い始めた事を目視し
「構え、魔法弾集束開始!」
『娘さん』達の『ライフル杖』に魔力が集束し魔法弾を形作られていく・・・
リウは『闇熊』が腕を振りかぶり、冒険者に向かい咆哮している一瞬の隅を見計らい
「全弾撃てぇー!!!」
どどどどどどおぉぉぉぉぉ!!!!
『娘さん』達が放つ魔法弾が防壁から『闇熊』を撃ち抜く
それは防壁が光ったと思った瞬間、『闇熊』の頭部が弾け飛んだ・・・
それは『闇熊』も同じで目の前が光ったと思った瞬間に、『闇熊』は何もわからないままに息絶えた
それは冒険者側も同じで『闇熊』の頭部が壊れたと思った瞬間、『闇熊』は倒れ込んだ・・・
冒険者達が理解したのは『大型黒熊』を倒した?倒れた?事だけだった・・・
冒険者達にはそれだけで十分だった
この戦いが終わった事がすべてだったので、数人の冒険者が『大型黒熊』が完全に息絶えた事を確認すると、数人の冒険者をギルドに走らせるのだった
その後の『街中防衛戦』の完了はギルドを通して麓の街の住民に伝わるのだった
原因不明の黒熊大量発生は、ギルド側の原因不明として発表された
『大型黒熊』が原因とか、黒熊の縄張り争いがあったとか色々な噂がながれたが、正確な事は誰1人知る事は無かった・・・
リウ達は『闇熊』狙撃後に麓の街を離れたのだが、防壁を移動する時に『ハルクさん夫婦』を見つけたので、リウはこっそり手を振っていた
『ハルクさん夫婦』もリウ達を確認し手を振りぺこりと頭を下げたいた
それからエルフの集落に『闇熊』討伐の報告をし、ダンジョン住居へと戻る事になる
数十日ぶりの我が家に帰ると、リウはお嫁さんと子供を抱きしめ、やっと日常に戻った事を感じていた
それから数日はお嫁さん達に今回の黒熊大量発生の報告をしたり、簡易陣地で作った黒熊料理の味見をするのだったが、相変わらずのリウの料理の腕前にリン達は驚きつつ、「負けた・・」と呟いていた
「これで久しぶりに地下の畑で野菜の収穫が出来る」
『地下運動場で昼寝が出来る・・・』
『地下運動場で馬達と散歩・・・』
通常の冬期間の再開にリウや『白銀龍』『クロ』は手を上げながら喜んでいた
冬期間のダンジョン生活終了です。
次回から『アイギス』本拠地での新しい生活の始まりです。
護衛の『娘さん』達は、『アイギス』の狙撃主です。
静かに黙々と獲物を討ち抜くエルフ嬢・・・、リウ達は『娘さん』達の様に完璧な遠距離狙撃はまだ無理です。




