3-264冬期間の『アイギス』⑥とか
ダンジョン住居に『ハルクさん夫婦』が訪ねてから10日後、初雪からの1mの積雪になり『アイギス』の面々は奥の森でひっそりと暮らし始める
もっともダンジョン跡を増改装した、『アイギス』の別宅ともいえるダンジョン住居は、ダンジョン内は寒くも無く暖かくも無いという一定の室温を保っていた
ダンジョンの機能が生きているのか、ダンジョン内部が地熱で室温を保っているのかは、『ハルクさん』やエルフの長老『アスキーさん』でも知らない事だった
室温が一定とはいえ、ダンジョン入口では暖炉を設置し、外気温の侵入を防いでいた
クラシス達お嫁さんと子供たちは、冬期間は子育てに専念してもらっていた
リン達5人はリウとの結婚を気に、アライズ・アリサ・アンナに変わり調理場の担当となり、『アイギス』の一時的な調理番になっていた
それでも味付けや料理修業は、アライズ達3人に時間の合間に『ひよこ亭』の味を教え込んでいた
龍の巫女のアンリーとシンリーの2人は、シルキーとミルキーに変わり馬達の世話をしていた
ダンジョン地下2Fに専用の休憩スペースを作り、馬達の側で過ごす事が多くなっていた
護衛の『娘さん』達は、交代でダンジョン前の『塔』で周辺の警戒をしていた
冬期間の『アイギス』は、魔力の修練から始まり、鉄杖の修練に続き、日々の修練に重点を置いていた
朝の修練時は、『娘さん』達に子供の世話をお願いし、クラシス達は妊娠から出産で体力的に低下した身体を鍛えなおしていた
リウはお嫁さん達に無理な修練を禁止していたが、全員リウと同様の修練を行い、朝錬が終わるころには足腰立たないくらい疲れ切っていた
「あんまり無理しないでね、産後で心身ともに疲れているんだから、少しずつ身体を戻せばいいんだからね」
クラシスを始めシルキーやミルキーまでイスに座りぐったりしていた
体力に自信のあるジャンヌまで疲れきっていて、「はぁはぁはぁ」と息を整えるの精一杯の様だ
「はぁはぁ、わかっているんだけどね・・・」
「はぁはぁはぁ、あまり修練を休むと、冒険者としてダメだと思ってね・・・」
クラシスとリズは、出産後の初めての朝錬という事で、いつも以上に疲れ切っていた
アライズやアリサやアンナは、イスに座りテーブルに突っ伏しているし
やはり最初から無理しすぎな気もする
「子育てと冒険者の両立は、どこかで区切りと付けなければいけないけど、親としては子供に弱い所は見せたくないし、頑張らないと・・・」
「そうそう、子供にパパとママは強いんだぞっと自慢したいしね」
ノノとココは冒険者としてというよりも、1人の親として子供の為に頑張ると宣言してきた
それはクラシスやリズも同じ考えなのか、子供が自慢できる尊敬する親になろうという事だった
「みんな良いママの顔になってるよ」
「ほんとに!」
「えへへへ」
「リウに負けない良いママになる!」
「心構えで既に負けてるよ・・・、みんなすごいよ」
テーブルに突っ伏したシルキーやミルキーもニコニコしながらリウ達の話を聞いている
「それにしても魔力の修練は問題無かったし、冬期間は魔力と魔法の修練を主軸でやっていく?」
「魔法の修練・・・?ダンジョンの増改装でもするの?」
「それもあるけど、クラシス達にはもしもの時は、魔法を用いて守りに専念にしてもらいたい」
「討伐時にも前線で戦わないいと・・・?」
「そうだね、出来れば子供の近くで、子供の一番の盾になってもらいたい」
「それじゃ、遠距離から魔法弾で狙撃の腕を磨けと?」
「それこそ過剰戦力な気が・・・」
「私達10人が一斉に遠距離魔法攻撃をしたら・・・、戦闘もあっさり終わりそうだけど・・・」
「そこは5人で攻撃、5人で防御・・・みたいな?」
「そんな事が起きるとしたら『氾濫』並の災厄時しかないと思うけどね」
「子育てしながらの修練だから、鉄杖の修練を最低限にして、魔力と魔法の修練に専念すつというのは良い考えね」
「まずは、子供を抱きながら、手の中も魔力の塊の維持とか?」
「そうそう、子供と一緒に修練!」
「『ハルクさん』からも子供達全員が魔力量多めという事だったし、早く一緒に魔法を使いたいね」
「それでも魔法を教えるのは、早くても3才と言われたでしょ?」
「それは3才から魔力の修練だっけ?」
「魔法は5才まで禁止ってキツク言われたし・・・」
「魔法の理解が無い者が魔法を使用する危険性を教えたかったんじゃないかな?」
「私達の子供がどれ程の才能があるかは、楽しみではあるけどね」
お嫁さん達は汗も引いてきたのか、魔法で身体を綺麗にし、お風呂場へ歩き出す
「リウも一緒にお風呂に入る?」
クラシスがお風呂を誘ってきたが
「もう少し鉄杖の修練をしてからでいいや、お風呂は朝ご飯後にするよ」
「了解、朝ご飯に遅れちゃダメよ」
「わかってるよ、クラシスも長風呂禁止だからね」
「はーい」
お嫁さん達は仲良くお風呂場へ向かう、家族というよりも姉妹の様な感じだな
リウは鉄杖を構え、一通りの型をしたり、仮想の相手との組み手をしたり、運動場に鉄杖を振る音だけが響く・・・
龍の巫女のアンリーとシンリーは、リウの修練を見ながら「何故あんなに鍛えるのかしら?」と考えていた
エルフには修練の習慣はあるが、冬期間は1年で唯一修練を休める期間と考えられていた
それなのに地下に運動場を作り、修練をするリン達を不思議に思っていた
護衛の『娘さん』達は逆に、1年通して修練出来ると喜んでいたが・・・
リウは鉄杖を振りながらアンリーとシンリーの視線を感じたので、修練を切り上げて2人に話しかけてみた
「じーっとみられると照れるよ、鉄杖を振ってるのが面白かった?」
「いえそうじゃなくて、何故そんなに修練をするのかと思いまして・・・」
「リウさん達は強いのに更に力を求めるんですか?」
「僕らは強く無いですよ、強くなりたいですが・・・」
「少なくとも私達よりは強いと思いますよ、それなのに・・・」
「僕は家族を守れるくらい強くなりたいんです、お嫁さんと子供を・・・」
「それは『アイギス』のみんなですか?」
「もちろん全員です」
「私達もですか?」
「アンリーとシンリーは『娘さん』達がキッチリ守りそうですが・・・、まぁ、そうです全員です!」
アンリーとシンリーはリウの宣言にニコニコしながら話を聞いていた
2人とも巫女として育てられてきたが、多少の弓と魔法は修得していたが、実践で通用するかと言えば・・・微妙な実力だった
2人はリウの話を聞いてから、朝錬を一緒にする事になるのだが・・・、例の如く筋肉痛と魔力枯渇でダウンする日々を送る事になる
それでも一緒に強くなろうとする姿は、『アイギス』のみんなから支持されていく
これにより『アイギス』の総合戦闘力向上に繋がり、魔法を用いた遠距離狙撃型の戦闘スタイルの確立に繋がっていった
リン達も朝錬をするんだが、前半の魔力の修練後には、朝ご飯の準備の為に運動場を離れるので、食後にリウと『娘さん』達と後半の修練をしていた
このリウと『娘さん』達との毎日の修練は、冬期間中毎日行い、リン達の中堅冒険者レベルから上級者冒険者並の実力まで向上させていく
もっともリウと『娘さん』達は、上級冒険者の実力を知らなかったので、魔力の扱いが上手くなったとか、鉄杖の扱いが上手になって身体のキレが良くなったと思っているだけだった
実力があっても薬草採取やポーション採取がメインの『アイギス』には関係の無い事だったのだが・・・
リン達5人がアライズ達に変わり、『アイギス』の料理番に昇格しました。
龍の巫女のアンリーとシンリーの2人が、朝錬参加です。
実は実力があがったリン達5人・・・実力を発揮する機会は無いかもしれぬ。




