2-238目的地までは危険な街道とか
次の日、『アイギス』は一軒家の掃除をしてから、商業者ギルドへ向かっていた
『リリー』は先に朝ご飯を食べた後にギルドに向かい、リウ達は2カ月近く暮らした一軒家の掃除をし、増設した箱馬車に乗ってギルドへ向かっていた
御者はリウで助手はシルミルの2人が担当していた
商業者ギルドに一軒家のカギを返しには、リウとノノが担当していた
ギルドに入ると受付には『リリー』と数人の女性ギルド員が担当していた
リウとノノは受付カウンターで書類作業をしている『リリー』に声をかけた
「『リリー』さん、一軒家のカギを返しに来ました」
『リリー』はリウから手渡されたカギを確認し、手元の書類に一軒家のカギ返却済みと記入し
「はい、カギの返却完了です、長期間の土壁依頼ありがとうございました」
「一軒家を使わせてもらったから依頼完了したんです、気にしないでください」
「それで次に向かう場所は・・・5つ先の集落でしたか?」
「予定ではそうですが・・・、やはり雪が降る前に到着は無理かな」
『リリー』は受付カウンターに付近の地図を開き、現在地と5つ先の集落=目的地を指でしながら話し始める
「この地図で解るように、草原の街道は3つ目の集落を越えると山間部に突入します」
地図には街道が2本あり、どちらも目的地の集落に着く様に書かれていた
右の街道は草原を進む道であり、目的地まで比較的安全に進めるようになっていたが、3つ目の集落を越えたあたりから山間部に突入するみたいだった
山間部突入の様だが、比較的緩やかな山道みえた
「あの『リリー』さんの指さした草原の街道は地図で見た感じ遠回りな気がするんですが?」
確かに地図にはもう1本の街道が書かれていたが、『リリー』はこちらの道を教えてはいなかった、こちらの道は草原を抜け、森の中を通り山間部を抜けて目的地の集落へ最短距離で行けそうな感じになっていた
地図で見ても距離はこちらの方が半分の距離に見える・・・、森と山間部を移動するから危険なのかもしれないが・・・
「こちらの街道は深い森を抜ける道になっているので、ギルドでは通行を推奨してません、森の中は草原よりも凶暴な肉食の動物が多数生息していますし・・・」
「凶暴な動物ですか?」
「しかも、肉食って・・・」
「黒熊よりも凶暴な『赤熊』が生息しています・・・、毛皮も赤みがかっていますので見た目でもわかりますが、黒熊よりも大型です」
「『赤熊』も黒熊同様に毛皮の需要ありますか?」
「黒熊よりも丈夫な外装を作れるとかで魔道具屋から依頼があるようです」
「それよりも『赤熊』は食べれるんですか?」
「それはもちろん、黒熊よりも美味だと言われてますが・・・、あまり露店や食堂で出回りませんが・・・」
「美味しいのか・・・食べるしかないな」
隣のノノも同じ考えなのか、コクコクと頷いていた
「『赤熊』以外でも危険な動物っているんですか?」
「確か『山虎』といわれる虎がいたはずです」
「『山虎』ですか・・・、虎ってどんな動物なんですか?」
「大きさは熊と同等ですが、動きが早く気がついた時には襲撃されると・・・、遭遇すると逃げるのは不可能と言われてますので・・・」
「ちなみに、『山虎』は食べれるんですか?」
「それについては未確認です、『山虎』の毛皮はギルドでは常時依頼が出てますが、過去10年間『山虎』の毛皮がギルドに納品されたという話を聞きません、その為『山虎』を食べたという話も聞いた事が無いんです」
「なるほど、ギルドとしても未確認な事なので解らないか・・・」
「それなら、偶然襲われて帰り討ちして食べても問題無いね」
『リリー』とリウの話を聞いていた、ノノは『山虎』の味が気になり始めていた
そして、襲われても逃げないずに倒すと言ってのけた
「まぁ、逃げ切れないなら抵抗するしかないか~」
「あの・・・出来れば逃げてもらいたいんですが?」
「もしもの時はメンバー全員で抵抗しますよ?」
「リウさんお願いしますね、『アイギス』には各集落から土壁作成依頼が来ていますので・・・、危険な街道を通って怪我でもされたら私が叱られます」
「大丈夫ですよ、『白銀龍』と『娘さん』達もいますし♪」
「あの『護衛』の方々ですか・・・確かに強そうに見えましたね」
「だから大丈夫ですよ」
リウはにこりと『リリー』に話しかけ、ノノもニコニコしながら頷いていた
『リリー』は『白銀龍』と『護衛』の方々がいるなら大丈夫な気がしていた
「わかりました、それでは再びこのギルドで会えるのを楽しみにしてます」
リウは『リリー』と握手し、続けてノノと『リリー』も握手をしてギルドを後にするのだった
ギルドから出るとシルミルがギルド前で馬達を撫でまわしていた
箱馬車の2Fからクラシスとリズがギルドから出てきたリウ達に手を振り、クラシスとリズも手を振り返していた
馬達を撫でていたシルミルも、リウ達がギルドから出てきたのを確認し、箱馬車に乗り込む
リウは御者席に座り、ノノがリウの隣に座り箱馬車が動き出す
箱馬車はココとジャンヌが『浮遊』を唱え浮かせていた、今回から『浮遊』を付加した魔石も同時に使用していたので、増設した箱馬車を楽々と浮かせながら旅をする事が可能になった
箱馬車が浮いているのを確認し、『アイギス』の箱馬車は一路街道を進むのだった
箱馬車が『犬耳族』の集落を出て暫らく経ってから、箱馬車の方からクラシスが声をかけてきた
「それで箱馬車はどっちの街道を進むの?」
「そっか、クラシスはこの先の街道の事を『リリー』に聞いていたの?」
「まぁね、晩酌の時に少しだけ」
「僕らが進む道は少し危険な街道を進みます、『赤熊』や『山虎』が出現するらしいから、周囲警戒をしっかりしないと・・・」
「その道は雪降る前に目的地に着くの?」
「ギリギリ着くと思うけど、襲撃が激しい時は討伐優先でいきます」
「それはなんで?」
「どうやら『赤熊』と『山虎』の味が気になります、『赤熊』は美味らしいし『山虎』は過去10年間討伐記録と食べた記録が無かった」
「それは一度食べてみないと・・・」
クラシスも美味しいものには目が無いので、美味と言われれば多少の危険を顧みても食してみたい、これは他のメンバーも同じ考えなのか、箱馬車の中で『赤熊』の調理法などを、アライズ達が話し合っている声が聞こえる
「危険な街道での野営なので、いつも以上に堅甲な簡易陣地を作らないとなぁ・・・」
リウはMAPを展開し、これから進む街道を確認していた
今日の内に森へ突入するみたいだ、暗くなる前に簡易陣地作成か・・・
とりあえず、箱馬車の周囲に赤マーカーの反応が無いから、野犬や黒熊などはいないみたいだな・・・、MAPを縮小してみると森の奥に多少反応があり、山間部には赤マーカーの反応こそ少ないが、大きな赤マーカーが確認できた
「今日から野営で火の番も決めないとな・・・」
箱馬車は草原を抜け木々が生い茂る森へと突入するのであった
森へ突入と同時くらいに、リウの隣にはリズも座り、ノノとココがいつでも魔法障壁を展開できるように備えた、周囲の警戒は箱馬車の2Fで待機しているクラシスと『娘さん』達が担当していた
『赤熊』・・・赤みの毛皮の凶暴な肉食動物登場。
『山虎』・・・白と灰色の毛色の凶暴な肉食動物。




