2-229『リリー』訪問と昼ご飯とか
商業者ギルドの『リリー』と『ガンガ』は、『アイギス』の一軒家の扉の前で入るべきか、入らざるべきか悩んでいた
それは一軒家の中から聞こうる楽しそうな笑い声と、扉の向こう『リリー』達の所まで香る美味しそうな匂いが、今日はパーティーか家族団欒で過ごしている雰囲気を、ひしひしと感じていたからである
それ以外に一軒家に近づくにつれ、どこからともなく視線を感じていたのも、一軒家に近づくのをためらう原因でもあった
「それでどうするよ、『リリー』はお土産まで買ったのに入らんのか?」
「いえ、そう言う訳では無いのですが、休日にいきなり訪ねてもいいものかと・・・」
「んー、いきなりとか言っても一軒家からの視線が・・・」
「『ガンガ』も気がつきましたか、一軒家の方から視線が2つですか、警戒していると思っていいでしょうね・・・」
「向こうからの殺気を感じないので警戒している?」
「誤解を解くためにも入りますか・・・」
『リリー』はそう言い、扉をノックし声をかけるのだった
「すいませんー、商業者ギルドの『リリー』ですがー、リウさんはいらっしゃいますかー」
「なぁ、いきなり扉を開けるのはダメなのか?」
「ダメに決まってます、そんな事をしたらいきなり攻撃をされますよ・・・」
暫くすると、普段見掛ける革鎧姿では無く、普段着なリウとクラシスが扉を開けてくれた
他のメンバーも庭先で寛いでいるのが見えるし、乗馬を楽しむシルキーやミルキーもこちらを見ていた
「『リリー』さん、おはようございます」
リウはそう言って、クラシスと共にぺこりと頭を下げるのだった
『リリー』と『ガンガ』もつられて一緒に頭を下げ
「休日にごめんなさい、実は『ガンガ』からリウさん達の食事が美味しいと聞いて・・・」
「すまんな、こいつが俺だけが食べれるのはイヤだったみたいで・・・」
「すいません、美味しそうに昼ご飯の事を話すもので・・・気になって気になって」
リウとクラシスが「そういえば『リリー』さんには食べてもらって無かったっけ?」と話し、「『ガンガ』さんに多めに渡した事があったはず・・・あれ?」と聞こえて
「前に『ガンガ』さんに『リリー』さんに渡して下さいってお願いした料理は・・・どうしました?」
「小さな包みを渡したんだけど?」
リウとクラシスが『ガンガ』にお願いした料理に
「あー、渡されたな、あれ、どうしたっけ?」
「私は貰ってませんが?」
「美味しそうな包みだったんで、歩きながら食べた・・・かな?」
『ガンガ』は『リリー』の刺すような視線をかわしながら、その時の事を思い出そうとし
「あぁー、ギルドに戻る前に食ったかも、すげー美味かった」
「あなたって人は・・・、何で食べちゃうかな・・・」
『リリー』はがっくしと肩を落とし、しょぼーんとしていた
「あの『リリー』さん、アライズ達が昼ご飯の準備をしてるので一緒に食べませんか?」
「いいんですか?」
「大丈夫ですよ、今日は露店で買い物も済ませてあるので食材は豊富にありますし、そのかわり食事はありきたりな料理なので・・・」
「いえいえ、『アイギス』の食事を頂けるのであれば嬉しいです、それとこれを・・・お土産です」
『リリー』はそう言って買い物籠に入った、黒熊とホロホロ鳥の精肉をリウに渡すのだった
本当は果物と考えていたが、『アイギス』はメンバーも多いので、焼いても煮ても美味しい黒熊とホロホロ鳥の肉を選んでいた
リウは籠の中の肉を眺めながら、ステーキもいいが手軽に焼串か焼鳥にするかを頭の中で考え始めた、クラシスは籠を見つめて考え始めたリウを放っておき、『リリー』と『ガンガ』を一軒家に招待した
「今日は天気もいいので、庭先で昼ご飯を食べようかと思って準備していたんですが・・・」
庭先にはテーブルとイスが並べられ、コンロには焼串や焼鳥が炙られていた
よく見るとクラシスとリズは果実酒を飲んでいたり、アライズ達は焼串と焼鳥の下ごしらえをしていた
「あの、いつもこんな感じで食事をしてるんですか?」
『リリー』は『アイギス』のメンバーが野外の食事にも関わらず、手際良く食事の用意をしており、野営に慣れているのか、いつも食事は外で行っているのかわからなくなっていた
籠の中の肉を眺めていたリウは、何を作るか決めた様で『リリー』に話しかける
「『アイギス』は馬車での旅が長かった事もあり、宿屋や食堂での食事をする事があまり無かったんです、旅先では土魔法で簡易陣地を作成し、外での食事を楽しんでいたので、この光景は普通なんです」
「それに料理はマジックバックやアイテムボックスに、調理済みの料理が保管してあるし、雨風がしのげれば外でも、ダンジョンでも同じように食事をしますよ」
「あのリウさん達はランクEと言う事でしたが・・・、ダンジョンに入った経験があるのですか?」
「まぁ、昔の事です、今はダンジョン攻略をしようとは思いませんよ」
「・・・あまり冒険者らしからぬ発言ですけど・・・、それはなぜです?」
「そりゃダンジョン攻略を目標にしているパーティーはあるみたいですが、はっきりいえばダンジョンで色々倒しても、魔石しか手に入らないし、僕ら的な旨みが少ないんですよね」
「魔石をギルドに納品すれば、活動資金やギルドポイントを増やせますが?」
「『アイギス』的にはランクを上げる必要が無いので、ギルドポイントを稼ぐという行動自体しなくてもいいんです、魔石に関しても納品してギルドポイントを増やすより、多少なりとも食糧費になった方が嬉しいですね」
「名声よりも食事を優先??」
「そうですね、討伐よりも採取を優先したり、ランクを上げるよりも食事の向上に努めた方がいいです」
「やはりリウさん達は変わってますね、それとも『アイギス』が変わっているのか・・・」
「リウの言ってる事は正しいと思うよ、危険を冒さずに続けていくのも冒険者には必要だし、ランクを上げる為に無理をするのはダメな事だしね」
「危険を冒さずに、安定して生活出来るように、薬草採取とポーション作成を覚えたのはリウの指示だしね、冬でも生きる事が出来るようにね」
果実酒を飲みながらリウとの話を聞いていた、クラシスとリズが『リリー』話しかける
コンロで炙っていた焼串や焼鳥を大皿にのせ、アライズがテーブルに並べる
「まずは焼串と焼鳥をおあがりよ、『リリー』さん達がお持ちした肉はすぐに下準備をするので、まずは焼串と焼鳥をどうぞ~」
『リリー』と『ガンガ』は美味しそうな香りが大皿にのっていた、『リリー』は焼串を手に取り、『ガンガ』は焼鳥を手に取り、同時に口に運び焼串と焼鳥を頬張っている
1口目で肉汁とたれの味わいで凄い勢いで頬張り、2本目の焼串や焼鳥を頬張っていく・・・
「『ガンガ』の言う通り、露店よりも美味しく、宿屋よりも美味い・・・、しかも、焼串と焼鳥どちらも味付けが違うのか・・・」
「それは何度も露店で焼串と焼鳥を食べ続けた結果かな?」
「焼串や焼鳥は露店巡りが好きなノノやココが美味しい焼串や焼鳥を購入するもんだから、露店で食べた分だけ味付けが上達して行った」
「それに『アイギス』の焼串や焼鳥の味付けが、これよりも美味しくなるんだから!」
いつのまにか『ガンガ』はクラシスとリズと一緒に果実酒を飲み、両手に焼串を持ちニコニコしながら頬張っていた、『アイギス』的には今日は休日にするつもりだったが、昼前から酒を飲み始めた『ガンガ』は自主的に仕事を休むのかな?
さぁ、アライズ達の食事の準備が終わり、リウ達も手伝って完成した料理をテーブルに並べはじめる、クラシスとリズとアライズと『ガンガ』の前には果実酒が注がれたカップが置かれ、『リリー』の前には焼鳥や焼串・サイコロステーキやサンドイッチが目の前に並んでいた
料理が並び、リウはいつもの様に手を合わせ
「いただきます」
「「「「「「「いただきます」」」」」
手を合わせ、「いただきます」と呟いた後に食事が始まる




