1-192春になり森へ向かうとか
簡易陣地の生活が始まって4カ月が過ぎた頃、麓の町より山間部の深い森にて、大型の黒い魔獣の目撃情報が流れ始めた・・・
通常であれば冬期間は熊や大猪などは、深い雪の時期は冬眠もしくは、棲み処の移動をしているはずで、深い森にはいないはずだった
それが雪が降り始めて3カ月後、麓の待て傍の街道を移動する商隊の護衛が、街道側に大型の黒い影を見かけたのが始まりだった
麓の町では、赤目の灰犬の討伐で手が回らず、大型の黒い影の事の確認をせずにいたのが原因だった、灰犬討伐の冒険者達も森からの黒い影を目視で確認したが、気がつくと消えていたので、危険が無いと判断していた
麓の町の周囲が雪解けがしだし、灰犬が黒犬へと変わりだしたある日、赤目の黒犬を討伐していた冒険者が、赤目の黒熊の襲撃を受ける事になる、冒険者達は黒熊の討伐こそ成功したが、6人中4人が怪我をし、『呪い』状態になり教会で『解呪』をしたが、赤目の灰犬よりも強力な『呪い』の為に、暫らく教会での治療を受ける事なる
冒険者ギルドでは中堅以上の冒険者に、赤目の魔獣の討伐依頼を発注したが、雪解け前という事もあり、依頼を受ける冒険者はいなかった
また、赤目の黒犬の数も春になるにつれ数も増えていき、『アイギス』の『聖属性ポーション』の作成依頼は継続して商業者ギルドへ納品していた
ポーションのギルドへの納品は、ハルクさんが『アイギス』の簡易陣地へ取りに来ていたが、赤目の黒犬の出現数が多いので、護衛のギルド員と共に受け取りに来ていた
簡易陣地の四方の塔からも赤目の黒犬を確認でき、リウ達も簡易陣地の防壁から赤目の黒犬を撃ちぬいていた、赤目の黒犬は倒したのと同時に崩れ落ちた、それは腐敗した黒犬を思い出していた
リウ達は『腐敗龍』の『呪い』を思い出していたが、今の現状では周囲もしくは山間部に『腐敗龍』がいる事は確認できなかった
『聖属性ポーション』を受け取りに来たハルクさんも、『呪い』を振りまく魔物が森にいるとは考えにくいと言っていたが
「本来『呪い』は深い森でも『黒き龍』が使えたと言われていますが、それが本当であるか知ってる人はいません、そして、『黒き龍』は1000年前に深い森から消えてしまいました・・・」
「『黒き龍』が消えた?」
「そうです、山間部や深い森を探しても誰1人見つける事が出来なかったそうです、それで当時のエルフ達は『黒き龍』はいなくなったという事でした」
「では『呪い』が麓の町で復活したという事は・・・『黒き龍』が深い森へ戻ってきた・・と?」
「それはわかりません、エルフの集落でも赤目の灰犬が目撃されています、集落での被害は無いんですが・・・エルフの商隊が春に来るのが困難だと報告がありましたね」
「それじゃ、僕らがエルフの集落へ行くのも・・・夏頃ですか?」
「安全が保障されないままでは、森に入るのは危険です」
「わかりました、僕らだけで赤目の魔獣を倒せるほど強くなったら森へ向かいますね」
「それがいいですが、夏前で森へ行けそうで・・・こわいですね」
「赤目の魔獣の先に『黒き龍』がいるとするなら、万全の準備が必要だし、魔法以外の修練もするから任せてよ」
「『聖魔法』を修得しても、『呪い』を完全に防ぐことは無理なので、『聖属性ポーション』を用意した方がいいです」
「それなら大丈夫です、ギルド納品よりも多めに備蓄してるし、回復系ポーションもマジックバックには保管してるので」
「では、森へ向かう時は私に声をかけて下さい」
「いいですけど・・?」
「いきなり森へ入り、エルフの集落への侵入は排除対象にされかねませんので」
「わかりました、できれば森へ向かう時、簡易陣地の事を任せても良いですか?」
「はい、大丈夫です」
「アライズ・アリサ・アンナ・シルキー・ミルキーの5人と、リン・アイズ・ヘンリー・ライム・ジルの5人の計10人は簡易陣地に待機予定です」
「少数精鋭で向かうという事ですか?」
「それもありますが、アライズ達には簡易陣地守ってもらいます、シルキー達は馬達を任せてるし、リン達は龍の巫女の護衛達と共に巫女を守ってもらいたい」
「それでは私は何をすれば?」
「そうですね、みんなを見守ってくれますか?僕達がいない時の保険です」
「了解です」
ハルクさんはリウ達がいない時に、自分がヘンリーを守れると聞いて少し「ほっ」としていたが、リウ達がいない時に10人の相手が務まるかという不安は付きまとう
ハルクさんに簡易陣地の事をお願いした2ヶ月後に、リウ・ノノ・ココ・ジャンヌ・クラシス・リズ・『白銀龍』はエルフの街へ向かう事になる
春になり雪が融け、黒犬や大猪が活動を開始する頃に、深い森の奥から赤目の魔獣も動き出していた
それは『黒き龍』が深い森へ戻ってきた事への影響か、それとも・・・
春になり、リウ達は森へ向かいます。




