1-176麓の街とヘンリーの両親とか
次の日は、ヘンリーの両親に会うという事で、朝食後にリウはノノ・ココ・ジャンヌと共に商業者ギルドの待ち合わせ室で待機していた
商業者ギルドはクエストの発注者や、クエストの納品をする冒険者が列をなしていた
冒険者ギルドと違い、クエストの内容も討伐よりも薬草採取などが多く、冒険者の多くは初心者冒険者や女性の冒険者ばかりであった
冒険者ギルドと商業者ギルドのクエストは、どちらも同じようなクエストを発注しているが、冒険者ギルドの方が気性の荒い冒険者が多い感じがし、『アイギス』はクエストの納品などは商業者ギルドのみを使用していた
リウ達は1つのテーブルに固まって座り、ヘンリーの両親の到着を待っていた
たまに怪我をした冒険者がギルドの奥へ運ばれるのを横目で見たり、納品した物が数が少ない事でもめたり、臨時のパーティーを求める冒険者がリウ達と同じ待ち合わせ室に数名座っていた
「そういえばヘンリーの両親って、どんな方なの?」
「私の両親は、どちらもハーフエルフで昔は冒険者をしていたんですが、今は商業者ギルド系の魔道具屋を営んでます、杖やローブ・ポーションなどを販売してます」
「両親ともハーフエルフ・・・・で、ヘンリーもハーフエルフ?」
「私の場合は、普通のハーフエルフよりは人に近い能力しか無いので、両親のもとを離れ冒険者学校へ入学したんです・・・」
「僕だったら、家を離れ冒険者学校に入学した娘が、家に帰ってきたらスゲー喜ぶんだけどな」
「そりゃ、最初はすごく喜んでましたよ、その後に凄く心配させられましたが・・・」
「なにも心配する事はしてないんだが・・・、会って話すだけだし、何とかなるか」
暫らくギルドの待ち合わせ室でぼんやりしてると、金髪の2人組が待ち合わせ室に入ってきた
ヘンリーが立ちあがり入ってきた2人組がリウ達の席の前にやってくる
見た目10代後半にしか見えないが・・・、この人達がヘンリーの両親なのかな?
リウは慌てて席を立ち、ヘンリーの両親にぺこりと頭を下げる
「初めまして『アイギス』リウです」
ヘンリーの両親はリウの魔力の多さに驚愕していた・・・
ヘンリーは両親が驚き火汗をかいているのに気が付き声をかける
「お父さん?」
「あぁ、初めましてヘンリーの父のハルクです」
「母のシルクです、あなたは本当に人ですか?」
「普通の人ですよ」
リウはそう言ってギルドカードを2人に見せる
「なんでランクE・・?」
「それほどの能力あればランクCでも驚かないのに・・・」
どうやらリウのランクEを納得してはいないみたいだ
それにしても魔力が高いからってランクCは無いでしょ・・・
「本当にランクEですよ、薬草採取とポーション作成が好きなパーティーです」
「それはヘンリーも・・・っと言う事ですか?」
「はい、僕達と一緒に薬草採取したりポーション作成してますよ」
リウはそう言ってヘンリーが調合したポーションを、ハルクさんとシルクさんの前に並べる
ポーションは手作りの瓶に入ったポーションで、最初は手作りの瓶に驚き、次にポーションを確認し再び驚いた、ポーションの性能にも驚きヘンリーとリウと交互に見て
「本当にヘンリーが作成したんですか?信じられない・・・」
「ヘンリーだけじゃなく、同じパーティーの4人も同様のポーションを作成出来ますよ」
「冒険者学校ではポーション作成を教えてたっけ・・・?」
「ポーション作成は商業者ギルドでしか教えていないはず・・・」
2人はヘンリー達がポーションを調合しているのを不思議がっていたので
「学校卒業後に同じクエストをした時に、少しだけ僕達が教えたんですがダメでしたか?」
ポーション作成はギルドで初歩技術を習うか、ポーション屋に弟子入りをして調合を修得必要があった、それを同じクエストをしただけど教えるという事はあり得ない事だった
「リウは誰にでもポーション作成を教えてるのかい?」
「そんなわけないでしょ、『アイギス』では薬草採取とポーション作成をセットと考えているので、自分で採取した薬草を、自分でポーションに作成する、そこまでを僕達は教えてます」
「『アイギス』ではという事は、後ろの彼女達もリウと同じでポーション作成も出来るの?
シルクさんはノノ達を見ながら聞いてきたので、ノノが代表して
「はい、私達もポーション作成出来ますよ」
「『アイギス』はポーション屋なんですか?」
「違いますよ、ポーション作成は冬場でも安定した収入を得る為ですし、冒険者を引退した時にポーション作成があれば生活に困らないと考えただけです」
ハルクとシルクは、初心者冒険者にしか見えないリウが、冒険者引退の事まで考えていた事に驚き、魔力の高さと見た目の若さで、リウが人以外の種族なのかと思いシルクが声をかける
「リウは人よね・・・?」
「人だけど・・・なんでそう思ったんです?」
「その若さで魔力の高さが不自然です、しかも、後ろの方々も同様に魔力が高いですよね?」
「ええ、僕達は魔力の修練を毎日行ってますから、寝る時以外は魔法を使ってます、魔力が高いのは魔法を普通の人より使用してるからじゃないかな?」
「その修練は見せてもらっても?」
「大丈夫ですが、ギルドでやる事じゃないでしょ、『アイギス』の簡易陣地で魔力の修練を見てもらって平気ですよ」
「今日この後、訪ねても平気ですか?」
「はい、うちのメンバー達が簡易陣地の作成を今もやっているので行ってみますか?」
「是非!!」
「それじゃ、今から簡易陣地へ招待します」
リウ達はハルク夫妻を連れだって待ち合わせを出ようとすると、ギルドの中が騒がしいのが気がついた
ギルドに運び込まれた冒険者が奇声を上げ、怪我の治療をしていたギルド職員を怪我をさせたみたいだった
数名の冒険者とギルド職員が奥へ駆けて行ったが、リウ達の様な冒険者は立ち入りを禁止され、その日はギルドの営業を取りやめる事になる
ギルドの奥での出来事は、麓の街での最初の事件であったが、『アイギス』が事件の真相を知るのは、それから数日後だった・・・
リウ達はハルク夫婦と一緒に『アイギス』の簡易陣地へ招待した
2mの高さの土壁を見て驚き、土壁なのに石材の様な堅甲な作りを実際に手で触っていた
入口の扉を開け、2人を簡易陣地へ招待した
入口からまっすぐに石材で道が出来ており、真っ直ぐな道は正面の大きな『かまくら住居』があり、右手の道の先には馬小屋があり、左の道の先は空き地になっていた
正面の大きな『かまくら住居』はアライズ達の城である調理場と食堂兼作業場となっていた、実際リウ達が食堂を見てみるとアリサとアンナがポーション作成をしていた
右手の馬小屋ではシルキーとミルキーが馬達の世話をしていた、小屋の隣の部屋には小さめの寝室があり、シルキーとミルキーの隠れ家となっていた
大きな『かまくら住居』の裏には、小さめの『かまくら住居(寝室)』があるのだが、設計上リウ達の位置からは見る事が出来なかった
「ここが麓の街に滞在する為に土魔法で作成した『アイギス』の簡易陣地です!」
「これを君らだけで作ったと言うのか・・・」
「土魔法で土壁を修得していれば出来ますよ?」
「いあいあ、無理でしょ、土壁ではここまで大きい建造物を作成するのは普通無理だよ・・・」
「うちのメンバーは、全員が土魔法を修得済みなので、複数人で一気に土魔法を唱えればいけますよ?」
「ちなみに、これは何週間で作ったんだい?」
「えーと、3日?」
「違うでしょ、2日よ」
空き地の方で地下の修練場を構築していたクラシスとリズがリウ達に近づき声をかけてきた
2人は少し汚れていたので、リウは生活魔法で2人を綺麗にしていた
「リウ、ありがとぉ」
「はぁー、さっぱりさっぱり」
食堂のイスに深く座りぐったりしていた、2人は地下室の入り口と地下へ続く階段を完成させて戻ってきたみたいだ、これ以上進めるには、数人で土魔法を使用しないと崩れる可能性があると言われ、休憩を始めたみたいだった
「地下の修練場の入り口と階段はなんとかしたから、明日はリウとココと私たちで一気に部屋を広げるわよ!」
「崩れないように土魔法で土を高密度で、圧縮しながら部屋を広げるから、4人で4方向に土を圧縮していこう・・・、それで後ろの2人がヘンリーのご両親かな?」
クラシスとリズの話は驚きの連続だったが、これまでの事で十分驚いていたので、地下室を作成していたやり方の土魔法の使い方はエルフは勿論、商業者ギルド内でも聞いた事の無い内容だった
「初めましてヘンリーの父のハルクです、こちらが家内のシルクです」
ハルクさんは隣のシルクさんを『アイギス』のメンバーに知らせている
ハクルさんの紹介でシルクさんはぺこりと会釈し、2人がここへ来た詳細をリウはメンバーに教え、いつもの様にリウは魔力の修練を始め、ハルクさんとシルクさんに魔法の修練を見せていた
魔力の圧縮と維持は、エルフでもこのような魔力の修練は見た事が無いみたいで、リウのやっているのを見ながら、自分達でもやっているみたいだ
「この魔力の修練を毎日やってるんですか?」
「そうです、毎朝は魔力の修練と棍の修練をしてます」
「棍の修練?」
「僕が刃物が苦手なので棍の修練をしてるんです」
「魔法が使えるのに・・・棍も使うんですか・・・」
「そりゃそうでしょ、街中でいきなり魔法を使うのは無理だし、魔法が使えない時でも自身を守れるようにならないと・・・」
「合理的だな」
「それでヘンリー達との護衛依頼は麓の街だったということでしたが、その後はどうするんですか?」
「これから話す事は秘密でお願いします、僕達は麓の街の奥にある森が目的地です」
「深い森に用があるんですか?」
「僕達は龍が住まう森への到着です」
「・・・龍ですか、確かに深い森は龍が住まうと聞いた事がありますが、エルフの集落でも深い森には龍がいると聞いた事が無いんだけど・・・」
「ええ、エルフの集落の奥が目的の地とは決まってません、それでも可能性があるなら僕達は行きます」
「龍に会いたいんですか?」
「いいえ」
「それでは龍に何を求めるんですか?」
「求めるの物は無いです」
「では、龍に何を聞くんですか?」
「龍の帰る場所を」
「帰る場所?」
「ええ、迷子の龍を故郷に帰すんです」
そういうとリウは、『かまくら住居』で昼寝をしていた
『白銀龍』を抱き、ハルク夫妻の前に現れる、2人はここに龍がいるとは思っていなく
慌て警戒しているのが分かるが、何故ここまで『白銀龍』を警戒しているのかわからなかった
「なんでそんなに警戒してるんですか?」
「その『白き龍』は、いつから君達と一緒にいたんだい?」
「んー、はっきりとは覚えてないけど1年経ったかな」
「そうですか、エルフの集落には昔話で、『白き龍』が遥か昔に『黒き龍』の呪いで大陸を去ったという話を思い出しました・・・、エルフの昔話なので1000年以上昔の話だと思うので、あなたの抱いている『白き龍』とは無関係だと思いますが・・・」
「その話はエルフの集落で聞けますか?」
「集落の長老なら、はっきりと昔話を聞けると思いますが・・・」
「やはりエルフの集落には行かなきゃいけないな・・・」
「・・・エルフの昔話と関係があるんですね」
「私達がエルフの集落にお願いして、招待する事も可能ですが?」
「僕達はここで春までに修練して、『アイギス』としてエルフの集落を訪ねようと思います、それと『白銀龍』の事は秘密にお願いしますね」
「はぁ、龍の事は言えませんよ・・・、ギルドにも秘密にしなきゃいけないし」
「それじゃ、『アイギス』がエルフの集落に到着するまで、ヘンリーの事お願いしますね」
シルクさんはニコニコしながら、ハルクさんは頭を抱えながら街へと帰って行った
エルフの集落では『白銀龍』の事は、『白き龍』って言われてたのか、春までに山間部を目指せる様に強くならないと・・・、そう思いながら『白銀龍』を撫でていたので、ノノ達にはいつも通り愛でているようにしか見えなかった
エフルの集落に行く事が決まりました。
簡易陣地の完成と『アイギス』の強化が必須です。
ギルドの奥であった事件は、後で書きます。




