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隊長不在

作者: 航空母艦

「それで、戦闘に巻き込まれて彼は帰って来なかったと?」

「はい、そう言う事になります連隊長、」

「そうだな、第三中隊長、君の所の第二小隊は隊長がよく死ぬな」

「えぇ、何故かよく死にますね」

「今すぐに隊長を」

「了解しました」

「………というわけにも行かないんだよねぇ、中隊長」

「………どういう事ですか?」

「陸軍の再編成が進んでるのは知ってるね?そこで士官不足が発生したみたいだ、」

「………つまり」

「国防警邏隊から士官が陸軍へ抜かれて行ってしまったよ」

「しばらくの間は第二小隊だけ隊長不在になりますね………」

「………まぁ、そこでだ、中隊長」

「はい」





「で?この小隊には隊長が来ないと?」

「まぁ、上の方でも努力してる、しばらく我慢してくれ」

「してくれも何も、今までの隊長がどんなやつだったか中隊長は知ってるくせに」

「………連隊長も反省してる、この通りだ」

「わかりました、過去の事ですし忘れましょう」

「すまないな、何時も世話かかせてしまって」

「じゃあ私は戻りますから」

「それと連隊長から伝言だ、隊長のかわりといっちゃなんなんだが」



物語は1981年に遡る、

帝国陸軍が北方より侵略する敵に蹂躙された事に始まった、

敵は確実に南下し、現在東京の手前まで侵攻してきている、

謎の敵はまるで光の線の様な物で攻撃してくる、

速射もきく、威力も十分、

戦車なんて一瞬で貫通してしまう、

一説では謎の敵はどこかの国が実験過程で生み出してしまったモノではないかと推測される、

しかし肝心な陸軍が蹂躙された以上、

その再編成されるまでには戦力が必要である、

そこで設立されたのが、

警察より上で軍隊より下、軍隊に限りなく近い組織、

国防警邏隊である、





ー国防警邏隊機甲科卒業生ー


ー第六機甲連隊第三中隊第二小隊副隊長ー


ー野々宮麻衣ー




第二小隊は国防警邏隊では珍しくない女子ばかりの部隊である、

帝国陸軍時代から残る悪伝統で、

女子が軍隊へ売られると言う、


流石に最近は改善されて来たが、

まだその流れは完全に消えたわけではない、


後にこの国の名前がつけられたこの戦争、

『大八洲戦役』はこの時、まだ終焉の足音すら聞こえていない、


後日、

第二小隊に新たな補充員が来た、


「前の司令官が何をやらかしたかは知らないが、今日から副隊長の代わり俺が指揮を執る、機甲指導員の夏原だ、よろしく」

「な、貴様!指導員の癖に隊長気取りか!」

「この小隊を指導するからな、隊長だが隊長じゃないんだよ、指導員だ」

「ふん、どいつもこいつも………」

「………調べてみるか」


結局指導員は放任主義だった様だ、

こちらは好き勝手にできるからいいんだが、

補充されたのは指導員だけではない、

機甲連隊の花、戦車もだ、

国防警邏隊は皇暦から名前を取らない、

これは主力の帝国陸軍と区別するためである、

帝国陸軍の主力戦車三四式戦車、

それを国防警邏隊に回してもらってる、

ただし、旧式のである、


74式戦車


105ミリライフル砲一門

姿勢制御の出来る油圧サスペンション

そして傾斜装甲を取り入れた独特のシルエット


戦後第二世代型戦車の類で最後に生まれたこの戦車は、

各国の戦車と比べても大差なく、

逆に抜き去る項目もある事から第二.五世代とも呼ばれることもある、

帝国陸軍は既に改良型の三四式戦車改を主力として配備、

さらにその改良型の三四式戦車改二の試験も始めていた、

国防警邏隊は74式戦車がまだ主力であり、

エリート部隊にのみ74式戦車改を配備している、

紛れもなく時代遅れだ、


「よう」

「漸く現場へ出てきたか引きこもり指導員」

「男はこの小隊に嫌われるんだな」

「で、現場へ出てきたって事はなんかあるのか?」

「連隊長から伝令だ、明日の明朝、マルナナマルマルより連隊を北へ動かす、そこで第八機甲師団と合流して進撃するとの事だ」

「間違いなく対敵するね」

「北だからね、」


時という砂は流れ続ける、

まるで過去の事を覆い隠すように、

砂に埋もれた歴史を誰が掘り起こすのか、







ー1996年2月5日ー


ー陸軍再編成完了ー


ー列島反攻作戦ー


『オ号作戦』発令




ちょうどその日の小隊は迷子だった

旧式のために油圧サスペンションから油漏れが発生し、

連隊の本隊から大きく遅れをとっていたのだ、


「副隊長、毎回思うんですが」

「わかってる、女子には辛いのはわかってる、」

「重いです!!!」

「指導員も手伝ってほら、」

「もう十分やってるから早く転輪付けて!俺死んじゃう!?」

「男の癖にだらしない、これだから引きこもり指導員は………」

「引きこもり言うな、調べ物してたんだからな!?」

「こんな事なら連隊本部から整備小隊呼び止めとくんだったわ」

「人の話聞いてる!?」


するとどうだろう、

嘘から出たまことの如く、

道の向こうから戦車回収車が一輌現れた、


「おーい、第二小隊か?」

「第二小隊の指導員夏原だ!」

「連隊長から行けって言われたから来たぞ~」


こうして漸く本格的に近代的な整備が始まった、


ここからは無責任かもしれないが、

小隊についての記録が曖昧なためにはっきり語れることはない、

今回の帝国陸軍と国防警邏隊のオ号作戦は機密な部分も多いため、

詳細な情報はまだ出ていない、

一説では謎の敵への警戒心故に情報統制も厳しくなったとか、

その為、第六機甲連隊がどうなったか?

第三中隊がどうなったか?第二小隊がどうなったか?

これはまだ砂の中に埋もれているのだ、


ただ、一つだけはっきりした事がある、

その小隊の隊長はそのまま居なかったままこの戦争が終わり、

指導員が実質的な指揮を執ってたと言う、







「隊長無理をしすぎだ、だから大怪我するんだよ」

「ハハハ、こりゃ参ったな、しかしな、俺は隊長じゃないんだよ、」

「え、あ、あぁ、指導員か、」

「そう機甲指導員だよ」

「野戦病院で世話になってるその姿では説得力ねぇよ」

「ハハハ………全くだ」











おしまい



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