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正しい意味で衝撃の出会い

この作品はフィクシィンです。実際の登場人物や団体などとは一切関係ありません。

 意識を取り戻し始めたアスヒトが最初に感じたのは強い揺れだった。

 振動と言うよりも衝撃に近いその揺れは、取り戻しかけている意識を再び刈り取ろうとしている。

 自分に何が起こっているのか確認したいアスヒトであったが、目を開けて周囲の状況を確認しようにも体が言う事は利かず、目を開ける事が出来ない。

 周囲の視覚的確認は今の所あきらめておいた方が良さそうだ。と、いささか思いっきりの良すぎる判断を下すと、アスヒトは目を開かないで自分の状況を把握する方法、つまり記憶の確認作業に移った。

 細い糸をたぐり寄せるように、アスヒトの思考は自身のシナプス回路を慎重に辿った。

(あっれ、おかしいな……)

 困った事になった、と、動かぬ首を心の中でかしげる。

 記憶力には結構自信があったのだが、不思議な事に随所で記憶の欠落があったのだ。

 『自分は何者』で、『どんな人生』を送り、『どのような会社につとめ』『どんな仕事をしていた』、といった長期的な記憶は完璧なのに対して、なんで『自分が気を失っていたのか』とか『今何処に居るのか』といった短期的な記憶、特に意識を失う直前から訳2時間分の記憶がポッカリと抜け落ちているのだ。

 記憶喪失でない事は不幸中の幸いであったが、ここまで記憶が完璧に抜け落ちてる状態で、体が言う事を利かないと言うのは不安を抱かずには居られなかった。

(うわー……もしかして、僕は半分死にかけてるんじゃ無いだろうか……絶賛クモ膜下出血中とかだったらどうしよう……)

 アスヒトの脳裏には良く無い想像ばかりが錯綜するばかりであった。

(って、このまま悩んでも何の解決にならないか……)

 このまま、ほの暗い感情に突っ走ってもしょうがない。と、頭を切り替えたアスヒトは記憶のかけらを集め始めた。が、今度は考え事柄をする余裕を奪われた。

 幸運な事に体の感覚が戻ってきたのだ。ただし、アスヒトが最初に取り戻したのは痛覚だった。

 アスヒトに全身からの激痛と鈍痛が襲いかかる。

 声に出して痛みを表現しようにも声が出ないアスヒトは、心の中で絶叫した。

(痛い!痛い!イッテーーーー!なに?痛いのは生きてる証拠って言うけど、コレは、生存主張が活発すぎるって!)

 全身の関節という関節は本来曲がらない方向に曲げられた後のような鋭い痛みが奔る、背中はすり傷に塩を塗りたくったようにヒリヒリと痛む。

 そして、何よりも両頬の痛みがヒドイ。左右の頬が一定のテンポを刻みながら鋭い痛みをアスヒトの身体に刻み付ける。心無しか痛みと同時に頭も揺れている気がする。

 右。左。右。左。

 交互に首が捻れ、刺すような痛みが奔る。

 次に復活したのは嗅覚だった。

 森の緑の青々とした香りと土の匂いを濃い色のペンキで塗りつぶすように、濃密な血の匂いがする。時折、風に乗ってきたように甘い香りがアスヒトの鼻孔をくすぐる。何の匂いだろう?と頭を揺らしながら考えているアスヒトに洗ったな感覚が復活する。

 聴覚だった。

 聞こえて来るのは、森のざわめきと鳥たちのさえずり、そして……

【スパァン!—ースパァン!—ー】

 空気を入れた紙袋を叩き割るような音が響く。音に合わせて首が揺れる。

 破裂音の間の手のように人の声も聞こえる。少し癖の強い英語、それも若い女性の声だ。

「ちょっと……起きなさいって……言ってるでしょ……。お願いだからぁ……」

 心無しか涙ぐんでいるその声には、不安と焦りが色濃く滲んでいた。

 しかし、アスヒトには女性を気遣う余裕は無かった。

 先ほどから聞こえる破裂音と同調するように、左右の頬が揺れ、痛みがドンドン倍化していくからだ。

(ちょっと……すっごい痛い、ものすごっく……)

「痛いんだってばぁぁぁぁぁぁ!」

 許容を越えた痛みに、アスヒトは目を見開いて絶叫していた。絞り出した声は森の中に響く。

「……へ?」

 復活した視界に写る現状にアスヒトは間抜けな声しか出せなかった。

 それもそのはずである、仰向け寝転がっているアスヒトの腹の上に若い女性が馬乗りになっているのだから。

 女性の方も、アスヒトの突然の復活に、目を見開いて驚いている。

 よく見てみると彼女はかなりの美人だった。整った目鼻立ちと蒼穹を思われる碧眼が見る者を吸い寄せるような美しさを演出し、少し癖の強い栗毛を肩にかからない程度で切りそろているので、全体的にボーイッシュなを印象を与える。

 薄い緑色のTシャツの上に革の軽鎧をまとい、動きやすさを重視したその格好が彼女の少年っぽさをいっそう際立たせる一方で、出る所は出ていて引っ込むべき所は引っ込んでいるモデルのようなスタイルが彼女の女性らしさを引き立てる。

 絶世の美女と言っても過言ではなかった。

 アスヒトの人生の中でも、これほどの美人と直接顔を合わせる事は今まで無かったので、間抜けな一言を残して以降、彼女に見とれてしまっていた。

 ここで、アスヒトは少し不審な事に気がついた。彼女の右手が肩より上に引き上げられていて、力強く握り込まれているのだ。

 どういう事だろうと思って視線を少し下に下げてみると、彼女の左手がアスヒトのシャツの襟首を掴んで引っ張り上げているのが見えた。その先にホットパンツから覗く彼女の健康的な太ももが見えて、眼福だったのは言うまでもない。

 話を戻すと、状況だけ見れば彼女とアスヒトの間には、一方的に暴力を振るわれる側とそれに甘んじる側の立ち位置があった。

 状況を読み切れなかったアスヒトが、僕が何かしましたか?と、問おうと思い口を開いた瞬間、彼女は動いた。

「よ、よかったぁー。……何度ほっぺた叩いても起きないから……あ、あたし、君を殺しちゃったのかと思っちゃたよぉ」

 見開いた碧眼に涙をたっぷりと溜めた彼女は、「うわーん」という泣き声をあげながらアスヒトの身体を抱き寄せた。

「よかった……本当によかったよぉ……」

 あまりの急展開に状況を把握しきれていないアスヒトは、されるがままの状態だった。


こんにちは、そしてこんばんわ。シロトです。


今週分を何とか投稿できました。

今回は、イノシシから救われた後のアスヒトの目覚めとヒロインの登場です。


(打撃的な意味で)衝撃の出会いになればと思っています。


友達にキャラクターのデザインを描いてもらってたりするのですが、UPの方法が良く分からないです(笑)知ってる人教えて下さい。


さて、寒さも厳しくなるばかりですが、健康に気をつけて頑張りましょう!


引き続き、誤字脱字等のご指摘いただけるとありがたいです^^




〜コタツの電源コード何処にやったっけ?と考えながら 素人〜


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