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奏魔のクリスマスイブ

このお話はフィクションであり、実在する団体、作品、人物とは一切関係ありません

 世界を変える発明・発見という物が世の中にはある。

 例えば、火の使用。

 言葉すら持たなかった時代、我々の祖先は外敵に怯えながら眠り、夜を過ごした。

 しかし、火の使用により彼らの生活は一変する。

 外敵である狼や虎は、火を恐れ彼らの寝床に近づかなくなった。更に、寒さに耐える必要も無くなった。

 この瞬間が我々人類にとって、最初の世界の変化だった。

 そして、人々は変化を求めるようになった。

 より住み良い世界を求め、より安全な世界を求め、より快適な世界を求め、人々は手を取り合い、時に手に持つ刃で互いを傷つけつつ世界を変えていった。

 その中で沢山の世界を変える物が生まれた。

 言葉、紙、ヒッタイト鉄、剣、法、神話……

 古い物から並べていっても、現代でも人々の生活に息づいている物ばかりだ。

 最近では、エンジン、自動車、飛行機、テレビ、原子力……

 それらは全て、より高度な技術と知識を必要とし、世界中のエンジニアと科学者の英知の結晶であった。

 これらの世界を変える物たちは、人々の歴史に華やかな彩りと深い傷を残しながらそこに君臨し続ける。おそらく、世界をリセットしても、これらの物はそこに君臨し続ける。

 そんな、世界を変えた物の参列に新たな物が加えられようとしている。

 それは、体内常駐型ナノマシン『メイガス』だ。

 『メイガス』が発表された2032年の時点で人間の体内にナノマシンを入れて病気の治療や健康維持を行う事は至って普通で、このナノマシンが発表された当初、一般の人々の認識は「また、新しいナノマシンが出たのかー」程度であった。

 『メイガス』が人々の度肝を抜いたのは販売が始まってから6カ月後、2032年12月24日、クリスマスイブの事である。

 『メイガス』の販売元である『新田製作所』の技術研究所のメンバー13人が、池袋の西口公園をジャックした。正しく説明するならば、彼らを乗せた移動式のステージが西口公園前の公道を占拠した。

 コレだけでも翌日の新聞の一角程度は賑わせそうではある。

 突然、西口公園に乗り付けた移動式ステージに立っていたのは白衣の男女だった。

 どちらも20代前半の若手社員で、二人とも美麗な顔に緊張を貼付け、ステージの上で膝を震わせていた。

 この震えが、突然40人以上のカップルの前に放り出されて緊張しているからなのか、スーツの上から白衣を羽織っただけの格好なので12月の寒さに耐えきれなかったからなのかは本人たち以外は知る由もない。

 そんな男女は衆目の視線を浴びながら、無言でステージ上で背中合わせになると、中央から両サイドへ分かれてゆく。男性は左へ。女性は右へ。

 1歩。

 同じタイミングで足跡が響く。

 2歩。

 道行く人々も足を止め、男女の行方を目で追った。

 3歩。

 西部劇のガンマンが決闘するように、男女が相手の方を振り向き、それぞれが両手の手を前に突き出す。

 次の瞬間、世界が変わった。

 男性の手から炸裂音と共に蒼い雷撃が、女性の手のひらから煌煌と輝く火球がステージの中央に向かって奔る。

 交錯する雷撃と火球。轟音を響かせ、白い光の固まりが生まれた。

 一拍の後、光の固まりは消えて、静寂が西口公園を包む。

 人々は、目の前で起こった事が余りにも非現実的だった為か、口をあんぐりと開けて惚けている。

 惚ける人々を尻目に、男女はステージの外に向かってを走り出した。

 それぞれの足がステージの淵を捉え、踏み込み、そしてステージの外に飛び出した。

 男女が踏み込んだ足が溜め込んだ運動エネルギーは『跳ぶ』為には使われなかった。

 男女が足の裏からステージに送り出した力のベクトルは、重力に引かれて放物線を描く事無く、斜め上を向き続けた。

 男女は文字通り『飛』んでいた。

 重力の枷を感じさせない滑らかな飛行で人々の頭上を飛び越える。

 ここで初めて歓声が沸いた。人々の理解が少しづつ現実に追いついてきたのだ。自分達が『魔法』を見て居るのだと、未知の技術目撃者であると気づいたのだろう。

 歓声の波を従えながら男女は空を自由に疾走する。

 男女が西口公園を一周したその時、移動式ステージから音楽が流れる。

 エレクトリカルパレードの軽快なリズムに合わせて、男女の手から色取り取りの光の玉が放たれる。光の玉はクリスマスイブらしく空をイルミネーションで飾り、クリスマスツリーやハート型、『Merry Christmas』の文字等、様々なモノを描き出した。

 音楽の停止とともにそれらが全て消え、これまで以上の歓声が起こった。

「皆さん、我々の演出は楽しんでいただけたでしょうか?」

 突然の呼びかけであった。

 空を見上げていた人々が声のする方、ステージの壇上を見ると、一人の痩身の老人が立っていた。

 サンタクロースの格好をした老人は、にこやかな笑みのまま言葉を続けた。

「皆さん、メリークリスマス!……と言うのは少し気が早っかったかも知れませんね。私は新田製作所という会社で社長をしている、新田宗雄あらた むねおと言います」

 新田老人は会釈し、ニコニコと人々に笑顔を振りまく。

「普段は医療機器とか産業用ロボットなんかを作ってる工場の親父ですが、今日は少しだけオシャレをしてみました。しかし、自分でも似合って無いと感じている次第です。さて、今、皆さんにお見せした不思議な現象は楽しんでもらえましたか?」

 「うぉー」とか「イエーイ」とかという歓声と割れんばかりの拍手が老人に浴びせられた。

「一応申し上げておきますが、東京都に許可を取ってやってるので、皆さんはこんな風にトラックなんかを乗り付けるなんて真似はしないで下さいね。……おっと、少し話がそれてしまいました。ここからが私のと言うより弊社の本題なのですが、皆さんが見た不思議な現象の事です。『魔法』だと思った方、『超能力』と思った方、色々いらっしゃると思います。しかし、今我々がお見せしたのは、『魔法』でも『超能力』ありません。洗練された『技術』、テクノロジーの結晶です。信じられないかもしれませんが、先ほどの現象は弊社の社員の体内にあるナノマシン『メイガス』による物です。メイガスの演算能力が現実世界の構造を書き換え、我々の目には魔法にしか見えない現象を起こします。我々はこの技術を『現実干渉』と名付けました—」

 人類史的には『奏魔のクリスマスイブ』と呼ばれる事になったこの摩訶不思議な出来事は、翌日の朝刊全ての一面を飾り、世界を震撼させた。

 人類に取って新たな時代の到来であった

こんにちは、上城素人かみしろ しろとです。

初投稿なので、色々とサイトの使い方が良く分かっていません(笑)

この後アップできたら自分でも確認してみて、変な所があったら修正してみようと思います。

閑話休題

さて、本編ですが、まだ全然書けてません。自分を追い込んで自転車操業的にしないと書ききれない気がしたので、とりあえずアップしました。

週に一回ぐらいのペースでアップできるように頑張っていこうと思います。

序章の序章であらすじにも到達してませんが、ぼんやりと見守っていただけるとありがたいです。


また、誤植のご指摘やアドバイスなど頂けると嬉しいです。

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