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白球を追え  作者: クロ
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第4章

「チクショウ、これは一体どういう状況だよ……」

「文句言ってないで手を動かしなさいよ」

平太は一輝に拉致られてグラウンドに連れてこられ、マネージャーの仕事であるユニホームの洗濯を押し付けられていた。横には細身でショートボブ、猫のような吊り眼が印象的な見た目が中学生くらいの高校生『永倉佳奈』と長身で落ち着いた雰囲気をもち、学内一の美人と評判の『永倉美佳』が同じようにマネージャーの仕事であるスポーツドリンクを作りをしている。



「いや、オレが言いたいのは何で部員でもマネージャーでもないオレが仕事を押し付けられて--ムム……ッ! この……ッ! 汚れが……ッ! なかなか……ッ! こっの泥の分際で……ッ!」

「結構板についてるじゃない」

「洗濯は力仕事だから。藤堂くんが手伝ってくれて助かるわ」

「任せろ! 洗って洗って洗いまくってやるぜっ! って痛あっ! コラ永倉妹! 何で蹴るんだよ!?」

「うっさい! 美佳姉に色目使うな!」

「オレがいつ色目使ったよ!?」

「今さっき使ってたじゃないっ!」

「あらあら。2人共仲が良いわね」

「「良くないっ!!」」


仕事をしながら子供の様な喧嘩をする平太と佳奈。端から見たら微笑ましいが、当事者同士は相当険悪だ。


「っていうかお前部外者だろ!? 何でここにいるんだよ!?」

「うっさい、バーカ! そんなのアタシの勝手でしょうが!」

「2人共すっかり打ち解けたみたいだな」

「「打ち解けてないっ!!」」


休憩時間になり一輝がのんびりとした様子で近づいてきて2人の仲に対する率直な感想を述べるとまたしても2人共声を揃えて否定する。

が、やっぱり端から見たら平太と佳奈は息がピッタリだ。



「で、テメーなんでオレをここまで拉致って来やがった?」

「勿論あなたを野球部に勧誘する為ですよ」


平太はため息をついた後一輝の真意を問いただすと一輝は悪びれもせずにあっさり答えた。

一輝が自分の目的を簡単に白状した事に面食らって目を丸くしたが、直ぐに眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔になる。


「じゃあハッキリと言ってやる。お断りだ!」

「なぜ?」

「お前には関係ない」


平太は努めて冷静に、そして静かに突き放す。あと一歩で一輝は平太の逆鱗に触れる。しかし一輝はそこで話を急激に方向転換させた。


「勝負しませんか?」

「はあ?」

「3打席勝負。ヒット性の当たりがでたらあなたの勝ち。打てなければ俺の勝ち」

「何で勝負するなんて事になるんだよ!?」

「いや、このまま話し合いを続けても平行線になりそうだからそれならここで白黒つけた方がいいかなー? なんて思ったんですけど?」

「断る」

「なんでよ?」


隣で平太と一輝のやりとりを見ていた佳奈が聞く。


「オレが勝負を受けるメリットがあんのかよ?」

「メリットならありるわよ」

「?」



美佳の言う平太のメリットがわからず、平太の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。


「一輝が負けたら--二度とあなたを勧誘しないわ。その条件でどうかしら?」

「ちょ……ッ!? 美佳姉!?」

「…………」


佳奈は美佳の出した条件に慌てて抗議し、平太は眼を閉じて彼女の提示した条件を吟味する。

勝負に乗って勝利してしまえばこの面倒な状況をさっさと終わらせる事が出来る。しかし平太の中では大きな葛藤がある。平太の中では高校時代の『あの出来事』はカサフタになってすらいない惨い生傷のままだ。平太の中では高校時代の『あの出来事』はカサフタになってすらいない惨い生傷のままだ。

平太にとって『野球をやる』という行為は傷口に塩を塗り込む事と同意義なのだ。平太は考えた。目を閉じて、腕を組んで、首を捻り考えに考え抜いた。

そして、


「いいだろう。勝負を受けてやる」

「ありがとうございます! それじゃあみんな! 守備についてくれ!」

『『『おおっ!』』』


周りで様子を見ていた野球部員は一斉に散り守備についた。平太は部の備品であるバットを持って選んでいる。そして少し重めのトップバランスのバットを持って振った。

扱い辛い事で有名なトップバランスを軽々と使いこなす時点で平太の打者として高い技術がいまだに健在だという事がよくわかる。

ゆっくりと深呼吸してからバッターボックスに入る。

そして--勝負が始まった。

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