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白球を追え  作者: クロ
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第2章

白球のほうは久しぶりの投稿になります。

読んでくださる方がいるかどうかは分かりませんが、楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ!



平太は悪い事は重なる物だと今日ほど実感した事はない。

斎藤一輝と自分の野球への未練。この二つにイライラしたまま家に着き、半ば八つ当たりのように乱暴に靴を脱ぎ散らかした。ふと靴箱に目をやると見覚えのあるトレーニングシューズが収まっている。


「ただいま。誰か来てるのか?」

「あら、お帰り。久しぶりに司君が来てるわよ。あんたの部屋に通しておいたから」

「司が?」


沖田司。平太の幼馴染で元チームメイト。走攻守すべてにおいて完璧な天才プレイヤー。

平太は眉間に皺を寄せながら自分の部屋に向かい、ドアを開いた。


「やあ、久しぶりだね平太」


相変わらずの穏やかな物腰に平太は少し毒気を抜かれた。


「ああ。二か月ぶりくらいか? この前喧嘩したきりになってたからな。どうしたんだ? 今度は友美・・と喧嘩でもしたのか?」


茶化すような口調だったが平太の心がチクリと嫉妬で痛む。

だめだ。嫉妬するな……。

平太は必死に自分の感情を抑えつける。


「友美とは相変わらずだよ」

「そっか。リア充め、爆発しちまえ」

「爆発って……ひどいな。っと今日はバカ話をする為に来たわけじゃないんだ。平太、この間の話の続きを――「何度言われても!」


司の言葉を平太は大声で遮った。そして一拍置いて静かな口調で言葉を繋げる。


「答えは同じだ。野球をやるつもりはない」


静かな口調が逆に確固たる意志を感じさせる

それでも尚司は食い下がる。


「平太! 君の実力なら県内のどこの名門でもレギュラーになれるだろ! 何故それほどの実力を持ちながら野球を捨てる事が出来る!? 僕は知っているよ! 君が今までどれだけ努力してきたかも! どれほど野球が好きかも! だから押し入れに入っている埃を被った野球道具を未だに捨てられずにいる!」


平太の中で必死に抑えつけていたどす黒く汚い嫉妬心を抑え込んだ器に蓋が開きそうになる。

黙れ! お前に何がわかる……! オレの欲しかった物をすべて持ってるお前に何がわかる! 野球の才能や信頼……友美でさえもお前を選んだ……! すべて持ってるお前にオレの惨めさなんてわかる訳がない!


「もう一度僕と一緒に野球をしよう? 平太が一緒にしてくれるなら……僕は……!」

「……やらない」

「なんでだ!? 何でなんだ!? 頼むから……理由を教えてくれ……!」


司は平太の胸倉を掴んで問い詰めた。

司は知らない。平太が野球を捨てた訳を……。ある日突然自分のライバルは野球への熱意を失った。その訳を……司は知らない。


――オレがどれだけ努力しても、活躍しても沖田司のオマケ扱い。それでもあきらめずに追いかけようとするオレを周りは身の程知らずと笑う。

それでも……追いつこうとした結果があれだ。もう……、勘弁してくれ……。


「飽きちまったんだよ」

「何……だって……?」


平太の発した言葉に司は目を見開いた。

彼の知っている平太ならそんな事は絶対言わない。そんな……今までの自分のすべてを否定するような言葉は言わない。


「聞こえなかったのかよ!? 飽きたっていってんだ! 毎日毎日毎日毎日! 練習で泥だらけになってまで、痛くても辛くても我慢して! そんなもん真剣にやるだけ無駄だろうが! くだらねえっ! 心底くだらねえんだよっ!」


次の瞬間司の拳が平太の頬を直撃し、平太の体が後ろに吹っ飛んだ。

司は唇を震わせ平太を見下ろす。その瞳には強い侮蔑の色があった。


「よくわかった。君は最低だ! 見損なったよ!」


そう言い捨て司は去って行った。平太は殴られて切れた唇から血を拭った。


「最低か……。そんな事……オレだってわかってるんだよ……」


それでも……オレは……。


その夜平太は泣きたいのに涙が出てこなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「絶対あの人そうだって」


同じ頃斎藤一輝は野球部のマネージャーであり、彼の彼女である永倉美佳とその妹の佳奈と一緒に一輝の家で話し合っていた。


「あれがあなたの憧れの人? あの人学校では知らない人がいなくらいのグータラ学生よ?」


と、美佳は一輝に言葉を返す。


「アンタバカじゃないの? そんな使えないの引き込んでどうする気よ?」


と、佳奈も続く。


「あの人がいたから俺は野球に対して真剣になれたんだ。目標を見失って、フラフラしていた俺は目を覚ます事が出来たんだ。佳奈だって見てたならわかるだろ? 今野球部に必要なのはあの人の勝利への渇望と執念なんだ!」


司は真剣な面持ちで決して譲らない。それを見て美佳が根負けしたように溜息をついた。


「わかったわ。司がそこまで言うのなら協力するわ」

「え!? ちょっと美佳姉!?」

「佳奈も協力してくれるでしょ?」


ジッと佳奈を見つめる美佳。そして佳奈は折れた。彼女は姉の美佳に非常に弱いのだ。


「わかったわよ! 協力すればいいんでしょ! やってやろうじゃない!」

「ありがとう。それじゃあ明日から『藤堂平太さんを野球部に引き込んでみんなでハッピー作戦』スタート!」

「あんたネーミングセンス皆無ね……」

「はいそこシャラーップ!」


進む者、進む事をやめた者、何かを企む者達……。

それぞれの思惑が絡み合い、夜は更けていく……。


先ほど大きな地震がありましたね。

とりあえず僕のいる地域はあまり揺れませんでしたから無事です。

と、報告です。

大きく揺れた地域に住んでる方は気をつけてください。


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