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序章
――高校野球地区予選3回戦、9回裏1死ランナー満塁……
得点は3対2、カウントは2ストライク、3ボール……
一打逆転のピンチに一塁を守る少年はこの上なく緊張し、集中していた……。
彼の頭の中は勝利への渇望で一杯だった。
――次で決まる……! 勝ってあいつに追いつくんだ……!
少年はそう思いピッチャーが投げた瞬間より集中力を高めた。
キィーン!
バットのボールが弾かれる音がグラウンドに木霊する……。
バットに弾かれた打球は一、二塁間に鋭く放たれる。
少年はその打球に飛びつき何とか捌いた。
――ゲッツ―コース! これで終わりだぁ!
少年はキャッチャーの正面に向かってバックホームの球を投げた。
しかし次の瞬間……少年は自らの眼を疑った……!
少年の投げた球をキャッチャーは捕ろうともせず、見逃したのだ。
バックホームの球が後のフェンスに当たり、跳ね返りしばらく転がった後止まった……。
そして逆転のランナーがホームに帰り、少年のチームは敗退した……。
少年は信じていた……。
仲間もみんな勝ちたいのだと……。