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24/30

22話

本日21:00ごろに新作

『裏側から観るダンジョン配信は最高に面白い!』

を投稿予定です。

そちらもよければ是非。


 王都の北東、ゆるやかな丘陵を越えた先に、その遺跡はあった。


 大規模ではない。崩れた石柱が半ば地面に埋まり、円形の基壇は雑草に覆われている。近づかなければ、ただの苔むした岩にしか見えない。


「とんでもなく地味だな」


 ダリオが肩をすくめる。


「王都の近くとは思えねぇ」

「だからこそ、これまで見つからなかったんだろう。規模は小さいが、価値が無いとは限らない」


 アレンは基壇の縁にしゃがみ込み、風化した紋様を指でなぞった。


 オレはその間に、石柱のてっぺんへ軽く跳び乗る。


 ざらりとした感触。苔の匂い。土の下に眠る冷たい石の匂い。

 尻尾を揺らしながら、ぐるりと見渡す。


 ……遺跡!なんかカッケーな


 石柱から石柱へと軽やかに飛び移り、基壇中央へ。半ば埋もれた石板の縁を前足でちょいちょい叩く。乾いた音が返る。


「今日は軽く見るだけだ」

 

 アレンが続けて言う。


「構造確認、危険の有無、以上」

「昼前には戻るか?アレンがそう言う時は“軽く”で済んだ試しがないけどな」


 ダリオが笑う。アレンが苦笑いしつつ答える。

 

「そのつもりだ」


 オレは石板の隙間に鼻を突っ込んでみた。すると、フシュンッ。すぐにくしゃみが出た。ほこりだらけだ。


「入口はこっちだ」


 アレンが草を払うと、地下へ続く石段が現れた。


 冷たい空気がふわりと吹き上がる。


 ……面白そうだ。


 オレの瞳が輝くのが分かる。オレは真っ先に飛び込もうとして、首根っこを掴まれた。


「先走るな」

「にゃ」


 解放されると同時に、すばやく階段を駆け下りる。石段はひんやりしている。


 壁には幾何学的な紋様が刻まれていた。円と三角、線が複雑に絡み合っている。所々に小さな魔石が埋め込まれているが、多くは沈黙している。


 一つだけ、かすかに光を放つものを見つける。


 ぴょん、と跳びつく。


「落ちるぞ」


 アレンにまた襟を掴まれる。


 くそう。


「これが、まだ生きてるのか」


 アレンはオレが飛びつこうとしていた魔石に触れ、呟く。


 ダリオが魔石を覗き込む。


「千年物だろ?」

「封印構造が優秀だ。外界への流出を抑えているのだろう」


 アレンの声は淡々としているが、目は少しだけ楽しそうだ。


 通路の途中、小さな部屋がいくつかあった。


 一つ目は空。


 オレは部屋の隅で転がっている小さな金属片を見つけ、前足で転がす。ころころと転がる。追いかける。壁に当たって止まる。もう一度。


「おい、それ貴重品だったらどうすんだ」


 ダリオが笑う。


「腐食が進んでいる。おそらく問題ない」


 アレンの声にも笑いが混じっている。


 二つ目の部屋には崩れた棚があった。粉になった何かが床に広がっている。


 オレは慎重に足を置き、くん、と匂いを嗅ぐ。

 紙だ。昔の紙。


 くしゃみが出る。二回。


「書庫だな」


 アレンがしゃがむ。


「紙は朽ちたが、金属枠は残っている」

「盗掘の跡はねぇな」


 ダリオが壁を叩く。


「ほんとに誰も気づいてなかったのかよ」


 オレは棚の上に跳び乗る。

 高い場所。視界が広がる。


 ……光の流れは均等だ。穏やかに動いている。


 三つ目の小部屋で、オレは壁の窪みに気づいた。中に溝が刻まれている。


 前足を突っ込んでみる。


「ダメだ」

 

 アレンがすぐ引き抜いた。


「罠ではないな」


 アレンがオレの前足を手に取って、ホッとしたように言う。


(ごめん)


「魔石の着脱機構か」

「予備炉心か?」

「その可能性が高い」


 ダリオが腕を組む。


「やっぱ管理施設か。なら防衛機構もあるかもなー」


 防衛。


 オレの耳がぴくりと動く。


 通路の奥へ進むと、空気が変わった。

 冷たいが、澄んでいる。先程までよりほこりが少ない。


 オレは床に腹ばいになり、溝をじっと見る。細い線が台座のある奥へと続いている。ほんのわずかだが、流れている。


「封じが効いている」


 アレンが言う。


「内部機構の保存目的だなー」


 最後の石扉は半ば開いていた。


 重い音を立てて押し開く。


 円形の部屋。

 中央に台座。

 床には放射状の溝。


 そして――

 そこに、立っていた。


 石と金属で構成された人型。二メートルほど。肩幅は広く、腕は太い。関節は球状で滑らかに嵌合している。


 胸部の円形の窪み。その奥に、大きな魔石。


 淡い蒼光。


 全身を細い光が巡っている。


 オレは無意識に尻尾を膨らませた。


「ひゅー!めっずらしいな」


 ダリオが口笛を吹く。


「まだ作動するゴーレムがあるとは」


 アレンの声がわずかに低くなる。


 そんなにすごいのか?


 じっと観察してみる。……さっき怒られたから、近づきはしないぞ。


 胸の魔石から流れる光。美しい流れだ。


 次の瞬間、ゴーレムの目の部分に、蒼い光が灯った。


 ギ、と石が擦れる音。


 オレは反射的に後ろへ跳ぶ。


 胸の魔石が強く脈打つ。床の溝が一斉に光る。


 光が脚へ、腕へ、頭部へ。


 目覚める。


「……起きるぞ」


 ダリオが低く言う。


 ゴーレムがゆっくりと一歩踏み出す。

 床が軋む。


 侵入者、と判断する冷たい気配。


「できれば傷をつけずに確保したいな」


 アレンの目は鋭い。


「古代魔術文明の研究してる奴らが喜びそうだ」

 

 ダリオが笑う。


「クロ、下がってろ」


(言われなくても!)


 オレは壁際へ走り、柱の上に飛び乗る。

 アレンたちの邪魔にならない高い場所。


 ゴーレムの両腕が持ち上がり、関節が滑らかに回転する。


 胸の魔石から、両腕へ光が集中する。


 空気が震える。


 ……マナが集まっている。


 ゴーレムが踏み込み、


 巨大な拳を振りかぶった。


 唸りを上げる石の塊。


 次の瞬間――


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