十八章
一八章
朝からずっと心煩意乱になっているレオンは、なんとか平常心を保とうと阿片入りの巻煙草を吸いながら、重い靴で居間を歩き廻っている。そんな主人にアンはそっと珈琲を差し出し、椅子に腰を掛けて尋ねた。「旦那さま、いつもより落ち着きがありませんが、一体どうされたのですか?」
かれは立ち止まり、巻煙草を吸ってから言った。「カッスルが来るのを待っているのだよ。これほどまでに、奴が恋しいと思った日はないね」
「何かお尋ねしたいことでもあるのですか?」
「昨日、突然ヘンリーがやってきてカッスルからの伝言を受け取ったのだよ。【労働階級者である色のない髪、紅い瞳と青い瞳の双子に用心して下さい】とな」
「まだ他に一族がいらっしゃるのですか?」と、驚きのあまりに声高に言った。
かれは、笑いながら「昨日の俺と全く同じことを言ってるぞ」と言った。
「何をおっしゃるのですか! きっと、ベティやコニーも同じことを言いますよ! しかし、用心する必要があると言うことは危険な人物なのでしょうか?」
「それを早く聞き出したくて苛立っているところだ」
「そうでしたか。それは、私も早く聞き出したくなりますね。毎回来られてるとは言え、ロンドンからカンタベリーまで約七十マイルと距離がありますので大目に見てあげて下さい」
「努力はするよ」レオンは巻煙草の火を消して、ゆっくりと味わいように温かな珈琲を啜った。飲み干した珈琲のカップをそっとテーブルに置くと、診察室へ向かう。レオンは布で覆った一部の鏡を重々しげな表情でしばらく見つめた。そして、布に手を伸ばし、それをバサっと取った。同様に他の鏡の布を次々と取っていき、最後に引き出しからいつの日か取り出し、使わずに閉まったゼンマイの巻き鍵と油を再び取り出して立派な振り子の古時計まで歩む。
以前は悲哀の情により手は大きく震えていたが、今回は非常に慣れた手つきでゼンマイがある扉を開き、丁寧に油を差して、巻鍵を差し込んで数回回す。次に現時刻に合わせて針を回すと、屋敷全体に古時計の音が大きく鳴り響き、ハワード家に長き喪が明けたことを告げた。埃が舞う薄暗い部屋に新鮮な空気を取り入れようと窓を全開にし、全体をしばらく見渡した後、二階の亡き両親の部屋へ向かった。
静かに扉を開けて、両親との無数の思い出が秘められた部屋全体をしばらく眺めてから布で覆った鏡を勢いよく取る。すると、長年積もった埃が煙幕のように舞い、かれは大きく咳き込みながら慌てて全ての窓を開けた。埃で汚染された肺に新鮮な空気を取り入れながら呼吸を整えてる。すると、ノックが三回鳴った。それに応えるように「入れ」と声高に言うと、三人のメイドが部屋へと次々と立ち入る。三人のメイドのうちすぐにアンが唇を動かした。
「旦那さま、今までお辛かったですね」
レオンは、目を逸らし素っ気なく「そうだな」と答えた。そんなかれにベディがこう言う「ヴィクトリア女王より先に喪を開けることが出来、安心しました。私は、一生このままかと思いましたよ」
そんな心無いベティの発言に対し、主人を気遣うかのようにコニーは穏やかな言葉を掛ける。「相変わらず、ベティは意地悪ですね。旦那さま、どうか気にしないで下さいね」
レオンは真っ直ぐな眼で言う。「気にするも何も慣れているから安心したまえ。それより、長い間だが、心配掛けて申し訳なかった――エリスと婚約をしたことを理由に両親を安心させたく、いい加減に前へ進まなくてはならないと思い、ようやく死を受け容れることにしたのだよ」
穏やかな微笑を浮かべたアンが言った。「そうでしたか――お二人もきっと喜んでらっしゃると思います。それに、ご婚約をされたのでハワード家も安泰だとご安心されてると思いますし、リアム様も生きていたらきっとイアンさんと一緒に大騒ぎしていたでしょうね――それと、こちらのお部屋のお掃除はいかがされますか?」かれは少し迷ったあとに言った。「すぐに掃除してくれとは言わない。結婚するまでの間に綺麗にしてくれれば構わないさ」メイド三人は「かしこまりました」と頭を下げた。すると、メイドたちとの穏やかな時間を遮るかのように屋敷全体に診察室からノック音が大きく鳴り響く。かれは、急いで部屋を出て、階段を降り、診察室へ入る。慌てて、扉を開けるとそこには見慣れた細身の男アーネスト・オールドカッスルが立っていた。右手には資料を持ちながら、清々しく挨拶をするもレオンを苛立たせた。
「何度も言っているが、診察室からではなく、玄関からノックしてくれないか? これは患者専用の扉なのだよ」
「お断り致します。玄関からノックすればあなたではなくメイドが出て来るので不便で仕方がありません。一方、診察室からノックすればあなたが出てくるので要件もすぐにお伝えできます。ですので、今後ともこちらを使わせて頂きます。そして、これが色のない髪の者たちの資料です」やや分厚い紙束をかれに渡し、探偵はすぐにシガレットケースとマッチケースを取り出して、ややふっくらとした唇に阿片入りの巻煙草を咥え、マッチを取り出して、それに火を着け、青白い煙を燻らせる。あまりに身勝手な探偵に行き場のない憤りを抑えながら、診察台に灰皿を置いて、レオンは椅子にどっかりと腰を掛け、資料を読み始める。そこには、イアンがグレイ家の嫡男であることと歳の離れた妹がいること、そして、その従兄弟にあたるテューダー・リジーと言う仕立て屋を営む色のない髪の双子ルーカス・テューダーとその妹ルーナ・テューダーについて細かく書かれていた。レオンは眉を顰めて言った。「やはり、イアンはグレイ家の嫡男だったのか。それに、歳の離れた妹がいたとは意外だな。これまた驚きだがイアンと妹には従兄弟に当たる仕立て屋の双子だがおり、ラファエル卿の亡き姉の子供で兄ルーカスは自身の血を毛嫌ってるとは対照的に妹は自身の血を誇りに思い、己の美貌に自信を持っているのか――なんとも皮肉な話だ」
「勿論、双子の似顔絵もありますよ。ご覧になりますか?」と、鞄の中から丁寧に似顔絵を取り出して、かれに渡した。二人を見比べると奇妙なほど全く似ていない双子だった。兄ルーカスは面長で鼻が高く、眼は深く窪んでいて、細く平行な眉に薄い唇、そして、どこか儚げな雰囲気が漂っていた――一方、妹ルーナ嬢は顔は小さく丸く、眉毛は吊り上がっており、アーモンド型の眼をしている。唇は薄いが大きく派手な口紅が映える形をしており、儚げな兄よりも己の美に自信を満ち溢れている表情をしていた。レオンは似顔絵を見て、こう述べた。「ただでさえ、珍しい双子なのにこうも似てないとはもはや奇跡に等しい……しかし、なぜ二人は労働階級者なのだ?」
カッスルは、甘美なる毒を肺に取り込んでから、妖しい榛色の瞳を光らせて語った。「卿はあまり語らなかったのですが、双子の母の名前はジェーン・グレイ。かつては、卿の姉でした――ジェーン嬢は顔立ちは大変美しいものの生まれつき、一族では忌々しいとされる灰色の髪を持ち、この世に生を授けました。一族からは酷い扱いを受けていたそうです。やがて、ジェーン嬢はグレイ家から逃げ出すかのように仕立て屋の男と駆け落ちをし、愛し合った故、双子を授けました。が、まるで彼女を呪うのように、愛しき赤子は色のない髪と深紅と深い海の瞳を持ち、この世に舞い降りたのです。ジェーン嬢は深く、深く絶望をしたそうです。きっと、愛しき我が子がエレファントマンのように見世物になる或いは人として全く尊厳のない化物として見られるのを恐れていたのでしょう。ですが、夫はそんな彼女とは対照的にこの世に呪いなど存在しないと激励しながら、夫婦で双子を育てたのだとか。その後、生計を立てる為、母子共々服飾に大きく携わる工場で働きながらも、双子は父の仕事の手伝いをすると言った過酷ながらも平穏な生活を送っていたのだとか……しかし、数年後、夫を突然病で亡くし、心弱きジェーン嬢はその数ヶ月後に夫の後を追うように双子を置いて自ら命を絶ったのです。なかなかに悲劇的な人生を送られておりますが、幸い双子には手に職を身に付けていたので、まだ十代と言う若さながらもテューダー・リジーをなんとか持ち直したようですよ。すっかり努力の甲斐もあり、今ではすっかり上流階級御用達の仕立て屋になりましたがね」
レオンは、やれやれとけだるそうに「唯一、まともだったであろう姉を自害で失い、ウリエルを含む気狂いな一族に囲まれてるラファエル卿が憐れに感じるよ――それで、双子だが何故注意しなければならないのだ?」
「それは、ルーナ嬢がお美しいからですよ」
かれは、まるで探偵の言葉が理解できなかったのか、薄い唇を半開きにして何か言いたそうにしていた。が、言葉は出てこなかった。
「あなたが間抜けな魚のように口をパクパクとさせるのも理解できます。真相を求めるのならばエリス嬢を呼んで来て下さい。その方が話は柔軟に進むでしょう」かれは分かったと言い、一度診察室を出て速やかに書斎室へ向かった。そこには、読書中の愛しい人の名を優しい声で呼ぶとエリスは、振り向き花開くように微笑を泛べた。レオンも思わず、微笑を泛かべて愛しい人の隣に腰掛ける。「エリス。読書の途中で申し訳ないが、診察室に来てくれないだろうか? カッスルが君に話があるらしい」
「私に話って何かしら?」
「さあな、あまり良い話だけじゃないことだけは伝えておくよ」
エリスは絵本に栞を挟み、静かに閉ざす。しかし、指先が本の角を白く握りしめていた。椅子から立ち上がり、不安の影が少女の顔に現れる。かれはすぐに「大丈夫だ」と優しい声音で言う。エリスは微笑を泛べながら頷き、二人はカッスルが待つ診察室へ向かった。
診察室に入ると、探偵は二本目の巻煙草を吸っていた。レオンはため息を洩らし、「カッスル、人に言えた義理ではないがあまり吸いすぎるな、娯楽程度に吸いたまえ」すると、カッスルは驚きで眼を見張った。
「興味深いことを言うのですね」
「俺も巻煙草を吸っている身だからこそ言うが、お前は吸い過ぎだ」
「心配はご無用です。一時的な快楽に溺れているだけですよ。少なくとも、阿片は幾人の女性を抱いたような快楽が長々と続くヘロインより愛らしいと私は思いますがね」
「それは同感だ。確かにヘロインは危険だ――それより、下世話な話はここで終わりにしよう。ご指名の方をお呼びしたぞ」
「ありがとうございます。エリス嬢、ご無沙汰しております」カッスルは微笑を泛かべて礼儀正しく挨拶をした。
しかし、エリスは強張っていた。鼻につく薬品の香りの数々と窮屈で洒落気のない空間も影響しているが、それだけではない。かつてロンドンで変装していた際、彼に正体を見破られ、脅されもしたからだ――その時の恐ろしさが脳裡に蘇り、少女は過度な緊張と恐怖に支配される。少し震えた声で尋ねる。
「カッスルさんですよね? 私に、一体何のご用でしょうか?」
カッスルは、やや怯えた様子のエリスに気を留めることなく、さっと例の女の似顔絵差し出し、「この方に見覚えはありませんか?」と訊いた。すると、少女は声高に「この人はとても怖い人だったわ! 初めは慣れない街で道に迷った私に対してとても親切にしてくれたけど、この人と眼が合った途端、まるで人が変わったかのようにしばらく私の眼をじっと見つめたあと、「まるでアメジストのように美しいわ」と囁いて、私を腕を掴んで強引に何処かへ連れて行こうと、とても強い力で引っ張ったの! 幸い、子供達とこの人がぶつかって腕を振り解くことが出来たから必死で逃げたことをよく覚えているわ」
「それは不幸中の幸いだな――しかし、アメジストのように美しいって瞳のことを言っているのか?」とレオン。
「それ以外、私は考えられませんね。しかし、何故彼女がエリス嬢を何処かに連れて行こうとしたって行為が気になりますね」探偵は顎に手を添え、思考を巡らせ始める。グレイ家の人間の特徴は病的に美に執着しており、そして、美しい物を愛で収集癖があるとのことだ。ラファエル卿曰く、主に、宝石、絵画、人形、服飾品、調度品など様々なものを好んで集める。ルーナ・テューダーも美しい物を愛で収集する者ならば、世にも珍しい美しい菫色の瞳に魅入られ、愚かにも無計画にエリス嬢を誘拐しようとしたのかもしれない。あくまでも、推測に過ぎぬが労働階級者であるテューダーの姓を名乗ろうが、十九世紀のハプスブルク家と呼ばれるグレイ家の血を引く者だ。恐らく、エリスを人ではなく、人形あるいは生きたトルソーとして紅き眼に映ったのであろう。それが、事実であるならば、一部の人間を除き、実に気狂いな青い血の一族だ。ルーナがルーニにならないことを願うばかりだ。
すると、エリスは例の女の似顔絵を手に取り、それをまじまじと見つめてこう述べた。「この人ルーナ・テューダーって言うのね。こうしてみるとお人形のように綺麗な人ね。私の姉二人も人間性はともかく容姿端麗のみが取り柄だったわ。この人はそうでなければ良いけど……」
「君も言うようになったな」かれが笑いながら言う。
「笑いごとではないわ! 本当のことですもの! 今は亡きお父様のように使用人を痛ぶることに喜びを覚えるような姉たちだったもの――ポリーのことも酷く罵っていたから肉親とは言えど二度と関わりたくないわ」
「ここにいる以上関わることはないだろう? 安心しだえ――それより、ルーカスと言う男だがどんな男だ。そして、何故髪を伸ばしているのだ?」
「やれやれ、私にあなた方の甘い一時をお見せるするのかと思えば、次は質問ですか。お忙しいのですね――さて、ルーカスと言う男ですが、耳と眼が悪く、非常に常識的で自身と白い髪について詮索されるのを嫌っており、グレイ家の一族であることを強く拒んでおりました。恐らく、母の生い立ちをご存知なのでしょう。それと、彼が髪を伸ばしているのは貴重な白い髪を高値で買い取ろうとする者がいる為、妹ルーナの代わりに伸ばし、ある程度伸ばし切ったところで売買しているそうです。妹の髪を売ってしまえば、彼女は女性としての尊厳が損なわれますからね。ああ、実に美しい兄妹愛ですよ」
少女は悲痛な顔を泛べながら、自身の短な髪を細くしなやかな指で撫でた。そんなイチイの花のような深い悲しみを小さな胸に秘める少女を癒そうとレオンは言った。「エリス、君は今まで実の父親に尊厳を長い期間奪われた側なんだ。君は既に自由であり、アンたちのようになるには時間が解決をしてくれる。君はどんな姿をしていようが女性らしく美しい」
しかし、エリスはどこか不満そうな眼差しをレオンに向けて、内に秘めた思いを述べた。「そうなのかしら? 今のままの姿ではまるで少年のようで何かが物足りないの……」カッスルは眼を妖しく輝かせ、鼻を鳴らし、巻煙草の火を消して荊棘のように刺々しく、心なき言葉をまるで語るかのように言った。「エリス嬢、あなたが自分の姿を嘆くときの眼の揺らぎ——それは、実に興味深いです。ああ、これは嘲りではありませんよ。ご安心下さい。しかし、愛する者から『どんな姿をしていようが女性らしく美しい』と言う細やかな愛の言葉でも物足りないとは傲慢に等しいのです。本来であれば、大半の淑女は頬を染めるほど大変喜ばしいことです。そのご様子ですと、忌々しいウリエルの呪いに毒されておりますね。なんて憐れなのでしょう」かれは憤慨し、立ち上がって、愛故に勢いよく探偵の胸ぐらを掴んだ。「カッスル、貴様はかのじょを侮辱する気か!」探偵は怯むことなく不敵な微笑を泛かべながら続ける。「侮辱? あなたは全く面白いことを言うのですね。私は事実を述べただけです。美を崇拝し、美に破滅した男は散り際に呪いを残したのです。そう――美と言う呪いを……エリス嬢のことなので己の美に対する傲慢さに気付くと思いますが、ウリエルが残した呪いが継承されないことを願っておくと良いでしょう」
レオンはカッスルの胸ぐらを離して突き放す。この男を今すぐにでも殴りたいと言う衝動を懸命に理性で抑え、憤怒の情を手に宿らせているのか手がわなわなと顫えている。この男の相手をしていると気が狂ってしまう! ああ、なんてことだろうか! それに、愛しき人の前で醜態を晒してしまった! 急いでかのじょを宥めなくてはならないと振り向くと、その愛しき人エリスは静かに大粒の涙を流していた。ああ、愛しき人よ、何故泣いている? とハンカチーフで涙を丁寧に拭いながら温情をかけた。「どうか泣かないでくれ! 君はけして呪われてなどいない。奴の……カッスルの言葉は気にすることはない――そして、呪いはこの世に存在しないのだから! さあ、ここは空気がとても悪く居心地が良くないであろう。君はしばらく部屋で休むと良い」と言うと、かれは少女が泣き止むまでしばらく宥めながら見守った。
一方、カッスルは三本目の巻煙草を吸い、「泣かれるのは構いませんよ。涙は、嘘をつけませんから。あなたの涙は【美を手放す恐怖】そのものです。とても希少な反応でした。」と吐き捨てるように言い、灰皿を持って窓辺へと移動した。まるで、二人の甘い時間の邪魔にならぬようにと、ただただ静かに窓の外から見える灰色の世界を彩る秋薔薇を眺めた。そして、ようやくエリスが泣き止むと「少し席を外す」と言って、少女と共に診察室へ出た。一人診察室に残された探偵は巻煙草をゆっくりと堪能したあと、火を消し、灰皿をテーブルへと置いた。出した書類や似顔絵を綺麗に整えてから鞄へしまっている間に、屋敷の主人が診察室に入ってきた。
「おや、お戻りになりましたか」
「ああ、悪魔的な客人をお待たせするわけにはいかないからな」不機嫌にレオンは言った。
「随分と失礼な言い草ですね。私はただのしがない探偵ですよ」
「失礼なのはお前の方だ! それに今はあんたが何者だろうがどうだって良い! お前は忠告のつもりで発言したのかもしれないが、結果的にエリスを傷つけた! 良いか? あの子の前では二度と血の呪いやウリエルの話はしないでくれ」
「あなたがそこまで感情的になるとは、珍しいですね。愛とは、時と場合によっては人を愚かにさせるものですね」
「愚かでも構わない。こんなことは言いたくはないが、カッスル。今のお前はただただ依頼されたことを調査し、報告だけしてくれれば良いのだよ。イアンの時のようにお前の助け舟はない。要するに、お前の助けは不要だ」
かれの氷のように冷たい言葉に対して、言葉に驚きの表情を見せることなく、平然としている探偵はその要求を潔く承諾した。だが、その選択が悲劇的なことを招くとかれは知らなかった……
そして、後日、アーネスト・オールドカッスルがどんなに冷酷な人間か知る事となるのだ。




