覚めない迷いの果て
この物語はフィクションです。
この物語に登場する「人物」「場所」「事案」は現実のものと一切関係はございません。承知の上でご閲覧ください。
またこの物語には死を仄めかすような言い回しが使われていたり、精神を蝕んでくるような内容が含まれます。苦手な方は閲読をお控えください。
迷いながら行うことを正しいと感じることはあるはずがない。後悔につながることは確かだ。
嫌いな人は誰にでもいる。
僕だって、僕の友達だって、きっと全世界の人が口にしないだけで嫌いな人はいる。
でもそれだけだ。嫌いでも何もしない。
嫌いでも好きなふりをすることもある。
今日は修学旅行一日前、修学旅行って学校のメインイベントであると同時に僕みたいな騒ぐのが苦手な奴でも楽しめる素晴らしいイベントだと思う。
そんな感じのことと予定をいつものメンバーで話していると
「やー青葉くん」
、、、僕の嫌いな大木君、別に何かしてきてるわけではない。ただなんか僕らの楽しい時間を邪魔して自分勝手な話をする。それが嫌い。話は聞いてないが単語は頭に入ってくる。「彼女」「かわいい」「今度」まぁこんなふうに単語を聞いただけでも大体なんの話か分かってしまう。聞きたくないのに分かってしまう。でも一つ覚えておこう「菜花沙月」この名前だけ。
修学旅行当日。着いたのは菅井だけだった。
「あいつは?」
「遅れてくるんだろう」
「間に合えばいいけどね」
もう1人は時間ギリギリできた。遅れてきた理由を尋ねると「考え事をしてた」らしい、別にどんな考え事でもいいけど、遅れてきたら大変だったと心配になった。でも口から出た言葉は「考え事してて、バス逃すなんてそんなことある?」上っ面だけの悪ノリその方が仲良くいられるから、、、。
飛行機の中、突然揺れが酷くなってきた。
みんな、そして僕も慌て始めた。
こう言う時に限って2人には相談できなかった。
心配事を相談して、共に分かち合える友が。
そしてとうとう墜落をしている。
死を覚悟した。でも海の上で浮かんでいた。
燃える機体、流れる血、沈むクラスメイト。
その目の先で大木君が血を流して死んでいる。僕はそれをみて、、、やったと思ってしまった。決して僕になんの嫌がらせもしていないたった1人の男が死んだ瞬間、、、自分は喜んでしまった。
漂流中、2人と出会った。無事を喜び合った。漂流した先で島に着いた。着いたのは24人、大人はいない、男女比は5:5。みんな絶望したような顔をしている。廃人のようになった人もいれば、泣き崩れている人もいる。そんな中2人の女子生徒が話してるのを聞いた。「みんな死んじゃった。」
「でもよかったサツキが無事で、、、」
嫌な名前だ。僕を不快にする名前。
せっかく晴々した気持ちはその会話によって再び憎悪の気持ちに溢れた。
どうにかして、この気持ちを晴らしたい。
、、、いっそのこと殺してしまおうか。
そう思い、2人を誘って食料を集めることにした。集めてきた食料に図鑑で見たことのあった毒物を入れようとそれを採取した。夕食の時間。木のとこで横たわってなにもしない1人を除いてみんなすごく喜んでくれた。本当に毒を入れようとはした。でも、できなかった。まだそんな覚悟は無かった。人を殺すという罪が怖かったんだ。結局やることはいつも同じ。後ろに隠れ嫌うことしかできないただの人。
その夜中、沙月に話しかけられた。
「ありがとう、青葉君、あの、、大木君から話聞いてて、」
、、、最悪だ。彼は死んでもなお僕に話しかけてくるようだ。憎悪というのはときに理性を飛ばす。
「大木君はまだ生きてると思ってる。そう信じてるから。」
その時、僕の覚悟が決まった。目の前の馬鹿な女をみて嘘の微笑みを浮かべて、優しく話しかける。
「そうだね、それより喉乾いてない?向こうの川に流れてた水を飲まない?」
「うん、ありがとう」
死んだ男のことを信じ続けて、その男の話に出てきた僕を本当の僕と思ってる。恨むなら彼を恨め。僕の本当を見抜けなかった彼を。
次の日、沙月は死んだ。
清々した、、、気はしなかった。
みんなの絶望した顔と2人の青ざめた顔がそれ以上に僕に罪悪感を与えたからだ。
おそらく、僕が殺したとバレれば、僕は全てを失うことになるだろう。たとえ帰れたとしても、その後の人生は決して楽しいものにはならないだろう。ならココで死んでもいいか?それでもいいかもしれないな。嫌いな人が嫌いな人を呼び全て消えても僕の気は晴れない。
みんな食料を口にしなくなった。2人も僕もみんな僕のせいで死ぬ、、、そう考えたらとんでもないことをしてしまったとさらに罪悪感が重くのしかかる。実質僕が23人殺している。2人にだけは打ち明けるべきなのか。そうしたら2人だけは助かるかもしれない。けどもし2人が僕のことを見捨てて、全員に告発したら?そう考えるとなかなか打ち明けることができず、日に日に飢餓に苦しんでいった。
とうとう死の際になってしまった。墓場まで持ってくというのはこういうことなんだろうか、自分のせいだ。自分のせいでせっかく助かったみんなも死ぬ、しかもおそらくあの場で即死したものよりも苦しみながら。自殺した者の判断は正しかったかもしれないが、その自殺に招いたのも自分のせいと考えたら、後悔の念が今になって湧いてくる。死んだら大木や沙月に怒られるだろうか。それともこの飢餓地獄から救って感謝されるだろうか、皮肉な者だ、殺された方が幸せで、生き残った方のが辛いなんて。でも2人の最後は見たくないから僕が先に死のう。そう思いあの水を口に含む。なんて身勝手な人間だろうか。勝手に殺して、勝手に苦しんで、勝手に死ぬ。理性があるだけでみんなそうしたいはずだ。
でもそれがただの人間だろう。したいことをして、後悔して、またしたいことをする。バカな生き物だ。
誰にでも嫌いな人はいる。
嫌いになる理由も曖昧で、自分勝手。
でも嫌いという感情はないとバカな生物ではなくなってしまう。バカな生物じゃなくなってしまうとそれは自分の感情に迷いが生じてしまって自分というものを見失ってしまう。覚めない迷いの果てに僕は目が覚める。
そこは自分が死んだはずの島
大木と沙月が仲良く話している。
いつもなら憎悪が湧くが、何も感じない。
死んでしまっているからか、そんなことはもうどうでも良くなっているからか、2人は僕から離れていく、それも何も感じない。
1人、島に取り残された僕は覚めない迷いから解放されるために砂浜を歩き続けた。
先は見えない。
オータユです。覚めないシリーズを更新しました。
一作目では見れなかった視点での絶望感を出せたのではないでしょうか。まあお察しの方もいらっしゃるでしょうが、三作目は菅井視点の物語です。菅井はこの絶望をどのように考えていたのでしょうか。来月更新予定ですのでぜひお楽しみください。




