暴走超特急・美佳
※この作品は暴走超特急です。途中下車はできません。あらかじめご了承ください。
ダァシエリイェス!!
【アナウンス】次の駅は──縁日!
ダァシエリイェス!!
盆はあの世とこの世が交わる日。
にぎやかな夏祭りのはずが、そこは──妖怪たちの盆踊り会場。
人の姿はどこにもなく、ただ怪異ばかりが楽しげに集っていた。
……けれど、美佳は気付かない。
「わーっ!縁日だー!映え〜っ!」
鼻歌交じりに屋台をのぞき込む。
金魚すくいに、綿あめに、からかさ小僧が並べる傘。
「わぁ、クオリティ高いコスプレ屋台!和風テイスト最高〜!」
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【アナウンス】金魚すくい
ダァシエリイェス!!
「よーし、負けないぞー!」
ポイを水面に沈めた瞬間、美佳の手にずしりと重み。
「でっかっ!?……え、なにこれ、金魚じゃなくて目玉うじゃうじゃ!?
しかも手がウネウネ生えてるぅぅ!!(汗)」
周囲の妖怪客たちは「おお〜!」と歓声を上げる。
「うわっ、演出リアルすぎ!子ども泣くやつだって!(汗)」
慌てて金魚鉢にぽちゃんと返却。
「はい返却〜!これSNSに上げたら即バンだよ!映え以前の問題!!www」
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【アナウンス】にわか雨と唐傘小僧
ダァシエリイェス!!
ザァァァ……。
突然の夕立。
唐傘小僧がすっと差し出した一本の傘。
「ほら、これ使いな」
「わ、ありがとー!」
美佳は大喜びでくるくる回す。
「すごっ!時代劇の傘みたいで和の雰囲気マシマシ!
盆踊りで和小物とかテンション上がる〜!」
(唐傘小僧、内心:「いや、これ俺の身体なんだけど……」)
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【アナウンス】妖怪盆踊り
ダァシエリイェス!!
やぐらの太鼓が鳴り響き、輪の中に河童やろくろ首が混ざって踊り出す。
「わ〜!特殊メイクすごっ!首がにゅ〜って伸びてるのどういう仕組み!?
コミケ超えた究極の縁日コスプレイベントだ〜!!」
美佳は大はしゃぎで輪に飛び込み、妖怪たちと一緒に手を叩きながら踊り続ける。
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【アナウンス】終点:花火ドーン!
ダァシエリイェス!!
ドォォォン!
夜空に大輪の花が咲き誇る。
美佳「きたきたきたーっ!夏祭りの目玉、花火ーっ!!✨」
美佳「たーまやー!」
妖怪たち「たーまやー!」
声が重なり合い、異様な一体感が生まれる。
美佳は満面の笑みでスマホを掲げた。
「シンクロ率100%!? 縁日の団結力ハンパない〜!」
花火の音と歓声が夜空に溶け込み、妖怪と人がひとつになった。
……ただし、美佳は最後まで、そこに人間が一人もいないことに気付かないまま。
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【アナウンス】──その後。
ダァシエリイェス!!
後日、美佳はスマホの写真フォルダをにやにや眺めていた。
「やっぱりあの盆踊り、最高だったなぁ〜!」
バイト仲間「……ちょっと待て。この写真、人間が一人も写ってないんだけど!?(汗)」
美佳「え? みんなノリノリで踊ってたじゃん!シンクロ率100%!」
バイト仲間「…………」
(背筋が凍る音)
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【アナウンス】終点──暴走超特急・縁日編!
ダァシエリイェス!!
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【美佳とバイト仲間の会話】
バイト仲間(視える系)「お前な……この写真に写ってんの、人間じゃないからな」
美佳「え、そうなの!? ……ま、いっか!映えたからOK!!」
著者は人混みが苦手なので、今年も夏祭りには行きませんでした。
ただ、麦茶を飲みながら遠くの打ち上げ花火を眺めつつ、この原稿を書いていました。
現実の縁日は静かに回避。
しかし紙の上では、妖怪と一緒に「たーまやー!」。
次回も暴走予定。ご乗車の際は、手すり・吊り革によくおつかまりください。
ダァシエリイェス!!