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投げ込まれた戦場① 剣術マスターしてやるぜ!!

冒険者ってかっこいいなぁ!!!!!

落ち葉を踏みしめながら、カイルは猫背で歩きつつ、ぶつぶつと不満をこぼしていた。


遠くの木々の隙間から、冒険者たちの奇妙な戦いがちらちらと見える。


剣を振り回すも一発も当たらない剣士。


魔物に土下座して命乞いをし、油断させたところで倒す者。


動かない魔物に矢が当たらず、動いている味方に当てる弓使い。味方に当たっているのに喜んでいる様子だった。


どうなってんだここは。ここランク低い魔物しかいないんじゃないのか?なんで冒険者の方がレベル低いんだ?


「はぁ。なんで俺だけ、こんな可哀想な目に遭わなきゃいけないんだよ!!」


カイルは魔物がいながらも思いっきり叫んだ。奥の冒険者がちらりと見てくる。


俺が何かしたか? してないだろ!.....杖のことはおいといてさ。  


あと、そこの冒険者。俺を見ながら矢を打つな。味方に当たってるぞ。


「無理に我慢しなくていいんですよ。カイルさんの気持ちを大事にしてほしいです」


隣を歩いていた騎士が、慰めるように肩をポンと叩いた。その手は驚くほど軽く、柔らかかった。


カイルはその細い指先に目を向ける。爪先は綺麗なピンク色で、なにか塗ってあるようだった。


この子、女の子か。


甲冑の隙間から覗く青い瞳が、優しく揺れている。

森の冷たい風とは対照的に、その指先の温もりがじんわりと伝わってきた。


俺の予想では、この子美人だな。もう少し甘えよ。


「でもさ、言えるわけないじゃん。断ったら、あいつ絶対に斬りかかってくるって」


騎士は、カイルの返答に肩を落とす。


「父は不器用なんです。怖い顔しかできないけど、私のことを誰よりも大事にしてくれてますから」


カイルの足が止まりかける。


「優しいわけ……え、今なんて言った?」


騎士は変わらぬ表情のまま、繰り返す。


「本当は優しい人ですよ」


カイルは手を振って遮った。


「違う違う、そこじゃなくてさ。」


胸の奥に、何かが引っかかる。とんでもないことを聞いた気がするんだけど、気のせいか?


騎士は、そんなカイルの戸惑いに気づいたようで、口元をわずかに緩めた。


「『父』って言ったことですか?」


やっぱり、気のせいじゃなかった。


「娘いたの!? あんな男に娘いたの!?」


あんな男に嫁ぐ人がいるのか。世の中、広いな。


カイルの驚きに騎士は小さく呟く。


「みんな驚くんですよね」


「そりゃ驚くでしょ! パワハラ全開のかたぶつ男に、まさか娘がいたとは。」


騎士の目が僅かに細くなる。優しげだった瞳が、鋭く冷えた色に変わった。


「父を、そんなふうに言うのはやめてください」


その声には、かすかな怒りがにじんでいた。カイルはすぐに頭を下げ、軽く手を上げる。


「ごめんごめん。ところでさ、名前なんて言うの? パパの名前も知らないんだけど」


騎士は小さく頷くと、ヘルムの縁に手をかけ、ゆっくりと外した。眩しいほどの金髪が、こぼれるように落ちる。


陽の光を浴び、柔らかな波のように揺れながら煌めいていた。


透き通る青い瞳がまっすぐカイルを見つめる。森の薄暗がりの中でも、その輝きは失われていなかった。


カイルは息を飲む。胸の奥が軽く震える。冗談じゃなく、今まで見てきた女性の中で、群を抜くほど綺麗だった。


やばい。やばいぞ!! 可愛すぎるぞ!!


エリーゼはカイルの顔を見て、ほんの僅かにくすりと笑った。


「自己紹介が遅れました。私はグランツ・エリーゼと申します。父は、シュバルツとお呼びください」


言葉が頭に入ってこない。どうして、あんな男からこんな娘が?もしかすると、妻が相当美人なのかもしれない。


決めた。この子を最初のヒロインにしよう。


「最高です。好きです」


エリーゼは首をかしげる。金髪がふわりと揺れた。


「どういう意味ですか?」


カイルは咳払いをして、首を横に振る。


「ちょっとした独り言さ。」


告白はまだ早かったようだね。 今は甘えることに集中だ。


「魔物討伐か。俺、まだ一回も魔物と戦ったことないんだよね。平和に暮らしてたからさ」


カイルは下を向き、悲しげな雰囲気を出す。何回もちらりとエリーゼの反応を伺っていた。


エリーゼは少し戸惑った表情を見せる。本当に恐れているのか、それとも、ただ甘えているのか。判断がつかず、そっと肩を寄せた。


柔らかい。最高。もっと寄せてもいいんだぞ。


「初歩の剣術を教えるので、大丈夫ですよ。ここの魔物はゴブリンしかいませんから、危険ではありません」


肩を寄せられて、ニヤニヤしていたカイルだが剣術の話に興味が湧いた。


「エリーゼは剣術が得意なの?」


「はい。幼少期から父に鍛えられてるので。」


「俺も剣は扱えるようになりたいんだよね。」


剣を扱う姿を見るのは、かっこいいしな。


その言葉にエリーゼは腰に添えてある剣を外して、嬉しそうに構えた。 


急にどうした?


「ですよね!!剣を振るのは楽しいですよね!!今から私が見せてあげます!!」


カイルさんが剣に興味を持ってくれるなんて!!早くかっこいいところ見せてあげなくちゃ。



エリーゼの興奮に若干、距離を離した。


エリーゼは剣の変態なんだな。父は杖だったっけ。

まぁ剣術は見ておきたいし、集中するか。


「まずはこの木を斬りますね。」


「は?」


なんの前触れもなく剣を振った。剣が風を裂いたかと思った瞬間、木の幹が音もなく斜めに裂けた。重みを失ったように、幹がゆっくりと沈むように倒れていく。


その光景に奥にいる冒険者とその近くにいるゴブリンも動きを止めているのが見える。遠くで誰かが剣を落とし、それがやけに大きな音に聞こえた。



「今のがヴァルムート流剣術の一式です。立風と言います。」


「カッケーー!!」


やばすぎるでしょ!!俺もこういうことができるようになるのか!スッゲェ興奮してきたぞ!!


「早く教えて!!俺も扱えるようになりたい!!」


カイルの熱意にエリーゼは嬉しそうに頷いた。


「もちろんいいですよ!!ですが、いきなりこの技をすると、体が壊れるかもしれません。なので基礎から教えます。」


「なるほどね。」


「ちなみに、ヴァルムート流剣術っていうのは、初代の王様が作った剣術です。一式から七式まであります。私が使えるのは一式から三式までです。私は三式まで覚えるのに相当苦労しました。」



まぁいきなりは無理か。これからの俺が楽しみで仕方ないぜ!剣術マスターして!聖剣手に入れて!強いやつに勝つ!!そしてエリーゼとよろしくする!!完璧や!!



「マジでかっこいい!!俺は七式まで使えるようになるんだ!!」


その言葉にエリーゼはクスッと笑った。




カイルたちは歩みを止めて、少し休憩していた。


後ろを振り返ると馬車はまだ動いていなかった。


「俺が戻るまで待ってくれるの?」


「いえ、すぐに走ると思いますよ。調査で忙しいと思うので。」


カイルはため息をつき、馬車を睨んだ。


俺が戻るまで残るのが普通だろ。気つかえよ。


「そっか。ところでさ、なんで俺はここに無理矢理連れてこらされたの?」


「私も事情はわからないんです。ですが、カイルさんのことを上の人たちは必死に探していたのは、私も知っています。」


「俺に何があるんだ?もしかして剣術をすぐマスターするほどの強さがあったりして。」


「もしかすると、そうなのかもしれませんね。一緒に頑張りましょう」


彼女の手が、カイルの手をそっと握る。優しくて暖い


カイルはその手を見つめたまま、決意する。


この子は正妻にしないとダメだな。


エリーゼは、引きつった笑みを浮かべながら囁く。


「カイルさん、そろそろ手を離してくれませんか?」


視線が泳ぎ、声がかすかに上ずっている。


「見られてるような気がして。その……恥ずかしいんですけど....」


カイルは首を振る。


「いや、このままがいい。俺は今、怖くて震えてるんだ」


離せるわけがないだろこんな可愛い子の手を。っていうかなんであんなに剣使うの上手いのに、手がゴツくないんだ?


カイルが疑問に思うと、背筋に違和感が走った。

鋭く重い空気が、背後から圧し掛かる。


ゆっくりと振り向くと、馬車の中からこちらを睨む男の姿があった。


多分シュバルツだ。よく見えないが、とんでもない形相で、俺を見ている気がする。エリーゼは気づいていない様子だった。


やばい。また剣を持ってこられたら今度こそ終わりだ。


カイルは慌ててエリーゼの手を離す。


「エリーゼちゃん! ちょっと急いで、魔物がいるところに行こう!」


エリーゼは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうにほころぶ。


「カイルさん、突然のことだったのに。前向きで、とても嬉しいです!」


「いや、そんなことはないよ」


早くあの男から離れたいだけだよ。



ようやく森の奥についた。周りを見るとエリーゼのことを見ている冒険者とゴブリンがさっきよりも増えていた。


爆発物を持ちながらエリーゼを見つめていた男の近くで、仲間が叫ぶ。


「おい! 早く投げろ! 爆発するぞ!」


「えっ?」


その瞬間、乾いた破裂音が森に響いた。爆風に吹き飛ばされ、彼は地面に転がった。


そこまで酷い怪我はしていなかった。倒れてもずっとエリーゼを見つめている。


「何やってんだよお前!!」


近くの冒険者が駆け寄り、ポーションを渡した。ヒールをかけている子もいる。その様子にゴブリンが棍棒を地面にトンと叩いて、小さく首を振っていた。


何やってんだよ。ゴブリンに呆れられるとか初めて見たぞ。


もう一人はゴブリンに弄ばれていた。


「クソ。なんで当たらないんだ!!」


コイツ、さっきからずっと当たってなかったな。


「ゴブゥ〜」


意味はわからないが、明らかに煽っているのが伝わる。ゴブリンは持っていた棍棒を剣士の頭にコツンと当てて、笑っていた。


「クソゴブリンめ!!」


剣士は諦めずに剣を振っていると、エリーゼが声をかけた。


「もう少し力を抜きましょうか。それと、相手の目を見て刀を振るのはやめましょう。軌道が相手に伝わるので。一回私が見せてあげますね。」


「ゴブ!!ゴブー!!」


エリーゼが近づいた瞬間にゴブリンは逃げていった。 そりゃそうだよな。


「すいません。私のせいで....」


エリーゼは申し訳なさそうに頭を下げた。


「いえ、大丈夫です。さっきの助言通りにもう一回やってみます。」


そう言って剣士は去って行った。


「それじゃあ、今から基礎を教えますね。」


エリーゼは鞘から剣を抜き、スムーズに構えてみせる。


「まずは構え。肩の力を抜いて重心を安定させることが大事です。」


カイルはエリーゼの動きを真似しながら見ている。


「次に振り方。腕だけで振るのではなく、腰と足を使って体全体の勢いを乗せます。」


エリーゼは剣を軽く振ってみせる。流れるような動きだった。


「最後に防御です。剣で直接受けるのではなく、斜めに流すことで衝撃を減らします。」


カイルは腕を組みながら、真剣な顔で頷いた。エリーゼの剣捌きを見ているうちに、一つの答えに辿り着く。




なるほど、わからん。


読んでいただきありがとうございます!!いいねと感想待ってます!! カイルは剣を扱えるようになるのか?

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