刑務作業
「刑務作業の時間だ出ろ」
独房の扉が開けられアンドロイドの看守が命令して来た。
もう直ぐ22世紀になる現在、刑務所の看守は殆どアンドロイドが勤めている。
アンドロイドであれば収監者による暴力を物ともせず、賄賂を受け取り受刑者に便宜をはかる事も無い。
ただその反面融通が利かず、プログラムされた通りにしか動かないというデメリットもある。
俺の刑務作業は刑務所内の学校で教鞭をとる事。
犯罪者が教鞭? と思うだろうが、俺は教員免許を所持している。
刑務所に入れられる時に何で剥奪されないのかと思ったら、刑務所内で教鞭をとらせる為だったらしい。
だから刑務所に収監された時に人間の看守に言われたよ、刑務所から出所する時に免許を剥奪するとね。
何で俺が刑務所に入れられたかって言うと、高校の空手部の部活動中に有段者の俺の指示に従わない生徒数人を可愛がり過ぎて、病院に送り込んじまったからだ。
教室に入る。
俺が教室に入った途端、投げられないように床に固定されている机や椅子に縛り付けられている奴らが、ガタガタガタガタ! と机や椅子を揺らし「ガァ!」とか「ウー」とか言いながら立ち上がろうとした。
此奴は刑務所に入るまで勉強と無縁だったが、高校入試試験を受けて一応合格した収監者たちだったのだが、今は腐りかけた身体のゾンビ。
ゾンビだよゾンビ、映画でお馴染みのゾ、ン、ビ。
どうしてこうなったのかなんて知らんよ。
ただ、俺が此奴の中の幾人かと授業中に喧嘩になり、看守が止めるまでに2〜3人ブチのめした所為で懲罰房に入れられてる間に、刑務所に収監されていた収監者と数人いた人間の看守は俺を除き全てゾンビになっていた。
懲罰房に閉じ込められていた時、刑務所のアチラコチラから人の悲鳴や罵声が連続して聞こえていたんだが、暴動でも起きたかくらいに軽く考えていたんだ。
それが懲罰房から独房に戻された翌日、刑務作業で教室に行ったらゾンビになった此のゾンビ共か襲い掛かって来た。
俺が食われなかったのは、喧嘩の再発を危ぐして何時もの数倍のアンドロイドの看守が配置されていたからだ。
でも今思うと、あのとき噛まれていた方が良かったのかも知れない。
融通の利かないアンドロイドの看守共は毎日、俺を此処に連れて来てゾンビ共に授業を行うよう強制するんだ。
でも授業を行うように強制されるのは我慢できる。
俺が今1番恐れているのは、満期になった時にゾンビが闊歩していると思われる刑務所の外に、武器も何も持たされずに放り出される事なんだよ。