望月の章 第四話(柳の木の下で)
ある程度分かってきたが一応整理する。
近寄っては行けないとされる望月邸。
白髪で薄紫色の瞳をした子供。
願いを叶える力。
引っかかる事と言えば――白髪の子供だろうな。
何故?と問われたら答えるのに困る。
後は――『真神』 について、もう少し情報が欲しい所。
そう考えつつ一休みできる場所まで歩く。
緑豊かで子鳥のさえずりが聞こえる。
そよ風が吹く、とても心地よくて眠くなってしまう。
柳の木の傍に休める所があるな――あそこで休もう。
腰を下ろし一休み。
風が吹く度に柳がユラユラ揺れる。
あの揺れを人は幽霊と勘違いしたんだっけ―。
確かに、あの揺れは幽霊を彷彿させる。
柳の葉と葉が擦れる音と風の心地良さ―本当に寝てしまいそうだ。
目を瞑り―意識を奥へ沈める。
今日はとても疲れた――少しでも休みたい。
そう思い――柳の木の下で眠りにつく。
千の鳥居が続く道を歩く
進むにつれて鳥居が朽ちていく。
まるで―穢れが蓄積していく感じに朽ちてボロボロ。
それがとても悲しくて哀しくて涙が溢れそうになる。
生温く強い風が吹く。
追い返すかのように強く拒絶する風。
それでも――進まないといけない。
感じるから―この先にあるものがとても大切なもの
忘れちゃいけないもの。
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私は走った。
とてもとても長い道を―あの場所から離れたくて走った。
少しでもあの場所から遠くへ―――――。
私を逃がす為に身代わりになったあの子の為にも。
救ってくれる人を見つける為に―走り続けた。
息も絶え、呼吸をする度に肺が痛い。
足の裏は血だらけ――これじゃ、すぐバレてしまう。
鎖もちゃんと取れなかったから皮膚の薄い部分を傷つけて皮がめくれて、肉が見え痛くて熱い。
左目は今や暗闇しか映さなくなった、頼りにしている右目すら霞んで見えなくなってきている。
真新しい火傷は皮膚と衣服が擦れたことにより酷くなっている、血が滲み出る。
どこもかしこも傷だらけ。こんなんじゃすぐに逃げ出したことがバレてしまう。この地には逃げ場がない、私はなぜ逃げているの?
あの場所から逃がしてくれたあの子の言葉で逃げてる?
そうね――遠い昔に助けた子が私を助けに来たもの。
あの頃の泣き虫さんじゃなくなったんだね。お姉さん驚いちゃったなぁ。
あぁ―誰か―誰か―――誰でもいいから。
あの子と私を救って欲しい――。