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化生奇譚  作者: 菅ノ原 輝夜
望月の章
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望月の章 第九話 (湯浴みとあひる)

髪と体を無事洗い終え―湯かけをした後に湯船に浸かる。

疲れた体にちょうどいい温度で明日も頑張れそうな気がする。

そう考えていると――プカプカとアヒルがやってくる。

このアヒル、何か感じる。


「あひるちゃんはあひるちゃんなの!」


いきなり話し出した為、勢いよく立ち上がる。


「しゃ、喋った!!??!」


「あひるちゃんはおはなしできるのです!

おきゃくさまやじゅうぎょういんのみんなとおはなしがしたいからがんばったのです!」

幼い女の子が頑張って話をしてくれている風に聞こえる。

悪い子ではなさそうで安心した。


「という事は……君は付喪神なのか?」

再び湯船に浸かる。流石に寒い。


「つくもがみ……なのかもです!

あひるちゃんはおはなしがしたくてなったのです!」


「それなら……受付の所とか食堂でも良かったんじゃ……」


「あそこはヤです!」


「どうして?」


「うけつけはたのしくないです!

それに、つぼみおねえちゃんはいつもアワアワしていてつまんないです!

おはなしもあまりできないです!」


「食堂も同じ理由?」


「しょくどうはごはんをたべるところです!

たくさんおはなししちゃうとあたたかいごはんがさめちゃいます!

そしたら、さきおねえちゃんとアヒルくんがおこっちゃいます!」


「ふむふむ……それで仕方なくここに居るという訳かい?」


「しかたなくではないです!

プカプカうきながらおきゃくさまをまつじかんやこうして、おきゃくさまとたくさんおはなしできるので……ここはだいすきです!」


「そっか……良かったね。

でも……その……急に話しかけられると驚いちゃうからね?

特にご年配の方達とか……」


「そこはだいじょうぶなのです!

おじいちゃんやおばあちゃん……みーんな!あひるちゃんのことしってるんです!」


「そうなのかい?………それも良かった」


「おきゃくさま……なにかおなやみでもあるんですか?

あひるちゃんのこと、たくさんしんぱいしてくれてるので……」


「悩み…悩みはあるね。

先にここに入っていた女性の事でね」


「くろかみのきれいなおきゃくさまですね!

あのおかた…おからだがすごーくきずだらけでいたいたしかったです。

それに!おめめのいろがさゆうでちがってました!」


「え?」


「くびのところにおっきいやけどもありました!

おせなかが……ばっさりです!」


「首に……大きな火傷?

背中がバッサリって……ほ、ほかには?」


「ほかですか?

うーーん………おなかをさされたあとがありました」


「お腹を刺され……あ、あと………目の色が左右で違うって事は右側を見たのかい!?」


「みたのです!

はいいろでした! それと……おおきなやけど!」


「右目は灰色…後天的に変わったのか。

右側は大火傷なのか……」

なるほど―だから包帯で隠していたのか。


「おきゃくさま?」


「え、あ…あぁ教えてくれてありがとう……あひるちゃん。

今日ここで話した事は内緒にして欲しいんだけど……」


「どうしてですか?」


「人は誰しも……知られたくないものを抱えてるからさ。

この私でもあるくらいだ。

だからね、彼女には内緒だよ?」


「わかりましたなの!」


「うん、良い子だね。

それじゃ私はそろそろ……逆上せそうだから出るね」


「はい! たくさんおはなししてくれてありがとうなの!」


「うん……こちらこそありがとう」

少し逆上せたようでフラフラ足取りで脱衣所まで行き、丹前を着てスミレの間まで戻る。

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