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戦地

作者: 雉白書屋

「なあ」

「んー?」


「なーあ」

「んおー?」


「なーあ!」

「んおお?」


「なあっ!」

「だーから、聞こえてるってのぉ!」


「なにー?」

「聞こえてるって言ってんだ!」


「もっと近くで! 耳元で頼むわぁ! おれ、こないだぁ、耳をやられたんだぁ!」

「聞こえてる! 何の話だ!」


「ああー……なんだっけなぁ」

「なんだそれ」


「んー、ああ、思い出したぁ」 

「おお、なんだよ」


「んー、忘れた」

「おお、なんだよ……」


「あ!」

「ん?」


「なんか食い物ない?」

「ない。今日の昼の分の配給食はどうした?」


「食った。たぶん」

「たぶんってなんだ。ないなら昼前に食ったんだろう」


「ああ、ポケットにあった」

「なんだよ……」


「なあ」

「ん?」


「いつになったらこの戦争終わんのかなぁ」

「あー、さあなぁ……お前、ここへ来て何年になる?」


「さー……八年くらい?」

「おれもそれくらいだ。へへっ、老けたな」


「ははははは! 老けた、老けた」

「身体の節々が痛くなってなぁ」


「まあーなぁ……どーでもよくなってきたけどなぁ……」

「おー、いてて。なあ、薬あるか?」


「ああ、あるよぉ。ほら、やるよぉ」

「サンキュー。ああ、いい気分だぁ……」


「あいあい。お、今の音」

「ああ、昼休み終了だ」


「持ち場に向かうかぁ。確か一緒だな?」

「ああ、今日は二列目だな」


「はーあ、まあ一列目じゃないだけマシだなぁ」

「ほとんど変わらんて。ああ、一列目のやつ、ずるいんだぞ。突撃号令の後、わざとモタモタしたり転んだりするんだ」


「へへ、おれもやったことある。お前もあるだろ?」

「まあなぁ、ははは!」


「おーおー、もう、みんな集まってるなぁ。敵さんもなぁ」

「まあ、他にやることないからなぁ」


「やべ」

「どうした」


「おれ、棒持ってない」

「その辺にあるよ。ほらあそこ」


「ああ、本当だ。へへへ、いい棒だ。ほら、お前のより長い」

「変わらんだろう」


「ほら、本当だって比べてみろよ」

「んー、おれの方が長い」


「おれのだって」

「いいや、おれだね」

「おいおい、ガキかよ、お前ら」

「ジジイがなぁ」

「はははははは!」


 科学技術の発達によって、平均寿命が大幅に延び、世界各国の人口は増加の一途をたどっていた。だが、住む場所には限りがあり、資源は減少する一方で、人間同士の衝突は避けられない。そうした時、今までなら戦争が起きて人口抑制に一役買っていただろうが、戦争は野蛮な行為と断じられ、各国が平和条約を結んでいたため、そこに至ることはなかった。

 その結果、導き出された解決策は口減らしであった。世界各国がある島に国民を送り込み、二つの軍に分けて戦わせたのだ。この戦闘はインターネットで放送され、時に賭け事の対象や企業同士の取引を決める代理戦争の形を取った。


「さー、そろそろ隊列を組むべぇ。今日は何人死ぬかなぁ」

「だなぁ。叩き殺したるわぁ」


「な、な、な、なんなんだ、なんなんだこれぇ……」


「なんだあいつ。変だな」

「きっと新人だ」


「あー、みんな最初はああだよなぁ」

「だなぁ、ははははは! おい、お前、薬やるか? 気分いいぞぉ」


「あああ、なんで、なんでジジイばっかりなんだよ……あああ? おれも手が、ああ、顔もなのか? 皺が、ああクソ、クソクソクソ……」


 島に送り込まれるのは貧困者で、整形手術により、皆一様に老人の姿にされる。その理由は、見ている者に対して老人ならば同情の必要はないと思わせるためか。あるいは、美容整形が当然とされる現代人の老いを憎む心がそうさせるのか。

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