49:スピード結婚……式!
「私、このままここのホテルに泊まるから、三日後に結婚式をなさいな」
王妃殿下の言葉に、動きが止る。
いや、今この人何言った?!
しかし、王族の言葉だ。ノーとなんて言えない。
「は……はい……」
小さくそう返事をすると、殿下は満足気に笑う。
「よかったわ。じゃぁフォルティア公爵にもそう伝えておいてね。どうせ下の部屋とかにいるんでしょう?」
バレバレじゃん……。
「それでは、私は殿下のお泊まりになる部屋の用意を指示してまいります。お一人、侍女の方をお借りしても?」
「ええ、そうね。ゼラティス、あなたついて行きなさい──あぁ、それと一番良い部屋ではなくて、二番目の部屋にしてちょうだい」
「え……、それは」
「だって結婚式の主役が、一番良い部屋を使うべきでしょう?」
言い出しっぺの殿下の言葉にはぶっ飛んだけれど、こうした配慮を頂けるとは、やばい……ちょっと泣きそう。
「ふふ。そんなわけで、一番良い部屋はあなた方が使って。今日は私は王妃ではなくて、実家のメマルティ侯爵家の人間としてきていることにするから」
「ありがたく、お言葉頂戴いたします」
こうして、私とギース様の挙式が急遽、執り行われることが決まったのだった。
──当事者のギース様を抜きにして。
*
「ね、ねぇ。おかしくないかしら」
「美しいですよ、奥様」
「旦那様も見違えますね」
あの日、ギース様に王妃殿下のお言葉を伝えたら、顔を真っ青にして頷くだけの人間になっていた。
そりゃそうよね。王族に指示されたら、断ることはできない。
しかも「なんでまだ結婚式をしていないんだ」というお叱りの意味にも取れるんだもの。
でも、それはすぐに解決した。
殿下のお部屋を用意した後、改めてギース様と二人で挨拶に伺ったら「こうでもしないと、あなた方はいつまでも領民を優先して式をしないでしょう? 時間をかけた式をしたいなら、何度でもやれば良いのよ」と、非常に良い笑顔で言われたのだ。
いや、何度もはお金が勿体ないのでやりませんけどね。
でもまぁ、殿下のお言葉も尤もだと思ったので、私たちは急ピッチで挙式の準備を進めることにしたのだ。
そして、今日。
晴れ渡る青空。
美しい木々。
大急ぎで駆けてきてくれた義理の家族──スジューラク公爵家の皆様。
そして、タウンハウスの皆に、カントリーハウスの皆。
トーオク様やテッサ様。関わった多くの領民たちが、ホテルの中に作っておいた教会堂にいる私たちを見ている。
ちなみに、教会堂は一階のレストランとは反対側のガーデンに面していて、貴族は建物の中の参列席に、領民はガーデンで様子を見ていた。
私のドレスは、ギース様が以前こっそりと用意してくれていたらしく、私の体にぴったりだった。
怖い! いつ測ったの?!
マーメイドラインのドレスに、長いトレーン。あとでホテルの階段で、絵師に絵を描いて貰ってポスターにする予定だ。
このホテルでの挙式を、サービスの一つにするからね。
この世界の挙式は、最初から伴侶と手を繋いで司式者の前に向かう。
ご神体とも言えるドーナツ型の水晶の前で、私たちは永遠を誓うのだ。
「私レダ・フォルティアは、夫ギース・フォルティアに愛と忠誠を誓います」
「私ギース・フォルティアは、妻レダ・フォルティアに愛と忠誠を誓います」
司式者が頷き、先を促す。
「レダ」
ギース様の手が、私のヴェールを持ち上げ、頬に手が添えられる。
そうして。
ゆっくりと、彼の唇が私のそれに重なった。




