45:領地が落ちぶれたって聞いたけど?
ホテルの完成も見届け、エステの稼働が始まったことも聞いた。
マティとスプリンがテストゲストとして行ってきたけれど、翌日も休暇が欲しいくらいリラックスできたと言っていた。
リラックスしたあと仕事に戻りたくない気持ち、良くわかるわぁ。
休みならあげるけど? って言ったら、大慌てで拒否してきたけれど。
「奥様、旦那様がお呼びです」
家令のウィントルから声がかかり、部屋を出た。ギース様の執務室は、私の部屋から三部屋隣にある。ほんの少し歩くだけで着く、と思いがちだけれど、なんせ公爵邸。一部屋一部屋が広いので、思いの外遠いのだ。
執務室に入ると、満面の笑みで出迎えてくれる。
「レダ! 手紙が来ている」
「手紙? どちらからかしら」
「王都のソワからだ」
タウンハウスの執事ソワからの手紙?
小首を傾げながらも、手紙を受け取る。すでにギース様は読んでいるようで、封はあいていた。
「……! まぁ!」
読み進めていくと、なんと元我が実家から、文句のお手紙が届き、無視をしていたら元家族が門の前まで来て大騒ぎしたとか。
「併せてこの資料を」
ギース様が手渡してくれたのはルイジアーナ領、つまり元実家の領地の収支表だ。こうした表は、国に収められ、正式な手続きを取れば、誰でも見ることができ、複製も取ることができる。
その資料を見ていくと、明らかに工業生産が落ちていた。
そして先ほどの手紙。
この二つから導き出されるものは、一つしかない。
「あらあら、我が領にガラス職人が移住したことが、こんなにも領収に影響したのねぇ」
ころころと笑えば、ギース様もウィントルも笑う。
「あの領は、他に特産物などはなかったかな?」
「そうですねぇ。私は領政には携わっていませんでしたが、学校で学んだ限り、特筆するものはなかったです」
「と、いうことは」
「ええ。他の領民が、補填のための増税に嫌気がさして移住し始めるのは、時間の問題です」
ガラス職人たちは、無理矢理引き抜いたわけではない。
きちんと待遇を明示して選んでもらったのだから、そこをフォローしなかった採用側に、責がある。
特に、ルイジアーナ伯爵領のガラス工房は領営だったので、責任者は領主だ。
「さぁて、これからどうするのかしらねぇ」
「レダ、良かったらこちらの手紙も読むか?」
「そちらは?」
「俺宛のソワの手紙だ」
「良いのですか?」
「なかなか面白い読み物になっているぞ」
読み物?
小説風なのかしら。ソワからの手紙が?
そんなことを思いながら受け取ると、ギース様の言っていることが良くわかった。
「あらあら、まぁまぁ」
そこには、元家族が我が公爵家のタウンハウスに来たときの様子が書かれてあったのだ。




