表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

44:ホテルの完成!

良いことは一気に続くものだ。

ギース様と結婚したばかりの頃に撒いた種は、遂に花が咲くときとなっている。


え? なんのことかって?


やりました!!

ついに、ホテル完成です!

やったーーー!


「これは何と言うか、本当に美しいわ」


ホテルの門を入ると、然程長くはないアプローチ。

その両側には、美しい花が咲き誇っていた。

以前は壊れかけていた小さな噴水からは、水が溢れている。

馬車はゆっくりと、馬車止めに回り込み止まった。


「さぁ、お手をどうぞ。俺のかわいい奥さま」


だんだん、ギース様のこれにも慣れてきている。

慣れって怖いわね……。


彼の手をとり馬車を降りると、入り口にはスタッフが二人。

支配人と、ドアスタッフだ。

領主が相手と言うことで、全スタッフを用意したいと言われたけど、今日は普通の顧客相手を想定して貰いたいとお願いした。せめて支配人を、と言うことだったので、今後も高位貴族が相手の場合には支配人は登場するということで、話をつけた。


あくまで、お忍び的に使ってもらうホテルにしたいので、高位貴族に関しても、少人数のスタッフで対応する仕様にしていきたいというのが、私の希望。

その代わり、少数精鋭ですよ、という形ね。


「ホテルフォルティルアへようこそお越しくださいました」


支配人が挨拶をし、ドアスタッフはその間に御者から荷物を預かる。

ホテルの支配人をお願いしているのは、公爵領の一番の商家の三男だ。ギース様が声をかけたところ、二つ返事で快諾されたとのこと。


「今日はよろしく頼む」


ギース様の言葉に、支配人は笑顔で頷き言葉を続ける。


「私、ホテルフォルティルアの支配人、ヴォーヌアールと申します。ギース・フォルティア様、レダ夫人でお間違いないでしょうか」

「ええ、間違いないわ」

「お二人のご滞在が、最高のものとなるよう、サポートさせていただきます。それでは建物の中へどうぞ」


流れるようなやりとり、素晴らしい。こうした出迎えなどは、支配人である彼に任せてあった。

しっかりとしたフローを作ってくれたところに、彼のやる気を感じる。


建物の中に入ると、荷物はドアスタッフからベルスタッフへと渡された。

通常、支配人が立ち会わない場合はこの二人がお客様を案内する。

高位貴族以外の貴族や、平民が泊まる宿は、受付に人がいる程度なので、喩え少人数であっても、こうして荷物を宿側が扱うのは、特別扱いを感じる体験だろう。


「レダ、なんだかワクワクするな」


ギース様のその言葉に、私は満面の笑みを浮かべる。

それこそ、私が狙っていたものなのだから。


「ギース様。ホテルの滞在を満喫しましょう」


フロアは、美しく磨かれた大理石。階段にはえんじ色の絨毯が敷かれている。窓にはめ込まれたステンドグラスは丁寧に磨かれ、館内のあちらこちらには、庭にあった美しい薔薇が飾られていた。


「こちらのお部屋が、本日ご滞在いただくお部屋です」


スイートルームの扉は他の部屋の扉とは異なり、木の扉にモザイクタイルが飾られている。これは私の今のお義父様であるスジューラク公爵領の名産だ。せっかくなので、こうした部分で協力をしていけたら、と相談したら提供いただけた。ラッキー。


部屋の扉を開けると、百合の花の香りがする。

一番大きな棚に、百合が飾られていたのだ。気持ちがほんわりするわぁ。


ベッドには天蓋がつき、カーテンもやわらかなクリーム色。床は木目込みの飾り床になっている。


「素晴らしい作りだ。他の部屋も?」

「はい、床の作りは同じにございます。こちらのお部屋は、家具の数と部屋の数が他と異なる形です」

「それは良いわね。スイートルームを使わなくても、この美しい床や、調度品を楽しんでいただければ、何度もお泊まりいただけるもの」


スイートルーム以外はがっかり、だと、客は来なくなってしまう。

やはり『自分が出せる少し頑張った金額』で素晴らしい体験ができることが、ホテル作りの要だと思う。


「お荷物はこちらに置かせていただきます」

「ええ、ありがとう」


荷物ラックにバッグを置くと、ベルスタッフは部屋を辞していった。


「レダ、これは成功するよ」

「ふふふ。ありがとうございます。旦那様」


抱きしめてくるギース様の腕の中で、私は観光業の皮算用を始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「ホテル(フォティルア)へようこそお越しくださいました」 「私、ホテル(フォルティルア)の支配人、ヴォーヌアールと申します。ギース・(フォルティア)様、レダ夫人でお間違いないでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ