40:アロマオイルのお尋ね者01
大量にヌッカヌガーが入手できるようになった。
それはとてもすごいことだ。
何故なら、ヌッカヌガーは三ヶ月に一度、しかも真冬でも収穫ができるから。
ただし、冬場は土の温度を高めに維持しないといけない。それができなかったために、冷害でやられてしまったのだ。
今回は私が以前提案した、麻のカバーを木の根元に施したらしい。それなら安心だ。
ヌッカヌガーが大量に採れるのであれば、その使い途も無限に広がる。
先ずはベーシックにフルーツティ。これは領内の飲食店で必ず扱えるようにして、領地の名産品にしたい。
それから、ヌッカヌガーを使ったスイーツ。これは、各お店でレシピを考えて貰う。
もちろん、領民は格安で購入できるようにして、外だしは少し高めに値付けをする。
それから──
「失礼いたします。奥様にお約束外のお客様でございます」
侍女頭のスプリンが、声をかけてきた。
「私にお客様?」
「アポイントはないんだよね」
「左様にございます。その……、アロマオイルについてお話ししたいという女性でして」
「アロマオイル! 通して頂戴」
「まて! どんな女性なのか、素性なども確認して」
「でも、もういらしているんでしょう? だったら……、あぁギース様もご一緒なら良いかしら」
「……そうだな。それなら」
「それでは、客間にお通しいたします」
「うむ。俺たちもすぐに向かうから、このハーブティを用意してくれ」
「畏まりました」
ちょうどアロマオイルの事を考えていたのだ。
エステで使うオイルは、我が領地で作っているアロマオイルを使う。そしてそれをウリにする。
キャリアオイルと混ぜれば、そこまで大量には必要ないので、上手く領内の産業の需要と供給のバランスも取れるはずだ。
そこで一つ悩みがあったのだけれど。
ギース様と二人、客間に到着し、部屋に入る。
勿論、家令──この公爵領邸を取り仕切っているウィントル──が、先触れとして中に入った。
「ようこそ、公爵邸へ。私が領主のギース・フォルティア、こちらは妻のレダだ」
「初めまして。レダにございます」
部屋の中にいた来客は、立ち上がり礼を執る。
礼がとても美しい。上位貴族のご令嬢ではないかと思わせるものだった。
「突然お伺いいたしましたこと、お詫び申し上げます。私はテッサ・フックーニと申します」
「フックーニ……。もしかして、隣国の?」
「まぁ、よくご存じで」
隣国アメミヨン王国とは、海を挟んで、大陸が別ということもあり、そこまで付き合いがあるわけではない。
前世の世界のように、世界中が連絡を取り合える世界でもないからね。
別に付き合いがないだけで、仲が悪いわけではないのだ。
「とりあえず、おかけくださいな。ギース様も」
私の言葉に、二人とも腰をかける。
「私はアメミヨン王国のフックーニ侯爵家の三女です。とは言え、もう長年放浪の旅に出ておりますので、王国でも私の事を認識している貴族は少ないと思いますけれど」
テヘペロ、と言わんばかりに笑っている。
赤茶色の髪の毛に、緑の瞳が美しい。放浪の旅、とは言え、侯爵家の資金を以てしての旅らしく、そこまでみすぼらしいこともない。
良いなぁ、好きなだけ旅ができるのかぁ。
「テッサ様は、どうして旅を?」
「私は、アロマオイルの研究をしておりまして」
「まぁ! それは素晴らしいわ!」
なるほど。それでアロマオイルのことで、と来たのね。
「実は、知り合いを通じてですが、こちらの領地でオイルを使ったマッサージのサービスを検討していると伺いました」
「ええ、その通りよ。どちらのお知り合いかしら」
「お名前は申し上げられませんが、高貴な方、と」
なるほど。彼女は侯爵令嬢だ。上流貴族の中での噂で聞いたとかだろう。
でも、そうやって話題になっているのは良いことだ。
「それで、テッサ様は何を私たちにお話になりたい、と」
「はい。私を雇っていただけないかと」




