33:初夜の朝
目が覚めたら、がっしりとした腕の中にいた。
ギース様の腕、生身で見ると筋肉がすごい……。
昨夜、私とギース様は、正真正銘の夫婦となった。
最初はものすごく優しくて、気遣うように触れてたけれど、三回目くらいから、だんだんギース様が夢中になってしまい──まぁ、それはそれでとても良かったから……悪くないというか。
コホン。
「レダ、どうした?」
もぞり、と体を動かしたら声がかかる。その声がまた、色っぽくてドキドキしてしまう。
「そろそろ起きようかと思って」
「もう? まだ良いだろう?」
言いながら、私の額に唇を落とす。甘い。甘すぎる。
でも、私もそんなことを言いながら、この甘さに流されてしまっているのだ。
「今日くらいは、二人でのんびりさせて欲しいな」
「……明日からは、ちゃんとお仕事しましょう」
「もちろんだよ」
甘い表情に、甘い声。
甘いものづくしで、頭がクラクラしてきてしまう。
ぼんやりとしていれば、彼の手が私の髪を撫で、頬をさすり、キスを落としてくる。
まさか、あの公園で彼に声をかけられたときには、こんなにも大切にされるだなんて、思いもしていないなかった。
ずっと孤独に頑張ってきたレダが、報われたのかもしれない。
大切にされるということを、この身をもって知ることができたのは、本当に良かった。
「レダ? 何を考えてるの?」
「ギース様のことですよ。初めて会った日のことを」
私の言葉に、ギース様は笑みを浮かべる。
「あの日、あなたに出会えたのは、僥倖以外の何物でもないよ」
「ふふ。あの時はびっくりしました。絶対騙されてる、って」
「詐欺師かと?」
「まさか! でも、偽装結婚を持ちかけられているかと思いました」
あの日の出会いで、全てが変わったのだ。
直前に思い出した前世。でも、それだけだったら、家を出てどうにか働いて……それがこの世界でどのくらい実現できていたのかもわからない。
ギース様に出会えたからこそ、今の私がいるのだ。
「旦那様、ありがとうございます」




