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33/50

33:初夜の朝


目が覚めたら、がっしりとした腕の中にいた。

ギース様の腕、生身で見ると筋肉がすごい……。


昨夜、私とギース様は、正真正銘の夫婦となった。

最初はものすごく優しくて、気遣うように触れてたけれど、三回目くらいから、だんだんギース様が夢中になってしまい──まぁ、それはそれでとても良かったから……悪くないというか。


コホン。


「レダ、どうした?」


もぞり、と体を動かしたら声がかかる。その声がまた、色っぽくてドキドキしてしまう。


「そろそろ起きようかと思って」

「もう? まだ良いだろう?」


言いながら、私の額に唇を落とす。甘い。甘すぎる。

でも、私もそんなことを言いながら、この甘さに流されてしまっているのだ。


「今日くらいは、二人でのんびりさせて欲しいな」

「……明日からは、ちゃんとお仕事しましょう」

「もちろんだよ」


甘い表情に、甘い声。

甘いものづくしで、頭がクラクラしてきてしまう。


ぼんやりとしていれば、彼の手が私の髪を撫で、頬をさすり、キスを落としてくる。

まさか、あの公園で彼に声をかけられたときには、こんなにも大切にされるだなんて、思いもしていないなかった。


ずっと孤独に頑張ってきたレダが、報われたのかもしれない。

大切にされるということを、この身をもって知ることができたのは、本当に良かった。


「レダ? 何を考えてるの?」

「ギース様のことですよ。初めて会った日のことを」


私の言葉に、ギース様は笑みを浮かべる。


「あの日、あなたに出会えたのは、僥倖以外の何物でもないよ」

「ふふ。あの時はびっくりしました。絶対騙されてる、って」

「詐欺師かと?」

「まさか! でも、偽装結婚を持ちかけられているかと思いました」


あの日の出会いで、全てが変わったのだ。

直前に思い出した前世。でも、それだけだったら、家を出てどうにか働いて……それがこの世界でどのくらい実現できていたのかもわからない。


ギース様に出会えたからこそ、今の私がいるのだ。


「旦那様、ありがとうございます」


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