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22/50

22:結婚しちゃったね

「ありがとう。これから新しい一歩が始まる」

「ええ。末永くお願いしますね、ギース様」


王城を後にし、私たちは馬車に乗っていた。

ガタゴトと揺れる車内で並んで座っていると、今までは何ともなかったのに妙に気恥ずかしくなってしまう。


「レダ? どうかしたか?」

「いえその……。何だか恥ずかしくって」

「恥ずかしいって、例えば俺がこうしたら?」

「……っ、ちょ!」


ギース様は私の体を引き寄せ、頬を寄せる。すりすりと触れあう肌が、体温を共有して心地が良かった。

そのまま体はギース様の膝の上に移動させられ、顔中にキスを落とされる。


「ギ、ギース様! 馬車! 馬車の中です」

「だから? さっきまで散々人前だからって、我慢させられたんだ。馬車の中なら二人きりだし、良いだろう?」


甘い瞳で見つめられれば、嫌、とは言えない。

うう……。イケメン耐性がない上に、ギース様の顔には弱いのよ、私。


「ねぇ? 馬車なら良いよね?」

「う……」

「だめ?」

「い……いいで……す」


ついに私が折れることになる。言質を取ったと言わんばかりに、ギース様は私の体をさらに強く抱きしめては、耳朶やら頭やら額やら、頬やら、鼻の頭やら、顔中至る所に唇を落としていく。


「ギ、ギース様、そろそろお屋敷に着いたのでは」

「そうかなぁ」


さっき門が開いた音がしたもの! もう着くわよ!

馬車の速度も落ちてきている。

そう思っていたら、やはり馬車が止った。

扉の外からノックがかかる。


「あけて良いよ」

「えっ、ちょっと待って、今私まだギース様のひ──」


……ざの上、と続けようとした所で扉は開くし、ギース様は私を抱いたまま馬車から降りるし。

これは、初めて公爵邸に来たときと同じパターンじゃないの。


「もう、今更だろう。公爵邸の皆も、俺がレダに愛情をかけるのを歓迎してくれている」

「私が結婚したのは、本当に堅物公爵様なのかしら」

「そんな呼び名、他人が勝手に決めたことだろう」


そう言われれば、それ以上は言えないわね。

確かに、自分からそう呼んでくれと言ったわけでもないだろうし。


「それに、誰にでもこんなことしていたら、ただの変態だ」

「それはそう」


間髪入れずに返事を返したものだから、ギース様が大笑いしてしまっている。

ちょっと、笑うなら私を降ろしてからにして! 揺れるじゃないの!


執事のソワと、侍女頭のマティを始め、公爵邸の皆さんが並んでいる。

皆もなんだか嬉しそうに笑っていた。


「皆、出迎えありがとう。今日は良い知らせを持ってきた」


ええ、私を抱いたまま話すの……?

でも流石に、話を始めたギース様の言葉を止めるわけにはいかない。

どうにも居心地が悪いんだけれど……。

そんな私に気付いたのか、ギース様がそっと私を地面に降ろしてくれた。

良かったわぁ。


「レダ」

「? はい」


名を呼ばれたので返事をし、彼を見る。

すると、彼は私にそっと手を差し出した。これは、ここに手を乗せるのだな、と手を重ねる。

正解だったようで、ギース様がにっこりと笑う。

それには、私もにっこり。


「皆、本日付で、レダは正式に私の妻となった」


その言葉に、使用人たちは一斉に顔を見合わせる。


「レダ、何か言葉を」

「えっと……。あの……。け、結婚しちゃいました。その、これからもよろしくお願いいたします」


私の締まらないコメントに、ギース様は怒るどころか嬉しそうに髪を撫でてくる。

そして、使用人の皆さんは拍手をし、執事のソワと私の侍女でもある侍女頭のマティは、抱き合って喜んでいた。


なんかほんと……、締まらないコメントで、ごめんね?

結婚、しちゃった。

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