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18:下がるなら 下げてほしいの 税金は

ギース様が何故そんなにも驚いた顔をしているのか、全くわからない。

なにか変なことを言ったのだろうか……。


「大蔵卿に相談?」

「あ、あの。もしかして、ギース様……というかフォルティア公爵家と大蔵卿の、えぇと確かモネイーヌ侯爵でしたか……、そちらはあまり仲がよろしくないとか、因縁があるとか」


私の言葉に、彼は軽く首を振る。


「いや、そういうものではなく、相談をするということに思い至らなくて」

「えっ」

「えっ?」


思わず驚いた声を上げれば、ギース様が疑問形で返してくる。

聞きたいのはこっちよ。


「いえそれは、収入が減ってもギース様、というかフォルティア公爵家からの、減額の相談はしなかった、という事でしょうか」

「ああ。大蔵卿側から多少の減額の話をいただいたので、それを受けたが」

「それは……何故でしょう」

「何故? いや、上位貴族として」

「上位貴族として?! はぁ?!」


思わず、馬鹿なの? と続けたくなったが、そこは飲み込んだ。褒めて欲しい。


「良いですか?! あなたの仕事は領民を守ること。領地を繁栄させること。その為には何が必要だと思いますか?」

「何が? えっと……か、金か?」

「そうです。何をするにも、先立つものが必要です。武士と貴族は食わねど高楊枝かもしれませんがね、平民は矜持じゃ食っていけないんですよ」

「ぶ、武士?」


どうでも良いところに食いつくわね。そこは流してよ。私もうっかり言っちゃったんだから。


「税収で足りない分は、公爵家の財産を」

「それがダメなんです。公爵家の財産は、領民の財産。はい、繰り返して」

「こ、こうしゃくけのざいさんは、りょうみんのざいさん」


ひらがなに聞こえるけど、気のせいよね。


「領主は伏してでも、税金を下げてくれるように頼むべきだし、それを聞かない大蔵卿であれば、それは資料を用意して国王陛下に直訴すべきです」


大蔵卿も財務省も、国民や領民のことを考えられないのであれば、すべて解体してしまえば良いのよ。

どれだけ税金に苦しめられてきたか。氷河期世代の私たちは、チュウチュウ吸い尽くされるだけ吸い尽くされたんだから。あぁ、つい前世の呪いのような気持ちが溢れてしまったわ。


「ちょっとところどころ、理解が達していないところはあるが、あなたが言いたいことは、概ねわかった」

「……ちょっと口調が強すぎたわね。ごめんなさい」

「いや、言ってくれて目が覚めたよ。確かに俺は、もっときちんと大蔵卿に我が領のことを話して減税を依頼すべきだったんだ」

「いいえ、ギース様。今からでも遅くありません。減税と、還付をしていただきましょう」


私はこの数年の経理書類を脳内で紐解く。上手くプレゼンすれば、どうにかなる可能性が見えるのだ。


「大蔵卿とは仲が悪いですか?」

「いや、むしろ何度も声をかけていただいていた」


それ! それはむしろ、相談する機会を作ってくれてたんじゃないの。

でもそれならば、絶対にうまくいく。


「ギース様、今日はもう夜が遅いです。明日、計画を練りましょう。そしてすぐに大蔵卿にお会いする約束を取り付けて下さいませ」

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