13:貧乏公爵領を知る
「なるほどなるほど」
公爵領の状況を勉強していると、どうして今貧乏なのかが良くわかった。
一つ、公爵領は思っていたよりも広い。
一つ、一昨年の異常気象とそれに伴う災害とは、冷害と大雨による崖崩れだった。
一つ、税金は多少免除されているとはいえ、元の公爵領分に近い金額を支払わないといけない。
「なるほど。結構大変ね。前公爵ご夫婦はこの崖崩れで亡くなったのね」
「はい。冷害と大雨の被害の視察に行った際に」
私は今日何度目かの「なるほど」を繰り返す。
この領地の特産物を全て確認し、それがどう活用されているのかをチェックする。
ギース様は一足先に領地に向かっているので、私も明後日には領地に向かう。一緒に行けば、と思ったけれど、私の体力が持たない可能性があるからと言って、一週間食事をしっかりとって体力を復活させたのだ。
公爵邸の馬車は今は一台しか稼働させられないので──メンテナンスもそれなりにお金がかかるからね──ギース様を送った馬車が戻ってきたら、それに乗っていくことになる。
前世の記憶が、何かしら役に立てば良いけれど、別段物事に詳しいわけではないので、どうだろうか。
ただ、前世の情報もこの世界ではまだ発見されていなかったり、気付かれていない情報である可能性はある。そうだとしたら、ラッキーだろう。
「公爵領、もともとは温暖な気候なのよねぇ」
「その通りでございます。フォルティア公爵家は、初代が王弟殿下でございましたので、それはそれは良い場所に広大な領地を頂戴しております」
ここタスナフィ王国の初代国王とその弟は、非常に仲の良い兄弟だったという。国王を助けた王弟に国王は深く感謝をし、フォルティア公爵領を与えたとか。
もう数百年も前の話なので、どこまでが本当かは分からないけれど、とりあえずその歴史に凄いなぁと思うばかりだ。
まぁ元我が伯爵家も、その数代後くらいから付き従う廷臣だったらしいので、似たり寄ったりか。とはいえ、そこまで地位が高くないから、領地もそんなに広くはなかったけどね。
「王族の血筋だから、ギース様はあんなに美しいんでしょうかねぇ」
「おや。奥様もお美しいですよ」
「まぁ私のは、侍女の皆さんが盛って盛って盛りまくってくださったからですよ。ギース様は天然じゃないですか」
「天然……。いや、奥様も十分……あ、いやこれ以上言うと、旦那様にうるさく言われますな」
教師の代わりをしてくれている執事のソワが苦笑いをしている。なんだろう。ギース様が何を言うというのか。
「とりあえず、現地でどんな風に農業をしているのかを確認して……うーん、自然災害にあったときに、潰しがきく産業が欲しいわよね。工業製品になりそうなものがないかも、確認してみましょう」
領地の人口や、地形、一年を通した月ごとの平均気温や湿度などを確認しつつ、各集落の場所を確認する。
「ん、ここは?」
「そちらはガラス工房の残骸にございます」
「ガラスを作っているの? さっきの情報には出てこなかったけど」
「それが、土砂崩れの下になってしまい……。その後職人の多くは他の領地に移住してしまったのです」
「……な、るほ、ど」
職人の流出は痛いわね。
どうにかして戻ってきて貰いたいなぁ。
「ちなみに、どちらの領地に移住されたんですか?」
「それが……」
「ええ」
「ルイジアーナ伯爵領でございます」
「……なーるほど」
元実家であるルイジアーナ伯爵領のことは、恥ずかしながらよく知らなかった。ただ、それを知ったからには、是非ともルイジアーナ伯爵領に移住した職人達を呼び戻したい。
他の領地であれば、そちらでの産業への影響を心配してしまうが、ルイジアーナ伯爵領ということならば、遠慮はいらない。
もちろん、領民に迷惑をかけたいわけではないので、他の産業含めてよしなにさせていただこうじゃないの。
この国は、領民の領地移動を特に咎めることはしない。前世で言うところの、県をまたいだ引っ越し的な感覚だ。公爵領が潤えば、伯爵領の皆さんが我が領にお引っ越ししてきてくださっても、まったくもって構わない。むしろウェルカムだ。
「私が元ルイジアーナ家の人間だということは、ギース様から聞いているわよね」
「はい、伺っております」
「恥ずかしいことに、私は領地に行ったこともなければ、領地のことを何も知らないの。なので、あの領地の場所から主産物から、こちらで分かることで良いので、教えてもらえないかしら」
私の生い立ちまで聞いている筈の執事のソワは、意図を汲み取ってくれたようで、悪い笑みを浮かべながら、畏まりましただなんて嬉しそうに言った。
ふふ。レダの事を無視していた前伯爵である祖父母が困っても、まったく構わないわ。まぁ……領民に罪はないのでどうにかするけれど、しっかりきっちり伯爵家の皆様にはお礼を引き続きしておかないとね!




