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その後はマリアンヌの情報を元に、
いくつかのお茶会に出席した。
情報は大切だし、マリアンヌの情報は信頼しているが、
それだけでは足りない。
例えば、『歌が上手い』と聞いても、
貴族令嬢として上手いのか、プロレベルなのか、
その声はどういう声なのか、どう上手いのか、
どうしても情報だけだと足りない部分があるからだ、
また、自分の家を支えてくれている分家へも、
顔を出しておいて、繋がりを強化しておく事も必要である。
他にも、領地の商品を大量に扱ってくれている、
商人の交流会に出席して、パイプを強化しておく。
(流石に疲れたわね)
王都に着いてから、人に会い、話をしっぱなし。
書類仕事に追われていた頃はそれはそれで大変だったが、
精神的疲労が半端ない。
「働きすぎです」
ミナに半泣きで言われてしまった。
「王都にいられる時間は短いの、有効に使わないと、
それとそろそろドレスをオーダーするわ」
数回お茶会に出席して、今の王都の流行は掴んでいた。
継母に頼んでデザイナーは押さえてあるので、
すぐに製作してくれるだろう。
「はい、すぐに手配します!」
ミナの仕事は迅速だ、元々継母から連絡は行っているが、
次の日にはデザイナーと会う約束を取りつけてしまった。
貴族は屋敷にデザイナーを呼ぶのが普通だが、
私はいろんな布を見たいので、デザイナーの店へ
足を運ぶ事にした。
王妃選びのドレスのオーダーとあって、
店は貸し切り。
王都の一等地に建ち、いかにも高級な店と分かる店構えだ。
デザイナーを筆頭に、お針子がずらりと並んで出迎えてくれた。
「よろしくお願い致しますわ」
「当店をご利用頂き、光栄でございます」
初老にさしかかったデザイナーに希望を伝える。
「最新のデザインでございますか?
王子は古典デザインが好きでいらっしゃいます、
そちらの方が、いいかと思いますが」
「いいえ、他の方と同じでは、かぶってしまいますわ、
私は斬新なデザインで勝負をしたいと思いますの」
まったく王妃選びで勝つつもりはございません、
と言う言葉を心の中で飲み込み、
笑顔でリクエストする。
「他の方のリサーチもお済みとは流石ですのね、
かしこまりました、誰もが目を引くデザインにさせて頂きますわ」
「よろしくお願いね」
新しい取引が生まれるかもしれないし・・・
こうして、王子以外の人の注目を狙ったドレスを、
デザイナーと生地選びから熱中して依頼した。