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王都に着くと、王都の邸宅にすぐに向かう。
すでに領地から連絡がいっており、執事、メイドに出迎えられ、
完全に住める状態に整っていた。
ミナに手伝ってもらい、お風呂に入り、マッサージをしてもらう、
その後部屋着に着替えて、手紙の山に目を通す。
主にお茶会の招待状で、これらのうち、いくつかに出席する予定だ、
いきなり王妃選びに行くほど馬鹿ではない、
どんな令嬢が候補に挙がっているのか、
他にも最近の貴族情勢の情報など集めておく必要がある。
(あら、やっぱり来たわね、相変わらず仕事が早い)
その中の一枚の手紙に目を通して、思わず微笑む、
すぐにミナに返事を書く手筈をしてもらい、
会いたい旨を伝える。
基本的には、お茶会は数人で会う、
しかし、その手紙の主だけは、1対1で会う事にした。
3日後、その手紙の主、マリアンヌ・ラ・ジェファーソンの
屋敷に向かう。
出迎えてくれたマリアンヌは30代とは思えない美貌を誇り、
黒い髪、グレーの瞳で一見暗そうに見えながら、
唇は濃い赤で色どられ、妖艶な雰囲気を漂わせる。
お金と引き換えに若くして老人の後妻として嫁ぎ、
貴族社会ではいろいろ言われただろうに、
そんな雰囲気をまるで感じさせない。
居間でアフタヌーンティーを楽しみながら、
しばらく他愛のない話をする。
それから、いきなり本題に踏み込んだ。
「今度の王妃候補、誰が選ばれそうかしら?」
「そうね、候補にあがっているのは、
公爵令嬢のキャサリン・フォン・アヴェーツァ、
そして、同じく公爵令嬢のテレジア・フォン・イニエスタ、
そして、貴女ね」
「そう、ありがとう」
(予想より少ない、そして私もしっかり候補に挙がっている)
一番にマリアンヌに会う事にしたのは、
この事を確認したかったからだ、
マリアンヌは知る人ぞ知る、情報通、
そして、下らない噂などには絶対誤魔化されない。
その情報は何より信頼できる。
「王子はどんなドレスがお好みかしら」
「王子は古典的なデザイン・・・白いドレスがお好みよ、
キャサリン様もテレジア様も、そのデザインでドレスをオーダー
しているわ」
「そうなのですわね」
どんなドレスをオーダーしたかまで知っているとは・・・
上位貴族がどんなドレスを着ているかは噂になりやすいが、
戦場ともいえる、王妃選びのドレスの情報を持っているのは、
流石としかいいようがない。
「いつもありがとうございます、感謝しておりますわ」
そう言って、海外から仕入れた布を渡す、
最高級品で、高価すぎて王都にも流通していないものだ。
「王妃様に献上した後なら、問題ないはずでしてよ」
そう言ってウインクする私に、マリアンヌは嬉しそうに微笑む。
「お役に立てたかしら」
「ええ、とても、感謝しておりますわ」
そう言って、貴族の勢力図などについて、
更に、詳しく話を聞いた。