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書類に目途がついた時点で、すぐに王都に向かって旅立った。
パーティまでは後3か月あるが、ドレスを作ったりすると、
決して早い訳ではない。
屋敷の面々に、まるで戦場に送り出されるかのような、
盛大な見送りを受けて、旅立った。
道は大きくて馬車もさほど揺れる事もなく快適、
思っていた以上の道路の良さに感動する。
海外からの輸入品を運ぶ重要なルートであるとともに、
戦場になった時、すぐさま兵士や物資を送れるよう、
重点的に整備しているが、予想以上だ。
爺によると、他の領地だとお金が回らず、
ここまできちんと整備されていないんだそうだ、
「私の領地は恵まれているのね」
「交易で潤沢な資金があるのはもちろんですが、
レオノーラ様を始め、領主に恵まれていたのです」
確かに、道の補修で大金が必要で、
少し腕を震わせながら、決裁の書類に判を押したわねと、
過去の自分を懐かしく思う。
今まで、民の為に一生懸命だった、
それがこうして実際に自分が民の為に役立っている事を
実感して嬉しく思う。
途中宿に泊まったが、どこも恐縮しながらも、
歓迎してくれた。
普段は家と商売ギルドを行き来し、市場を覗くぐらいの生活で、
商売ギルドもすっかり顔なじみで、気さくに話してくれる、
むしろ、気さくすぎて、口論するぐらいだ、
そんな感じで、“高い身分”だが、垣根のない生活をしていた。
しかし、海外の交易も盛んな領地である、
時々、海外の高官を屋敷にお招きする事もある。
そんな時の為に、社交術も身につけていた。
馬車から手を借りて降りるだけで、その場に溜息がもれる、
人々は自然に頭を下げ、丁寧に出迎える。
その高位貴族ならではのオーラに圧倒されると共に、
自分の領主の関係者が、美しく気高い人物である事に誇りを持つ。
宿に着いて、ほおっと息をつく。
「馬車を降りて、宿に入るだけで一仕事ね」
「相変わらず、素晴らしい対応です」
メイドのミナが誇らしげに語る。
王妃選びの旅なのだ、普段は質素倹約で、
動きやすい服装をしているが、この旅ではそうはいかない、
辺境伯令嬢として、恥ずかしくない恰好をしていた。
とはいっても、海外から買い入れた最新の布を使って、
その布のアピールも兼ねている。
どこまでも領地ファースト。
宣伝係、広告塔、なんでもOK。
まったくブレないのがレオノーラであった。