10-1 王妃選抜 最終日
王妃選抜も最終日となった、
5日目と同じく、王妃に呼ばれお茶をする。
お茶に参加するのは、キャサリン嬢と私のみ、
テレジア嬢は本当に辞退してしまったようだ。
王妃様とは他愛もない話が続く、
以前はシャルロッテ嬢が話の中心だったが、
ここがアピールポイントとばかりに、
キャサリン嬢が話をしていた。
私は話に相槌を打ちながら、違和感を感じ、
いつでも動ける体勢を取る。
いつもは私達の裏にいるはずの護衛がいず、メイドがいる。
しかも、そのメイドは少し違和感のある動きをしているのだ。
しばらく、そうして気をはっていると、
メイドの1人が動いた。
私はとっさに隣にいる、キャサリン嬢を押し、
メイドの攻撃が当たらないようにする。
幸い敵は1人のようだ、先ほどの違和感を感じたメイドは、
騎士のような、訓練された動きをする。
幸い、メイド服なので甲冑ではない、
攻撃を入れると、普通に効いていた。
こういう正統派には、下町で使うような手が案外効いたりする。
今まで訓練してきた武道の他、
下町でごろつき相手に培ってきた戦闘方法を入れる。
そうして組み合いをしていると、
やはり変則的な攻撃には弱いらしく、隙をみせた所で、
腕を取り、地面に組み伏せる。
そこで。
「そこまで!」
と王妃の声がした。
そこまで?
ここに来て、このメイドが王妃選抜の為、
わざと配置された人材だと気づいた。
「レオノーラ嬢、お見事だったわ」
王妃が手を叩きながら言う。
キャサリン嬢はまだ庭に座り込んだままで、
呆然とした顔をしていた。
「失礼いたしましたわ」
そう言ってキャサリン嬢を立たせようと手を差し伸べる。
キャサリン嬢はその手を取らず、立ち上がろうとするが、
腰が抜けていて、立ち上がれないようだった。
先ほどまで戦っていたメイドが、
「失礼します」
と言って、キャサリン嬢を抱っこして、椅子に座らせる。
キャサリン嬢は下を向いて、泣きそうな顔をしていた。
そんなキャサリン嬢を心配そうに見ていると、
第一王子が駆けつけて来た。
「母上!賊が現れたと言う事ですが!!!」
「ええ、レオノーラ嬢が戦ってくれたわ」
「レオノーラ!!!」
そう言って、第一王子は私を抱きしめる。
そして、はっとなったように、私を離して。
「怪我はないか!痛い所は!」
そう叫ぶように言う。
「私は大丈夫です」
そう笑顔で言うと、
「良かった」
そう言って、ぎゅっと私を抱きしめてくれる。
「あら、レオナルド、母の私も、キャサリン嬢もいるのに、
心配なのはレオノーラ嬢だけなの?」
王妃の言葉に、第一王子は気まずそうに、
御無事でなによりと言葉をかける。
「あえて、今日の事はレオナルドには言わなかったけれど、
効果はあったようね。
自分にとって誰が大事なのか、分かったのではなくて?」
そうして、今日のテストは伏兵に対する対処で、
私が見事に敵の役目をしていた女性兵士を封じ込めたと、
王妃様が語った。
まだ、私を抱きしめたままの第一王子に、
キャサリン嬢が立ち上がり、優雅にカーテシーをする。
「もう、レオナルド様の御心は定まっているご様子、
私、キャサリン・フォン・アヴェーツァは、
レオノーラ・デイ・フェレジア様が王妃となられる事を認め、
支援する事を誓います」
「キャサリン嬢」
「ふふふ・・・どうやら円満に王妃が決まったようね、
2人で話でもしたらいかがかしら」
「王妃様」
私は、第一王子と顔を見合わせた。




