7-2
それから私は何も考えられなくなった、
気力も何も出てこない。
私はもう必要ない人間なんだ・・・・
そんな思いが私を支配する。
メイド達は心配そうにしながらも、
何も言わないでいてくれた。
私の好きなケーキを用意してくれる、その優しさが嬉しい。
周りに迷惑をかけていると思う、
あれほど気にかけていた、領地の書類も、
間違いがないようじっくり検討しないといけないのに・・・
そんな気分でいると、2回目の王子の面会の日となった。
正直、今は誰とも会いたくない、
誰とも話したくないが、仕方がない。
会った王子は、笑顔で相変わらず優しく接してくれるが、
私は「はい」「そうですわね」と返すのが、精いっぱいだった。
しばらく、温室を散策した後、ベンチに座る。
王子がいきなり切り出した。
「何かあったの?」
「申し訳ございません」
「謝る事はない、ただ元気がなくて気になるだけだ」
「私事でございます、王子を煩わせる訳には参りません」
「結婚すれば夫婦になる、特別な人だ、
胸の内を打ち明けてくれてもいいのではないか」
その言葉に、全てがどうでもよくなる、
私は前を見ながら、語りだした。
父親が事務仕事が苦手で、民が困っていた事、
山積みの執務室の書類、
他国からの貴人の歓待、
「ずっと領地の為に生きてまいりました、
その事が家族を守る事だと思って・・・・」
「そうか」
「でも、もう私は必要ないそうなのですわ、
もう、価値がない人間なのです」
「そうか」
王子は、そんな事はない、価値のある人間だとは言わなかった、
王子なら、私がいなくても、自分の部下を配置し、
領地を問題なく運営できるからだろう。
それをお互い分かっているので、
ただ、無言で温室の植物を眺める。
しばらくして、王子がぽつりと言う、
「君は領地を、領民を、家族を愛していたんだね」
その言葉に、体がびくんと跳ねる。
王子はゆっくりと私を抱きしめる。
「大丈夫だよ、皆君を愛している、
領民も家族も、皆愛しているよ」
その言葉に涙がどんどん溢れてくる、
今までの苦しい思いが、一気に爆発する。
「う・・・うううう・・・」
泣き出した私を、王子は優しく抱きしめてくれる。
「皆、君を愛している」
「うわあああ・・・」
王子の胸の中で、気持ちがもうセーブできず、
わんわんと声を出して泣いてしまった。
そんな私を王子は泣き止むまで、ずっと抱きしめてくれていた。