7-1 王妃選抜 後半
3名に絞られたまま、王妃選抜は続く、
とは言っても、毒の件以外は大きなトラブルもなく、
時間は持て余す程あり、王宮の本や資料を読んだり、
メイドにお肌の手入れをしてもらったり、
のんびりした時間が過ぎていった。
「領地の書類、本当に少ないのね」
いつも机に山積みになっていた事を思うと、
本当にびっくりするぐらいの少なさである。
「お嬢様が、王妃になられても大丈夫なよう、
皆頑張っておるのでしょう」
「でも、私がいなくなれば、困るのではなくて」
軽く言って、返事がない事に疑問に思う。
「お嬢様は必要ございません」
「爺?」
爺はくり返す。
「もう、お嬢様がいらっしゃらなくても、領地は立ち行きます。
それに王妃の故郷となると、優秀な官僚を招くのも容易いでしょう、
お嬢様には、王妃様になって頂いた方がいいのです」
「私が・・・・王妃に?」
「強力な後ろ盾ができる、その方がよほど意義がございます」
「そんな・・・今更」
私は爺のいきなりの言葉に呆然となる。
今まで私が領地を支えてきた、
領地には私が必要なはず、
私は必要とされる人間なはず・・・・
どんどん混乱してきて、気分が悪くなってくる。
とうとう黙り込んでしまった私に、爺が続ける。
「王妃選抜の時。皆がお嬢様が王妃に選ばれると言っておりました、
王妃になられる事を困ると言った者は誰もいないはず」
その言葉に頭が殴られたような気分になる。
そうなの?
私は王妃になった方がいいの?
領地の皆は、もう私が必要ではないの?
爺の淡々とした、冷静な言葉が、
胸にぐさぐさと刺さる。
そう言えば、誰も領地にいて欲しいとは言わなかった。
領地に、私が必要だと勝手に思っていただけ?
本当は必要ではなかったの?
足元がふらふらして、床が抜けたような錯覚に襲われる。
領主の娘である事が私の居場所だった。
領民に必要とされている事が幸せだった。
これから、私はどうすればいいの?