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テレジア嬢の部屋に着いたものの、
面会の予定もなく、連絡も入れてなかった為、
少し時間を取りつつも、何とかテレジア嬢と会う事ができた。
「体調はいかかですか?」
テレジア嬢からはなんの答えもない。
だんだん毒が効いてきて、今は相当苦しいだろう、
今程ではなかったとは言え、
顔色一つ変えず、周りにまったく悟らせる事もなく、
演奏をした胆力を素直に称賛する。
「これは、解毒剤です、
大抵の毒には効きますから飲んで下さいませ」
じっと私を見つめるテレジア嬢に続ける、
「キャサリン嬢はお付きの者から薬をもらわれましたが、
演奏をしたので合格との事ですわ、
なので、この薬を飲んでも王妃選抜に不利にはなりませんことよ」
しばらく、私と薬を見て、テレジア嬢が口を開く。
「条件は何?」
「条件?」
「取引なのでしょう、望みは何?」
「取引などではございませんわ、
私はたんにテレジア嬢に良くなって欲しいだけですもの」
「信頼できると?」
「それは、テレジア様がお決めになればいい事、
不信に思われるのなら、薬をお飲みにならなければよろしいですわ、
ただ、毒はどんどん効いてきます、
明日からの選抜に影響が出る可能性がある事は、お忘れなきよう」
テレジア嬢が手を伸ばしたのを見て、
ピッチャーからコップに水を入れて、
テレジア嬢に渡す、
テレジア嬢は、一気に薬を飲んだ。
「おかしな方ね、私が倒れた方が、いいでしょうに」
「苦しんでいる者をほおっておけない、
自分が救えるすべを持っているならなおさら、
それだけですわ」
「馬鹿な方なのね、私は宰相の娘よ、
高額なお金をふっかける事もできたでしょうに」
「あまり考えると、体が休まりませんわ、
毒で体力は落ちているはず、
ゆっくりとお休み下さい、
それでは、私はこれにて失礼いたしますわ」
踵を返して、メイドがドアを開けようとした時、
「ありがとう」
とぼそりと聞こえた。
「早く、良くなられる事をお祈りしておりますわ」
そう言って、部屋を後にした。