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今日は王子とお会いする日です、
と言われ、何を話したら?と頭に疑問が浮かぶ。
「ドレス、パーティの時のしかございませんの」
暗に、王子と会うの無理だよね?
そう言うと、王宮のメイドがすぐさまドレスを用意する。
おおう、魔法使いですか?
その後もアクセサリーや小物が全て準備され、
しかもそれが自分にぴったりで、
王宮の城には、魔法使いがいると確信する。
着飾った姿で、第一王子の元へ向かう。
「綺麗だね、どんな花より美しい」
そう言って、手にキスをされる。
お約束の社交辞令とは言え、
かっこいい男性に、さらりと言われると、胸がどきどきする。
パーティの時はオールバックできっちりしていた髪も、
今日は下ろしてさらさらしている。
それだけで、元々優しい印象が、更に優しく感じる。
「第一王子も、今まで会ったどんな男性よりも素敵ですわ」
「本当?」
「しかしこの事は秘密で」
手を口の前でシーとサインを出す。
「どうして?」
「お父さまが拗ねるからですわ」
そう言うと、第一王子は楽しそうに笑った。
本当に笑顔が素敵な方ね。
第一王子と何の話をするべきか、話題に困っていたが、
実際話してみると、すごく話があった、
領地の話を面白そうに聞いてくれるし、
国の立場からいろんな意見をくれる、
爺とは領地の話をするが、それとはまた違った発見があり、
ずっと繋ぎを取りたいと願っていた公爵を、
紹介してくれると言ってくださった時は、
思わず手を握ってしまった。
正直、こんなに充実した時間を過ごせるとは思っていなかった、
第一王子は、次期王として、十分な知性を持っている、
「ここまで、国にお詳しいなんて、そうとう努力をされたので
しょうね」
「子どもの頃、勉強すればご褒美に街に連れて行ってもらえて、
城から出たかった私は、必死で勉強したんだ」
「街へ出たかったのですか」
「露店でりんご飴を買うのが、最高に幸せな時だったんだよ」
「まあ」
王宮で豪華な料理を毎日食べているはずなのに、
りんご飴が好きだった事に微笑ましく感じる。
「レオノーラ嬢は、子どもの頃、どんな食べ物が好きだったの?」
「私は・・・」
こうして、気が付くと話が弾み、時間はあっと言う間に
過ぎていった。
もちろん領地について話すものの、深く運営に携わって
いた事は話していない、
ほとんど雑談だし、問題ないでしょう。