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「来てくれたのね爺!」
「ははは、お嬢様がいる所が、儂の居場所ですじゃ」
「ありがとう!」
思わずハグをする。
私付のメイドに、書類について詳しい者を呼びたいと言うと、
あっさりと許可が出た。
これで領地の書類が捌ける~
とは言え、王妃選抜の書類もあるので、それもサクっと終わらせる
事にする。
内容は王妃が目を通すべき書類で、機密事項に該当しない書類が、
用意されているらしい。
とは言っても、優秀な官吏が纏めた書類な上、
自分が決裁をする必要もないので、気楽なものだ。
まずは爺が目を通し、大まかな概要を説明し、
私が目を通すと言う作業をする。
「流石、国全体となるとケタが違うわね」
書類に書かれた数字を見て言う、
「国は広いですからな」
「軍事費、思ったより少ないわね」
「ここ数十年、戦争がなく、治水も巡らされ、
災害などの有事の時ぐらいしか、出番がないからでしょう」
「うちの予算とはえらい違いね」
「国境にある上、軍事の要所ですからな」
「本当ね」
こうやって見ていると、自分の領地がいかに交易で栄えているか、
国全体の視点で見られて面白い。
「キャサリン嬢の領地に、ずいぶん食料依存しているのね」
「気候の問題でしょうな、温暖な上、台風などの災害も少ない
ですからな」
「とは言え、麦がメインだから、他の地域は芋とかに、
もっと力を入れてもいいのでは?」
「自分の家で食べる程度は作っていますが、
あまり買い取り手がいないので、広まらないのでしょう」
「でもこのままでは、何かあって麦に大打撃があったら、
食料不足に直結するのでは?」
「なるでしょうな、しかし、今の所、
備蓄しか対処法がないのが現実でしょう」
「そう、ま、国の事は国に任せるわ、
一通り目を通したし、領地の書類をお願い」
「はい」
爺から渡された書類に驚く。
「思ったより少ないのね」
「昨年までと、ほぼ同じで対応できているからでしょう、
突発的な事がなくてなによりです」
「ええ、そうね・・・・」
そう言いながらも、書類の少なさに、何となく寂しい思いをする、
昔は自分が全て背負っていた、今は、私1人の仕事なんて、
本当はこんなに少ない・・・