4-1 波乱のパーティ(王子サイド)
婚約者探しのパーティが始まった。
私の好きなドレスは古典デザインで、白色である事は、
広く知られているので、皆その装いで来ている。
妹とファーストダンスを踊ると、
自分を売り込む女性達に囲まれてしまった。
普段ならここまであからさまに囲まれる事はないが、
婚約者探しのパーティである事は知られている、
仕方ないなと、対応する。
囲まれているとは言っても、身分が上の者からしか、
話しかける事は許されない、
一気に女性達が話し出す事がないのが救いだった。
まずは、テレジア嬢、次にキャサリン嬢と話しをする、
それから、侯爵令嬢、伯爵令嬢と頭の中のデータを思い起こしながら、
話をしていく。
皆と話したかな?と思った時、10人としか話していない事に気づく、
候補は11人いたはず。
そう言えば、レオノーラ嬢と話していない。
王妃候補の3人の内の1人、どうしても話しておきたい。
侍従にレオノーラ嬢がどこか聞く、
すると伯爵と談笑している令嬢が、レオノーラ嬢だと聞いた、
そして、レオノーラ嬢が赤いドレスを着ている事に驚く。
更に侍従に、上級貴族にそつのない対応をしたばかりか、
歴史が古い貴族なら見下す、新興貴族、しかも伯爵家に、
丁寧に対応し、様々な取引を持ち掛けていたと聞いて、
更に興味が湧いた。
どうやら、社交術に優れている女性らしい。
ドレスも白色ではないが、最先端のドレスである事は分かる、
大人びて体全体で魅力を放っている。
彼女に話しかけ、名前を呼んで欲しいと言うと、
固辞された、これは私の妃になるつもりはないと言う事だと察する。
ドレスが赤であった時点で、そんな予感はしていたが、
これは仕方のない事だ、頭の中で彼女を王妃候補から外す。
その後、思いがけない事が起こった。
パーティに招いた令嬢が、メイドを突き倒し、
レオノーラ嬢のドレスにワインをかけてしまったのだ。
メイド長が棒叩き50回と言っているのを聞いて、
あのメイドは、死んだ事にして、こっそり城から出そうと考える、
こんな事で有能なメイドを失うのは痛手だが、
罰を与えない訳にはいかないし、若い女性に傷を負わせるのは、
酷だろう。
そう考えていると、レオノーラ嬢が、バッカスの祝福と言って、
その場を収めてしまった。
調査で、民に好かれていると書かれていたが、
これがそうなのかと納得する。
会場全体の視線を受け、優雅なカーテシーをする姿は、
人の上に立ってきた者である事を感じさせた。
その後、母親の王妃の計らいで着替えをする事となった。
本人の帰りたいと言う思いが、感じ取れて苦笑する、
おそらく王妃に挨拶をしてすぐ帰るのだろう、
そう軽く考えていた。
そして、会場に戻ってきたレオノーラ嬢に、
視線が釘付けになった、
王妃の「ほら、いいでしょう」と言う心の声が聞こえてきそうだ。
赤いドレスの大人びた妖艶な姿も良かった、
しかし、自分好みの姿をしたレオノーラ嬢に心が奪われる。
可愛い!
先ほどのメイクでは分からなかったが、どうやら童顔のようだ、
真っ白な子犬が、くーんと自分を見ているようだ。
どうしよう!好み、ドストライクなのだが!
ダンスを踊ると、顔を赤らめていて、更に魅力の虜になる。
頭の中で、王妃候補から外すつもりだったのが、
逃がしてなるものか!と言う気持ちになる。
もっと話したい、自分のものにしたい・・・
募る思いを胸に、彼女を王妃候補の1人として宰相に告げた。