恋してると周りが見えないよね
あの人が好き!
夜、ロマンチックな公園で彼に電話した。
「こんばんは。今時間ある?」
「こんばんは。ちょっとならいいよ」
やったー。
「明日の二時限、小テストの出題範囲教えて欲しいんだ」
とかなんとかかこつけて、話を長引かせたい。
いーしやーきいもー、いもーいもー♪
石焼き芋屋さんが車でこっちに近付いてくる。
「なに?石焼き芋?お前、今どこにいんの?」
訝しげな彼。
「ちょっと、家はうるさいから近所の公園」
「そっちの方がうるさかろ?何やってんだ」
「まってまって。切っちゃやだ」
切羽詰まって電話握りしめる。
いもいもー。あったかーい石焼き芋はいかがですか?
大音響。しかもこっち来るなって願ってるのに、余計近付いてきておっちゃんが私をじろじろ見る。
女の子1人で何やってるのか、とか、芋買ってくれないかな、とか表情にありありと見て取れる。
「俺、忙しいから」
「え」
プツン。ツーツーツー。
明日絶対、芋食っただろう、って言ってくるぞ。
私は半ベソをかきながら、ほくほくのお芋を食べて今度はどうすればいいか考えていた。
「わっかんないや。帰って寝よ」