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ダメ。ゼッタイ。人間やめますか?いえ、ODで死んたので異世界で麻薬王目指します!  作者: 朗童舎
第一章 ジャンキーの借金返済 マリファナ編
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第5話 ジャンキーと少女の乳房

 アリーは木こりタバコをくわえ、恐る恐るマッチで火を付けた。タバコ初心者のように、肺に煙を入れる事が出来ず、口の中の煙をふっと吹き出すだけだ。


「肺にきちんと煙を入れないと駄目なんだ」


 教えるとアリーは思い切り木こりタバコを吸い込み、ゲホゲホとむせてしまった。


「気をつけてゆっくりね。無理しないで」


 アリーは小さく頷いて、恐る恐る木こりタバコを吸い込んでいる。しばらくすると調子がつかめたようで、むせずに吸えるようになった。


 木こりタバコを一本吸いきった後、なんだか喉がいがいがする、と言った。喉の違和感を消したいのだろう、アリーは樽に注がれた水をぐいっと飲み干す。


「とってもおいしい水。このあたりは水が綺麗なのかしら?」


「そうですな、何も無い田舎ですので、清水がそこらに湧いております」


「やっぱり。お料理もとても美味しい。野菜もお肉もお魚も新鮮で。都会ではこんなに美味しい食材は食べたことが無いわ。都会は特にお魚はあまり新鮮じゃなくて」


 アリーはそう言うとせっせと取皿に料理を運び、美味しそうに料理を頬張る。陶器の様に透き通った白い頬がリスの様に膨らむ。


 これは恐らく…、マンチだ。マリファナを吸うと腹が減るし、料理が美味しく感じるのだ。それを大麻愛好家の中ではマンチーズと呼ぶ。恐らくアリーは……、キマっている。


「なんだかとてもリラックスしてきたわ。それに喉が渇くの。ねえウィリアム、そのお酒一口もらって良い?」


 アリーの目を見ると、少し赤く充血している。俺はまだ充分にワインが入っている樽をアリーに手渡す。アリーはそれを勢いよくぐいぐいと飲む。


「私、お酒飲んだの初めてなの」


「どう、美味しいでしょ」


「思ってたより、ずっと」


「あんまり飲みすぎると気持ち悪くなるから気をつけて」


 そんなやり取りをしていると、長老の奥さんがやってきた。


「お風呂が湧きましたよ」


「アリー、先に入りなよ。俺、後で良いから」


 そういうと、長老はじめ奥さんとアリーが不思議そうな顔をして俺の方を向いた。


「ねえウィリアム。あなたたまに不思議なことを言うわよね。お風呂は男性が先でしょ?」


 しまった。この世界は未だ、男尊女卑的な封建的な価値観が有るのだろう。


 とは言えアリーはボロを着て薄汚れており、可哀想に思えたので先に入ってほしいのは本音だ。


「なんてね!じゃあお風呂頂きます。ありがとうございます」


 適当に誤魔化して長老の奥さんについて風呂場に向かう。洗い場で装備を解除し、服を脱いで浴槽に向かう。


 随分と大きな木製の浴槽からはヒノキの様な良い木の香りがする。浴槽にはられた湯を見ると茶色く濁っている。浴槽の縁にも湯の花の様なものが凝固している。もしやこれは温泉ではなかろうか。


 桶で体を流して湯船に浸かる。長老からもらった木こりタバコに火を付ける。マリファナと温泉は最高の相性なのだ。


 ドラッグの中でも最もライトなダウナー系ドラッグマリファナ。正直なところ、俺は他のドラッグとは異なりマリファナをドラッグ扱いするのが好きではない。


 マリファナはどちらかというと、他のドラッグに比べて酒等の嗜好品に近い。


 キマりすぎておかしくなることがさほど無い。酒の方がよほど乱れてしまうし、体に悪いのでは無いかと思う。


 俺はマリファナはドラッグというよりは自然からの恵みだと思っている。リラックス出来て体にも良い事が多い。


 自分の精神や肉体に、大きな気づきを与えてくれるのだから神聖な植物と考えている。


 特に今日みたいな日は、感覚が鋭敏になるので肉体の疲労に関しては嫌というほど気づく事ができる。


 そのため温泉やマッサージといったリラックスできる状況とマリファナの相性は最高なのだ。


 長老と出会えたことは幸いだった。この世界で早速マリファナと出会う事が出来た。しかし、もうちょっと効き目の良いマリファナを吸いたい。


 品種改良がされていないからだろうが、もしかしたら植物育成のスキルでよりレベルの高いマリファナが栽培できるかもしれない。


 そう言えば盗賊を大量に討伐した結果、俺のレベルは現在23に到達していた。


 スキルポイントも8000程度溜まっている。


 ウインドウからスキルツリーを確認していると、植物育成の次のスキルである育成促進【初級】と交配【中級】を獲得するためのスキルポイントは500ずつだ。


 迷わず育成促進と交配のスキルを獲得。ピロリーンと電子音が響き、例のナレーションが脳内に響き渡る。


 育成促進【中級】と交配【中級】に必要なスキルポイントは各1000だ。惜しみなく中級も取得し、勢いでそのまま2つのスキルの上級を取得する。


 ピロリーン、という音とともにドアが開く音が聞こえた。


 浴室のドアに目をやると、照れくさそうに全裸のアリーが立っている。顔を洗い再びドアを見ると、幻覚ではなく、本当にアリーがそこに立っている。


 まだLSDでキマっているのでは無いだろうか。実際に女神と出逢い、異世界に転生し、長老宅で風呂を借りている状況全てが実は幻覚なのではないだろうか。


 LSDを投与しすぎた結果、現実に帰ってこられなくなる事がある。


 ある友人の話だが、インド旅行で謎の幻覚系ケミカルドラッグを接種した後、5年ほど戻ってこられなかった。


 我々が認知している現実と、そいつが認知している現実が大幅に乖離していたのだ。


 正常な受け答えが出来ず、バイトしている飲食店でウェイターのバイトをしていたのだが、何を思ったのか突然厨房に立ち入りペンネを茹で始めたらしい。


 残念なことにその後そいつに付いたあだ名はペンネ。


 5年もすると戻ってくる事が出来たが謎のケミカルドラッグ接種前に比べても、まるで悟りを開いた坊さんの様なクリアな瞳になり、人格もかなり爽やかになっていた。


 あいつも実は長いこと異世界転生していたのでは無いか。俺も実は別に死んでおらず、前世日本で友人相手に怪しい受け答えをして、突然思い立ったように厨房でペンネを茹でているのではないだろうか。


 そんな事を超高速で考えていると、アリーは意志の強そうな目で意を決したようにズカズカとこちらに向かってきて、桶で体にお湯をかけると勢いよく浴槽に飛び込んだ。


 頭まで浴槽に浸かった後、ざばっと顔を出すと緊張した面持ちで俺の顔を見つめて、抱きついた。


「ちょっ、アリー。ヤバいって。マジヤバイって」


 張りのある大きすぎず、小さすぎずな形の良い乳房が俺の胸にぎゅっと押し付けられている。


 なによりもヤバいのは俺の股間の上にアリーが乗っかっている形になっており、このまま息子が暴走を始めてしまうと過ちが起きてしまう、ということだ。


「なあアリー、まじでヤバいって。ほら、俺も男だしさ」


「ウィリアムは私に魅力を感じない?」


「いや、全然そういうわけじゃないから。だからむしろヤバいっていうか。全然魅力を感じないならむしろやばく無いっていうか。でもなんていうか、お互い知り合ったばっかりでちょっと展開が早すぎるっていうかさ……」


 そう言うと俯いていたアリーは俺の顔をじっと見て言った。


「でも、私はこうしたいの」


 これが吊橋効果というやつか。


 悪党に攫われていたアリーは強い緊張感を感じていたはずだし、その中で俺は盗賊相手にスプラッターショーを繰り広げていた。アリーの脳内では様々な脳内物質が分泌されまくっていたはずである。


 さらにその後、初めてのマリファナを吸い、初めての酒を飲み、お嬢様も悪になって弾けちゃった!そうだ、ついでに初めての男も体験しちゃお!みたいな雑な勢いでの行動なのでは?


「貴族の子女は殿方を喜ばせる教育もきちんと受けてるわ」


 アリーはじっと俺の目を見つめて言った。そりゃ俺だってしたいさ。


 しかし、突如異世界に送り込まれて、はじめて生まれた人間関係なので慎重に対処したい。


「いやいや、そういう問題じゃなくてさ。そりゃ俺だって嬉しいけど、俺も俺で色々有るっていうかさ。とにかく俺はまだアリーの事よくわからないし、こういうのはもっと互いを深く知った上でっていうか。とくにさ、勢いで一発やっちゃった!みたいな感じになると、男っていうのはその相手を尊重できなくなるんだよ。不思議なもんでさ。だからほら、ね?」


 そう言うとアリーは残念そうな表情を浮かべて俺から離れた。


「ふられた」


「いや、ふったとかふられたとか、そういう話じゃないからね。時間をかけようって、そういう話だからさ」


「じゃあ、もっと時間が経ったら良いの?どうせ来年するなら今しても同じよ?」


 浴室にか細いウィスパーボイスが響き、沈黙。確かにそう言えばそうとも思えるが、そうでも無いような気がする。


「うーん、まあそう簡単に結論を出せる話でも無いというかなんというか。そもそも俺、この世界に今日来たばっかりだし」


 しまった。言ってしまって良いのだろうか。アリーと俺の間に不思議な沈黙が流れた。


「それって、どういう意味?」


 完全に怪しんでいる。そして完全に好奇心に火が付いている。ここまで言ってしまったら返って色々と詮索したくなるのが人の心というものだ。


 開き直って俺は前世の世界のこと、自分がどういった人間だったのか、そしてこちらの世界にやって来た経緯を、極力こちらの世界の住人であるアリーにも理解できるように精一杯伝えた。


「な、だから成り行きでアリー達を助けたけど、別に俺は善人でもなんでも無いっていうか、むしろクズ中のクズなんだよ。で、アリーは失脚したとは言え貴族の娘だろ?俺とは釣り合わないよ」


「そう?私もう貴族じゃないし。ウィリアムが居なければ今頃娼館でお客さん相手にこういった事してたと思う。それに違う世界から来たなんて。もっと色々とあなたの話しを聞きたいわ」


「いやいや、ちょっとまって。俺の前の世界ではさ、物語の主人公のことをすぐに好きになる女の子のことをチョロインなんて言って馬鹿にしてたんだぜ?ちょろいヒロインだからチョロイン。アリーはチョロインなんて言われたら嫌だろ?なんていうかさ、飽きられてるんだよ本当は。異世界でチートで無双でチョロインでハーレムみたいなのはさ!読者は本当はもう少し骨のある物語を求めてるんだよ!たぶんね!」


 アリーは不服そうに湯船に目の下まで顔を入れてブクブクと息を吐いた。しばらくぶくぶくを吐き出して浮上する。


「そうね。ちょろいっていうのは嫌。でも、私はウィリアムにとても感謝しているから、恩を返したいの。それ以上に女の子は単純にあなたみたいに強い男の子が…」


 アリーはそう言うと照れくさそうに下を向き、好きなのよ、とつぶやいた。


「気持ちは有難いよ。ほらアリーはめっちゃ綺麗だし。そういう女性に好意を向けられたら大抵の男は嬉しいよ。俺だってね。でもさ、恩に報いてくれるっていうならこっちの世界の事、俺に色々と教えてくれよ。正直俺も妙な能力でなんかやたら強いだけで右も左も解ってないんだ。あと、このことは誰にも秘密にしてほしい。面倒になったら嫌だからさ」


「解ったわ。じゃあ私はまた一人ぼっちにならなくていいのね」


 そういうとアリーはふう、とため息を付き、浴槽のお湯を手ですくうと顔を洗った。


「俺はこれからどうするかなんて全然決まってないし、しばらくこの村に世話になろうと思ってる。だから事情を知ってくれてて色々と手助けしてくれる人がいるのは有難いよ。宜しく頼むよアリー」


 アリーはうん、と言うと、いたずらっぽい笑顔を浮かべて俺に抱きついた。


 張りのある大きすぎず、小さすぎずな形の良い乳房が俺の胸にぎゅっと押し付けられている。

他サービスでも連載中です。


□カクヨム

https://kakuyomu.jp/works/16816927862313330183

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